第12話 祈りの果て
いつも読んでいただきありがとうございます。
夜。
神社。
誰もいない。
神無月が一人、立っている。
薔薇が後ろにいる。
「さっきの試合」
「つまらなかったですか?」
「……ああ」
「誰も、“神に届いていない”」
薔薇が肩をすくめる。
「そもそも神なんて――」
言いかけて、止まる。
神無月の空気が変わる。
「……居る」
静かに。
確信の声。
「居るとも」
「だが――」
間。
「応えない」
風が吹く。
神無月の手が、わずかに握られる。
「祈ったことがあるか」
「……は?」
「救いを求めて」
沈黙。
「無いですね」
神無月が小さく笑う。
「そうか」
「なら分からんだろうな」
1歩、前へ。
「祈っても、何も起きないということが」
その声は。
怒りでもなく。
悲しみでもなく。
ただ、乾いていた。
「だから――」
空を見上げる。
「なるしかない」
「神に」
薔薇が目を細める。
(ああ……そういう男)
「それで満足ですか?」
神無月は答えない。
ただ。
ほんの一瞬だけ。
「……満たされたことなど、1度もない」
『回想 祈りが届かなかった日』
雨。
古い神社。
まだ幼い神無月。
地面に膝をついている。
腕の中。
血。
誰かを抱えている。
「……大丈夫だ」
震える声。
「すぐに、助かる」
嘘だと分かっている。
それでも。
目の前の“命”は、弱くなっていく。
「神様……」
初めてだった。
本気で祈ったのは。
「お願いだ……」
「助けてくれ……」
何度も。
何度も。
何度も。
頭を下げる。
雨が、額を打つ。
血と混ざる。
「何でもする……」
「だから……」
沈黙。
風。
何も起きない。
ただ。
呼吸が、止まる。
腕の中の重さが変わる。
「……おい」
揺らす。
返事はない。
「……嘘だろ」
笑う。
乾いた笑い。
「ふざけるな」
顔を上げる。
神社。
そこに“神”はいない。
「いるんだろ……?」
「見てるんだろ……?」
答えはない。
その瞬間。
何かが、切れる。
「……なら」
ゆっくり立ち上がる。
「いらないな」
雨の中。
少年の目から、光が消える。
「そんなものは」
1歩。
「……俺がなる」
12話も読んでいただきありがとうございます。
今後もよろしくお願い致します。




