第41話 月花大戦??
いつも読んでいただきありがとうございます。
七回戦終了後
違う戦いが始まる。
師走はいつもよりゆっくりと廊下を歩いていた。
向かう先は、いつものラウンジ。
師走は頭を抱えながら、小さく呟く。
「なんでこうなった……」
ぶつぶつ言いながら歩いていると、
「師走」
後ろから声が掛かった。
薔薇だった。
「先ほどは、ありがとうございました」
「おかげで戦いに集中できますわ」
師走は少し上の空だったが、
「勝てよ」
とだけ返す。
「誰に言ってるんですの?」
「当たり前なんですが」
薔薇が胸を張る。
その勢いに師走は少したじろいだ。
「……そうか」
短く言葉を交わし、2人は別れる。
そして、ラウンジの前。
中が妙に騒がしい。
嫌な予感しかしない。
師走は深く息を吐き、覚悟を決めて扉を開けた。
すると――
カウンターには百合。
テーブルには朝顔、月見草、カトレア、南天。
さらに別のテーブルには、睦月、向日葵、弥生、鈴蘭。
明らかに野次馬だった。
その中で状況を全く気にしていない者が2人。
向日葵はパフェとケーキ。
鈴蘭はパスタとピザ。
2人とも幼い笑顔で幸せそうに食べている。
「……あの2人は付き合わされたな」
師走はため息を吐きながら、百合の隣に腰を下ろした。
百合は嬉しそうに微笑む。
「約束通りですわね」
「もちろん。約束は守るさ」
「ちゃんと答えは出ましたか?」
師走は少し黙り込む。
「……」
「師走?」
「答えなら、出てるよ」
百合の目が僅かに揺れた。
「お返事を聞かせてくださいまし」
その瞬間だった。
さっきまで騒がしかったラウンジが、
シン……
と静まり返る。
向日葵もスプーンを止め、
鈴蘭もフォークを止めている。
物音ひとつしない。
(完全に野次馬だな……)
師走は心の中で呟いた。
百合は静かに言う。
「断るのでしたら、断るで構いませんわ」
「……いいのか?」
「わたくしは諦めませんけれど」
「怖いこと言うな」
「本気ですもの」
「知っとる」
「では?」
「……」
「……」
「付き合う!」
百合の顔がぱっと明るくなる。
「はい♪」
次の瞬間――
「かんぱーい!!」
テーブルから大歓声が上がった。
「おめでとう!」
「幸せになってね!」
「泣かせたら許しませんよ!」
とてつもない野次が飛ぶ。
「お前らな!」
師走もつられて声を張り上げる。
「泣かせねぇよ!」
「幸せにするよ!」
「当たり前だろ!」
売り言葉に買い言葉。
すると、
顔を真っ赤にした百合が小さな声で、
「結婚式はいつにします?」
と言った。
「結婚!?」
「今付き合ったばっかりだぞ!?」
「善は急げですわ」
付き合った初日。
ほぼプロポーズだった。
睦月が羨ましそうに呟く。
「結婚かぁ……いいな」
弥生も身を乗り出す。
「羨ましいぃ!」
向日葵と鈴蘭も食べながら、
「おめでとー」
「おんでとう」
と何を言っているのかよく分からない。
朝顔は真面目な顔で、
「結婚式は和風か洋風か……」
などと考え始めている。
月見草は、
「0日婚かぁ。離婚には気を付けてね」
と余計なことを言い、
南天は大笑いしていた。
「マジ凄くない!?」
「戦いに来て結婚とか!」
「超ウケるんだけど!」
そして――
カトレアだけは顔を真っ赤にして、
何も言えずに俯いていた。
ラウンジはすっかりお祭り騒ぎ。
その中心で、
師走は天井を見上げる。
「……なんでこうなった」
こうして、
師走と百合は月花大戦の最中に恋人となった。
それは、
月花大戦始まって以来、
初めての出来事だった。
今後もよろしくお願い致します。




