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今宵月 月花大戦  作者: アル治
崩れる盤面

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38/58

第38話  ラウンジの修羅場

いつも読んでいただきありがとうございます。

第六回戦終了後

月狼は静かに告げる。

「この試合は――再戦とする」

両チームに神の祝福が与えられる。

そして月狼は続けた。

「第七回戦終了後に再戦を行う」

秋桜の身体の傷は癒えていた。

だが精神的な疲労は大きい。

その時だった。

神無月が振り返り、静かに名を呼ぶ。

「大国主命」

淡い光が秋桜を包む。

本来なら意味は薄い。

身体は既に回復しているのだから。

それでも――。

「ありがとう~」

「ありがとうございます」

秋桜と金木犀の声が重なった。

神無月は何も答えない。

冷たい視線だけを向け、その場を去っていく。

精神的疲労にどこまで効果があったのかは分からない。

だが、その気持ちは確かに伝わっていた。

秋桜と金木犀も自室へ戻る。

再戦に備え、休息を取るためだ。

その頃。

ラウンジでは――。

「ねぇ、師走。少し付き合いなさい」

薔薇が師走を呼び止めた。

「俺ですか?」

「そうよ」

「嫌な予感しかしないんやけど……」

「付き合いなさい」

「はい」

師走は観念した。

2人はラウンジへ向かう。

薔薇は席に着くなりバーテンダーへ告げた。

「マッカラン、ダブルで」

師走が思わず声を上げる。

「ホンマに!? この後試合ですやん!」

薔薇はジロリと睨む。

「普通に話しなさいよ。その喋り方イライラするのよ」

「はいはい……」

完全に言いなりだった。

その様子を見ている者がいる。

百合だった。

さらに別のテーブルでは、

朝顔、月見草、カトレア、南天の4人が様子を窺っていた。

朝顔が小声で呟く。

「修羅場ですね」

月見草が楽しそうに笑う。

「楽しんでる?」

カトレアがため息をつく。

「趣味がよろしくありませんわ」

南天は肩を震わせた。

「マジ? 私は楽しいんだけど」

完全に他人事だった。

薔薇がグラスを回しながら口を開く。

「神無月をどう思う?」

師走は少し考えた。

「自信家ですね。あとプライドの塊」

「そうよね」

薔薇は頷く。

「そんな男が月狼に下がれと言われて引いたのよ」

師走の目が少し細くなる。

「……神無月、演じてる?」

薔薇は黙る。

師走は続けた。

「目的はあるんでしょうけどね」

「無理してるのかもしれません」

「わたくしもそう思うわ」

「まぁ、可能性の話ですけど」

薔薇はグラスを一気に空けた。

「また付き合ってもらうから」

「また?」

「何か問題でも?」

「何で俺なんですか……」

薔薇は答えない。

そのまま立ち上がりラウンジを後にした。

そして。

入れ替わるように師走へ近づく影。

百合だった。

「楽しそうでしたわね」

笑顔。

だが目は笑っていない。

師走は軽く後ずさる。

「いや……別に楽しくは」

百合の視線が突き刺さる。

野次馬4人組は盛り上がっていた。

「始まりましたね」

「始まったね」

「止めた方がよろしいのでは?」

「いやいや、もっと見ようよ」

百合が静かに口を開く。

「浮気……ですか?」

「いやいやいや!」

師走が慌てる。

「付き合ってませんから!」

4人組がさらに盛り上がる。

「付き合ってないの?」

「どういうことですの?」

「マジで?」

「面白くなってきたね」

師走が振り返る。

「お前ら静かにしろ!」

その声で百合も4人に気付く。

4人は一斉に目を逸らした。

百合は再び師走へ向き直る。

「わたくしと薔薇様」

「どちらをお選びになりますの?」

師走は固まった。

数秒固まった。

本気で固まった。

「え?」

「2択なんですか?」

百合は即答する。

「はい」

師走は頭を抱えた。

「ちょっと待ってください」

「次の試合が終わるまで待ってくれません?」

「ちゃんと考えますから」

百合は少しだけ表情を和らげる。

「分かりました」

「待ちますわ」

そう言い残し、百合もラウンジを後にした。

残された師走は即座に4人のテーブルへ向かう。

「なぁ!」

「どういうこと!?」

「俺どうしたらいいの!?」

朝顔。

「百合さんですね」

カトレア。

「知りませんわ」

月見草。

「フれば?」

南天。

「2人と付き合えば?」

全くまとまらなかった。

師走は頭を抱えながらラウンジを後にする。

4人には新たな楽しみが増えた。

そして――。

月狼が立ち上がる。

「第七回戦を始める」

先程までの賑やかな空気が消える。

会場に再び緊張が走った。

今後もよろしくお願い致します。

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