第42話 約束の続き
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再戦前。
ラウンジでは、百合と師走がグラスを傾けていた。
病室から戻った如月と撫子もテーブルに座り、ぎこちないながらも穏やかな時間を過ごしていた。
そんな光景を、彼岸花は静かに見つめる。
「お姉ちゃん……」
ぽつりと零れた言葉だった。
その頃、試合会場へ向かう神無月もまた、1人の女性を思い浮かべていた。
「水華……」
「もうすぐだ!」
「もう少しで……奴等に届く!」
「お前の無念を……」
少し昔の事。
「今日の依頼も簡単だったな」
神無月が笑いながら言った。
「まだ終わってないから油断しないの!」
隣を歩く水華が呆れたように答えた。
「俺達に敵はいないよ」
「はいはい!」
そんな何気ない会話だった。
2人が名家へ戻ると、元気な声が飛び込んできた。
「お姉ちゃーん!」
「神無月兄ちゃーん!」
彼岸花。
「ただいま♪ 彼岸花」
水華は目を閉じながら、妹をぎゅっと抱き締めた。
「お姉ちゃん、苦しいよ~」
「あ、ごめんごめん♪」
それは、水華が帰るたびに必ず行う習慣だった。
そんな2人を、神無月はいつも優しい眼差しで見つめていた。
「神無月兄ちゃんも!」
「おう!」
パチン。
彼岸花と神無月のハイタッチ。
いつもの習慣。
このまま、幸せな日々が続くはずだった…
しかし、依頼の日。
任務そのものに失敗してなかった。
だが、敵の数が多すぎた。
予定数以上、倍は居た。
情報漏れなのか、予測されていたのか…
それは分からなかった。
ただ1つ。
倒しきれる数ではなかった。
「すまない、とりあえず帰るぞ!」
「私こそ、ごめんなさい……」
2人は戦いながら撤退していた。
そして、あと少しで名家に帰れる…
帰還寸前で囲まれてしまった。
神無月が呼ぶ。
「須佐之男命」
神無月は神の力を借り、近接戦闘で敵を押し返していた。
水華も自らの血を使い、呪いと毒で敵を倒していた。
やがて全ての敵を倒し、2人が名家に帰ろうとした瞬間。
息絶える寸前の敵が、脇差を神無月へ投げ放った。
それに気付いた水華が、反射的に神無月を突き飛ばしていた。
脇差は、水華の身体を貫いた。
「水華!!」
「……ごめん……やられちゃった……」
「喋るな!」
「今、連れて帰る!」
「……うん……」
何とか名家へ帰る。
最初に駆け寄ってきたのは、もちろん彼岸花だ。
「お姉ちゃん……?」
「お姉ちゃん!!」
「彼岸花……ごめん……やられちゃった……」
神無月は泣きながら医者を呼ぼうと走ろうとした瞬間。
水華がその手を優しく握った。
「……?」
不思議そうな顔をする神無月。
水華は弱々しく微笑んだ。
「そんな顔しないで……」
「あなたは……生きて……」
「そして……彼岸花をお願いね……」
それだけを残し、水華は静かに息を引き取った。
彼岸花はその場で泣き崩れ、動けなくなる。
神無月は水華を抱き上げると、誰にも何も言わず、神社へ向かう。
2人きりで…
現在。
彼岸花は静かに目を閉じる。
「神無月……」
「お姉ちゃんの最後の言葉……」
「ほんまに聞こえてへんかったん?」
「それとも……」
「聞こえへんふり、してたんか?」
彼岸花の瞳に宿るのは憎しみだけではない。
悲しみ。
寂しさ。
そして――。
「神無月兄ちゃん……」
心の奥底に残り続ける、あの日の優しい思い出。
今後もよろしくお願い致します。




