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今宵月 月花大戦  作者: アル治
崩れる盤面

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42/55

第42話  約束の続き

いつも読んでいただきありがとうございます。

再戦前。


ラウンジでは、百合と師走がグラスを傾けていた。


病室から戻った如月と撫子もテーブルに座り、ぎこちないながらも穏やかな時間を過ごしていた。


そんな光景を、彼岸花は静かに見つめる。


「お姉ちゃん……」


ぽつりと零れた言葉だった。


その頃、試合会場へ向かう神無月もまた、1人の女性を思い浮かべていた。


「水華……」


「もうすぐだ!」


「もう少しで……奴等に届く!」


「お前の無念を……」


少し昔の事。


「今日の依頼も簡単だったな」


神無月が笑いながら言った。


「まだ終わってないから油断しないの!」


隣を歩く水華が呆れたように答えた。


「俺達に敵はいないよ」


「はいはい!」


そんな何気ない会話だった。


2人が名家へ戻ると、元気な声が飛び込んできた。


「お姉ちゃーん!」


「神無月兄ちゃーん!」


彼岸花。


「ただいま♪ 彼岸花」


水華は目を閉じながら、妹をぎゅっと抱き締めた。


「お姉ちゃん、苦しいよ~」


「あ、ごめんごめん♪」


それは、水華が帰るたびに必ず行う習慣だった。


そんな2人を、神無月はいつも優しい眼差しで見つめていた。


「神無月兄ちゃんも!」


「おう!」


パチン。


彼岸花と神無月のハイタッチ。


いつもの習慣。


このまま、幸せな日々が続くはずだった…


しかし、依頼の日。


任務そのものに失敗してなかった。


だが、敵の数が多すぎた。


予定数以上、倍は居た。


情報漏れなのか、予測されていたのか…


それは分からなかった。


ただ1つ。


倒しきれる数ではなかった。


「すまない、とりあえず帰るぞ!」


「私こそ、ごめんなさい……」


2人は戦いながら撤退していた。


そして、あと少しで名家に帰れる…


帰還寸前で囲まれてしまった。

神無月が呼ぶ。

「須佐之男命」


神無月は神の力を借り、近接戦闘で敵を押し返していた。


水華も自らの血を使い、呪いと毒で敵を倒していた。


やがて全ての敵を倒し、2人が名家に帰ろうとした瞬間。


息絶える寸前の敵が、脇差を神無月へ投げ放った。


それに気付いた水華が、反射的に神無月を突き飛ばしていた。


脇差は、水華の身体を貫いた。


「水華!!」


「……ごめん……やられちゃった……」


「喋るな!」


「今、連れて帰る!」


「……うん……」


何とか名家へ帰る。


最初に駆け寄ってきたのは、もちろん彼岸花だ。


「お姉ちゃん……?」


「お姉ちゃん!!」


「彼岸花……ごめん……やられちゃった……」


神無月は泣きながら医者を呼ぼうと走ろうとした瞬間。


水華がその手を優しく握った。


「……?」


不思議そうな顔をする神無月。


水華は弱々しく微笑んだ。


「そんな顔しないで……」


「あなたは……生きて……」


「そして……彼岸花をお願いね……」


それだけを残し、水華は静かに息を引き取った。


彼岸花はその場で泣き崩れ、動けなくなる。


神無月は水華を抱き上げると、誰にも何も言わず、神社へ向かう。


2人きりで…


現在。


彼岸花は静かに目を閉じる。


「神無月……」


「お姉ちゃんの最後の言葉……」


「ほんまに聞こえてへんかったん?」


「それとも……」


「聞こえへんふり、してたんか?」


彼岸花の瞳に宿るのは憎しみだけではない。


悲しみ。


寂しさ。


そして――。


「神無月兄ちゃん……」


心の奥底に残り続ける、あの日の優しい思い出。

今後もよろしくお願い致します。

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