第34話 力の活性化
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5回戦
睦月、向日葵 VS 長月、牡丹 後半戦
長月の槍が睦月の腹を貫く。
だが。
十文字槍だったことが幸いした。
脇の枝刃に日本刀を滑り込ませ、致命傷だけは避けている。
浅い。
だが痛みは重い。
長月
「上手く受けたな」
睦月
「腹には刺さってますよ……」
長月
「その程度で済ませるとはな」
長月が槍を捻る。
傷口を抉る動き。
睦月が歯を食いしばり、必死に押さえ込む。
長月
「このままだと脱落だぞ」
「どうする?」
睦月
「どうにか出来るなら、してるよ」
睦月が後方へ飛ぶ。
その瞬間。
日本刀で槍を跳ね上げ、そのまま長月へ斬り掛かった。
だが長月も避ける。
長月
「降参しろ」
睦月
「それは出来ないね」
「向日葵に殺される」
長月
「その前に俺にやられるぞ」
睦月が静かに笑う。
睦月
「……仕方ないか」
その目が変わった。
その頃。
階段では向日葵が依然として優勢だった。
狭い段差。
不安定な足場。
格闘主体の牡丹にはやりづらい地形。
牡丹
「全く……戦い辛いですわね」
向日葵
「どうする?」
「このままなら私の勝ちだよ?」
牡丹
「言ってくれますわね、小娘が!」
牡丹が跳ぶ。
上段から蹴りが落ちる。
向日葵が両腕で受ける。
だが。
重い。
押し切られ、後方へ吹き飛ばされる。
向日葵
「もう……強すぎるよ」
牡丹
「睦月が居なければ、貴女では私に勝てませんわ」
向日葵が口元を上げる。
向日葵
「――そろそろかな」
牡丹
「何がですの?」
向日葵の目が変わる。
向日葵
「月ってね」
「太陽の反射で光ってるんだよ」
牡丹
「そんなの常識――」
そこで牡丹の表情が変わる。
嫌な予感。
構えを立て直す。
向日葵
「いっくよ!」
向日葵が踏み込む。
速い。
今までとは比べ物にならない。
牡丹ですら反応が遅れる。
向日葵の右ボディが突き刺さる。
牡丹
「ぐはっ……!」
向日葵
「女の子らしく可愛く言わないと」
牡丹
「ふざけないでよ!」
牡丹の猛攻。
拳。
蹴り。
連撃。
だが。
向日葵は流し、避け、捌く。
その隙にローキックが入る。
牡丹
「いっっ!!」
牡丹の足が赤く腫れていく。
違う。
火傷だ。
向日葵
「私ね」
「高温にも出来るの」
空気が揺らぐ。
熱。
湿った空気が蒸気へ変わり始める。
牡丹
「舐めないでよ!!」
牡丹が本気を超えた猛攻を放つ。
向日葵も何発か受ける。
向日葵
「この人……強い」
牡丹
「小娘がぁ!!」
それでも。
押しているのは牡丹だった。
向日葵が徐々に後退していく。
向日葵
「まずいな……」
一方。
睦月が静かに刀を構える。
睦月
「長月、ちょっと本気でいくよ」
長月
「バフか」
「させると思うか?」
睦月
「悪いね」
「自分へのバフは、いつでも出来る」
長月
「チッ……なら来い!」
睦月のバフ出力が上がる。
身体能力が急激に跳ね上がる。
だが。
同時に自我も削れていく。
これ以上は危険。
向日葵が暴走した時と同じ領域。
睦月が刀を鞘へ戻す。
長月
「抜刀か!」
睦月
「あまり得意じゃないんだけどね」
そう言いながらも、睦月の顔に余裕はない。
長月が突っ込む。
槍が一直線に睦月を貫こうとする。
抜刀。
火花。
睦月が槍を受け止める。
そのまま長月が柄で殴り掛かる。
だが睦月は槍を止めたまま、日本刀を右上へ振り上げ斬り返す。
長月が避ける。
長月
「出来るな」
睦月
「ありがと」
「こっちはいっぱいいっぱいだよ」
睦月が再び二刀を構える。
睦月
「やっぱり、こっちだね」
「そろそろ決めないと……血がね」
睦月が息を整える。
その瞬間。
壁の向こうから轟音。
ミシミシ――ドォン!!
壁が崩壊する。
現れたのは向日葵と牡丹。
2人とも満身創痍。
狭い路地。
4人が一箇所へ集まった。
向日葵が誘導したのか。
偶然か。
向日葵
「大丈夫?」
睦月
「血は出てるけどね」
向日葵
「なら大丈夫!」
長月
「牡丹、大丈夫か?」
牡丹
「まだ戦えますわ」
その瞬間。
向日葵が長月へ。
睦月が牡丹へ。
同時に動く。
長月が向日葵の拳を受け止める。
向日葵
「今度は私ね」
長月の顔が歪む。
向日葵の猛攻が始まった。
拳。
肘。
蹴り。
格闘技特有の連携。
槍術主体の長月では見切れない。
右ストレート。
肘打ち。
ローキックと見せ掛けたハイキック。
フェイント。
連撃。
長月が徐々に押されていく。
一方。
睦月の二刀が牡丹へ迫る。
牡丹が避けた。
そう見えた。
だが。
日本刀が牡丹の腹へ叩き込まれる。
刀背打ち。
斬ってはいない。
意味などない。
それでも睦月の僅かな優しさだった。
牡丹
「うっ……!!」
当たり所が悪い。
牡丹が膝をつく。
動けない。
そして長月も。
向日葵の攻撃を受けた箇所から火傷が広がっていく。
動きが鈍る。
このまま終わる。
そう思った瞬間。
牡丹の身体がさらに膨れ上がる。
1回り。
いや、それ以上。
だが。
その目に理性はない。
牡丹が向日葵へ突進する。
拳。
向日葵が吹き飛ぶ。
向日葵
「ぐはっ!!」
睦月
「……ここまでか」
「自我は保ってくれよ」
睦月が向日葵へバフを掛ける。
向日葵の身体から蒸気が噴き出す。
路地の温度が急激に上がる。
空気が歪む。
向日葵
「睦月、離れてて」
睦月
「……自我はあるな」
次の瞬間。
向日葵が消えた。
長月の腹へ一撃。
長月が地面へ倒れる。
続けて牡丹が殴り掛かる。
だが。
一直線。
獣の動き。
自我を保つ向日葵には通じない。
腹へ膝。
背中へ肘。
牡丹が崩れ落ちる。
それでも立ち上がろうとする。
向日葵が静かに見下ろしていた。
その時。
月狼と宵うさぎが現れる。
宵うさぎ
「これ以上は~」
「牡丹が壊れちゃうから~」
月狼
「勝者――」
「睦月、向日葵」
これからもよろしくお願い致します。




