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今宵月 月花大戦  作者: アル治
崩れる盤面

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33/55

第33話  満月と猛者達

霜月の死から一夜。

病院周辺の警護は解かれていた。

張り詰めていた空気は薄れ、ホテル内にも僅かな落ち着きが戻っている。

ラウンジ。

師走は酒を片手に、百合へ声を掛けていた。

師走

「いや~、百合ちゃんほんま綺麗やなぁ」

百合が優雅にグラスを傾ける。

百合

「ありがとうございます♪」

「ですが、口説き方が軽すぎますわ」

師走

「そんなことないって、本気本気」

百合

「先程、別の女性にも同じことを仰ってましたわよ?」

師走

「……見てたん?」

百合が小さく笑う。

戦いの時とは違う、穏やかな空気。

だが。

師走の目だけは完全には緩んでいなかった。

霜月との戦い。

あの感触がまだ身体に残っている。

その時。

5回戦開始のアナウンスがホテル内へ響く。

師走

「さて、次は化け物同士の喧嘩やな」

百合

「楽しみですわね♪」

5回戦

睦月、向日葵 VS 長月、牡丹

フィールドが構築される。

睦月が選んだのは「市街地」。

長月が選んだのは「満月」。

夜。

静かな街並み。

建物の隙間から巨大な満月が覗いている。

白い月光が道路を照らし、長い影を落としていた。

今までの異質なフィールドとは違う。

どこか現実に近い空間。

だが、その静けさが逆に不気味だった。

月狼

「始めろ」

向日葵が拳を打ち合わせる。

乾いた音。

向日葵

「いつでもいいよ」

睦月が隣で静かに日本刀を抜く。

腰にはまだもう一振、鞘に収まったまま残っている。

睦月

「またバフは要らないのかい?」

向日葵が苦笑する。

向日葵

「あれ、意識飛ぶからさ」

睦月

「前回は色々あったからね」

静かな会話。

だが互いに油断はない。

対する長月と牡丹。

長月が周囲を見渡す。

長月

「太陽を選ばなかったのには理由があるはずだ」

牡丹

「そうですわね」

次の瞬間。

2人が覚醒する。

空気が変わった。

牡丹の身体が膨れ上がる。

筋肉。

圧倒的な肉体。

だが、ただ大きいだけではない。

戦うために完成された筋肉。

牡丹が顔をしかめる。

牡丹

「この姿、本当に嫌いですわ……」

しかし次の瞬間。

消えた。

牡丹が向日葵の懐へ一気に入り込む。

速い。

拳。

向日葵が避けきれず受ける。

向日葵

「っ……!」

重い。

想像以上。

向日葵が口元を歪める。

向日葵

「やるね」

「じゃあ、いくよ!」

向日葵が反撃する。

だが。

牡丹は避ける。

最小限の動き。

無駄がない。

牡丹

「今回は本気ですから」

「油断していると、痛い目を見ますわよ?」

向日葵

「なら私も!」

右拳。

そこから流れるように左のバックブロー。

さすがの牡丹も受け切れない。

牡丹

「っ!」

牡丹の顔が僅かに歪む。

長月

「どうした?」

牡丹

「な、何でもありませんわ」

その直後。

牡丹の猛攻が始まる。

ストレート。

フック。

ローキック。

ハイキック。

あらゆる打撃が休みなく襲い掛かる。

向日葵は避けきれない。

受ける。

流す。

だが削られる。

向日葵

「強いな……」

「私、格闘は自信あったのにな」

向日葵も反撃する。

しかし当たらない。

牡丹は技術で上回っていた。

睦月

「バフ、掛ける?」

向日葵

「ちょっとヤバいかも」

その瞬間。

長月が動く。

長月

「させるわけないだろ!」

槍が睦月を突く。

睦月が日本刀で受ける。

だが不利。

槍と刀。

間合いが違う。

長月が槍を跳ね上げる。

睦月の刀が浮いた。

同時に蹴り。

睦月がギリギリで回避する。

睦月

「引き気味で助かった」

長月

「覚醒状態の私の攻撃を避けるとはな」

2人が睨み合う。

静かな殺気。

やがて睦月が距離を取り、細い路地へ入った。

睦月

「ここでも槍で戦うかい?」

長月が笑う。

長月

「この程度で困ると思ったか?」

次の瞬間。

長月が槍を折る。

右手には短槍。

左手には槍の柄。

即座に戦闘スタイルを変える。

睦月

「なら、こちらも」

睦月が腰のもう一振を抜く。

月光が2本の刀身を照らした。

睦月

「楽しくなりそうだね」

その頃。

向日葵も距離を取り、階段へ移動していた。

階段。

段差。

狭さ。

向日葵は流れるように動く。

対する牡丹は少しやりづらそうだった。

踏み込みが安定しない。

向日葵

「いくよー!」

牡丹

「来なさい!」

上段にいる向日葵が有利。

牡丹が駆け上がる。

攻撃。

向日葵が受け流し、反撃。

今度は当たる。

牡丹が避けきれない。

足場。

地形。

向日葵が流れを掴み始める。

長月の短槍と棒が唸る。

睦月は二刀で流し、かわし、斬り返す。

長月が避ける。

互角。

一進一退。

そして長月が口を開く。

長月

「お前、バフを掛けているな?」

睦月が小さく笑う。

睦月

「バレたか」

「前回は全力で掛けた。でも今は違う」

「調整して常時掛けてる」

長月

「なるほどな。覚醒状態に付いて来れる訳だ」

長月の目が鋭くなる。

長月

「だが――ネタバレが過ぎるな」

次の瞬間。

長月が一気に距離を詰める。

速い。

満月の光すら置き去りにする踏み込み。

睦月の目が開く。

睦月

「これは――」

「避けられない」

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