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今宵月 月花大戦  作者: アル治
崩れる盤面

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36/57

第36話  借り物の力

いつも読んでいただきありがとうございます。

6回戦

神無月、薔薇 VS 秋桜、金木犀

神無月は「神社」。

秋桜は「宇宙」を選択した。

だが――

月狼が静かに口を開く。

月狼

「待て」

会場の空気が止まる。

月狼は宵うさぎと短く話し合い、その後、秋桜も呼ばれた。

数分。

3人で何かを確認した後――

フィールドが確定する。

宇宙空間に浮かぶ神社。

有り得ない景色。

静かな宇宙に、鳥居と社だけが存在していた。

宵うさぎ

「宇宙空間だけど~、息は出来るからね~」

月狼

「始めろ」

4人が宇宙空間へ踏み込む。

重力感覚が狂う。

上下すら曖昧。

初手が遅れる。

秋桜

「金木犀、行くよ~」

金木犀

「はい、秋桜様」

秋桜が重力を操作する。

2人の身体が、一定距離で安定する。

対して。

神無月と薔薇は動きに苦戦していた。

薔薇

「なんなのよこれ……!」

「動けないんだけど!」

神無月

「少し不利か」

薔薇が冷たい視線を向ける。

薔薇

(心の声、何とかしなさいよ)

その瞬間。

金木犀のクロスボウが火を吹く。

放たれた矢が神無月へ迫る。

神無月は避ける。

だが。

腕を掠めた矢が、そのまま軌道を変えた。

肩へ突き刺さる。

秋桜の重力操作。

矢の殺傷力と軌道が桁違いに変化している。

神無月の肩から血が流れる。

薔薇

「刺さってるわよ」

神無月

「問題ない」

神無月が矢を抜く。

そして静かに名を呼ぶ。

神無月

「――大国主命」

淡い光。

傷が塞がっていく。

秋桜と金木犀が目を見開く。

金木犀

「回復まで……」

秋桜

「さすが神の力~」

そして。

秋桜の目が細くなる。

秋桜

「でも~」

「回復が間に合わなかったら~?」

金木犀が連続で矢を放つ。

無作為に見える射撃。

だが。

秋桜の重力操作で、全て神無月達へ吸い込まれていく。

薔薇が指先を裂く。

流れた血が細く鋭い剣へ変わる。

棘のような血刃。

神無月が再び名を呼ぶ。

神無月

「――天照大御神」

神無月の手に炎が生まれる。

だが。

一瞬で消えた。

神無月

「……やはり」

薔薇

(心の声、何してるこいつ)

薔薇が体勢を崩しながら矢を斬り落とす。

だが全ては防げない。

肩。

脚。

背中。

次々と刺さる。

薔薇

「っ……!!」

「私の体を傷付けたな!!」


神無月もまた矢を受けながら、薔薇の矢を引き抜く。

薔薇

「痛いわよ!」

「もっと優しく抜きなさいよ!!」

神無月

「黙れ」

神無月

「――大国主命」

再び傷が癒える。

薔薇

(心の声、こいつ本当に嫌い!!)

神無月が静かに次の名を呼ぶ。

神無月

「――天之御中主神」

秋桜が集めた石や瓦礫。

金木犀の矢。

全てが神無月の目前で停止した。


神無月達の周囲の重力が安定する。

薔薇の動きも安定する。

重力操作。

秋桜が目を細める。

神無月

「こんなものか」

神無月が視線で合図する。

薔薇が頷く。

薔薇

(心の声、私がやるのね)

薔薇が宇宙空間を駆ける。

凄まじい速度。

だが。

途中で止まる。

神無月と秋桜。

2つの重力が拮抗している。

薔薇の身体が空中で押し潰されそうになる。

秋桜

「このままだと潰れちゃうよ~?」

薔薇

「私を殺す気ですか!?」

神無月が薔薇を引き戻す。

冷たい視線だけ向ける。

薔薇

(心の声、ほんっと嫌いぃ!!)

戦場が止まる。

誰も動けない。

金木犀が静かに問う。

金木犀

「前回の……使えませんか?」

秋桜の表情が曇る。

秋桜

「……使いたくないな~」

脳裏を過る。

月狼の血。

壊れた景色。

自分が傷付けた記憶。

秋桜が俯く。

神無月は見逃さない。

止まっていた矢を金木犀へ飛ばす。

秋桜の反応が遅れる。

矢が金木犀の脚を掠めた。


戻ってきた矢は秋桜が止める。

秋桜

「ごめんなさい」

金木犀

「秋桜様、大丈夫です」

「勝ちましょう」

金木犀がクロスボウを放つ。

だが。

今度は重力操作が乗らない。


秋桜が静かに顔を上げる。

秋桜

「……やるよ~」

その目が変わった。

秋桜が金木犀を後方へ遠ざける。

両手を神無月へ向ける。

黒い球体。

ブラックホール。

神無月の近くに発生した漆黒の歪み。

周囲の空間が軋む。

瓦礫や石がゆっくり引き寄せられる。

そして。

秋桜の前にも、小さな黒い球が生まれる。

次の瞬間。

神無月側のブラックホールが閃光を放つ。

ドォォォォン!!

宇宙を震わせる大爆発。

だが同時に。

秋桜側のブラックホールも爆発した。

爆発同士が衝突し、相殺される。

衝撃波だけが宇宙空間を駆け抜けた。

秋桜が冷たい目で神無月達を見る。

そこには2人。

傷はあるが、擦り傷程度。

神無月もまた。

天之御中主神の力を借り、ブラックホールを再現していた。

だが。

本物ではない。

借り物の神威では、秋桜に届かない。

秋桜の目がさらに細くなる。

次は先程より遥かに大きい。

大きなブラックホール。

神無月の前にも生まれる。

だが。

大きさが違う。

密度が違う。

神無月

「くっ……!」

薔薇

(心の声、嘘でしょ……)

閃光。

そして。

ドォォォォォン!!

先程とは比較にならない爆発。

神無月はブラックホールを何度も発生させ、衝撃を相殺していく。

それでも。

完全には防げない。

神無月も薔薇も傷付きながら、なお立っていた。

だが。



秋桜の目から感情が消えていく。

秋桜

「ゴミが」

静かな声。

冷たい。

秋桜

「私の前に立つな」

金木犀が目を見開く。

金木犀

「こす……もす様……?」

秋桜は振り返らない。

金木犀すら見ていない。

秋桜

「――消えろ」

その瞬間――。

今後もよろしくお願い致します。

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