第24話 名家の誇り
試合の最中。
師走は静かに会場を離れていた。
通されたのは、名家達が集まる一室。
重い空気。
誰も軽口を叩かない。
師走は部屋へ入ると、すぐに頭を下げた。
「……御意」
低い声。
いつもの軽さはない。
「試合終了後に、ご報告しようと思っていましたが……」
一瞬、間を置く。
「皐月が死亡」
空気が止まる。
「葉月は重体」
「梅は能力使用不可です」
沈黙。
誰もすぐには口を開かなかった。
そして。
1人が机を叩く。
「どういうことだ!!」
「月同士の殺し合いなど聞いておらん!」
別の者も続く。
「止められなかったのか!」
「貴様、監視役だろう!!」
師走は頭を下げたまま。
「……申し訳ありません」
その時。
静かな声が空気を断ち切る。
「そこまでにしなさい」
場が止まる。
「責めても、時は戻りません」
老人がゆっくり目を閉じる。
「しかし……こやつは……」
「止めよ」
「今は次を考えよ」
沈黙。
やがて。
師走が小さく頭を下げる。
「……御意」
老人が師走を見る。
「して、これからどうする?」
師走の目が鋭くなる。
「霜月は――」
「私の試合中に動いています」
部屋の空気が変わる。
「次の試合」
「私は相方が居ません」
「棄権します」
ざわめき。
だが。
師走は続ける。
「その後」
「霜月に張り付きます」
「……必ず止めます」
感情を押し殺した声。
老人が目を細める。
「優勝は厳しいか」
「……今回は致し方あるまい」
師走
「御意」
「次は頼むぞ」
「……御意」
しばらく後。
会場。
宵うさぎが、いつもの調子で前に出る。
「敗者復活戦で~」
「また敗退者が出たよ~」
ざわめき。
「また怪我人か……?」
「葉月が重体なんだろ……?」
宵うさぎは紙を見る。
「えーっと」
「皐月死亡のため~」
「師走チームは棄権とする~」
静寂。
そして。
一気に会場がざわつく。
「……は?」
「死亡?」
「皐月が……?」
「嘘だろ……」
「じゃあ次の試合、師走はいないのか……」
空気が重い。
その中。
神無月が静かに視線を向ける。
先には――霜月。
霜月も見返す。
笑わない。
ただ。
静かに。
その様子を。
少し離れた場所から師走が見ていた。
目に宿るのは。
明らかな敵意。
「……次は、逃がさん」
小さな呟きは。
歓声に紛れて、誰にも届かなかった。




