第10話 鏡水の檻
いつも読んでいただきありがとうございます。
水上。
足場はない。
水の上に立つ4人。
その周囲を囲むように――
無数の鏡。
前も、後ろも。
上下すら曖昧な世界。
「水があれば、負ける気はしないな」
水無月が静かに言う。
「防御は任せてくれ」
蓮が1歩前に出る。
「頼む」
対する霜月は、ため息混じり。
「状況も把握できてないか……まぁいい」
撫子は気だるそうに。
「で、私は?」
「攻撃に回れ。サポートする」
「りょーかい」
合図よりわずかに早く。
霜月が動く。
足元の水に、力を流す。
水の動きが鈍る。
時間減速。
同時に。
水無月が足元に水鏡を展開する。
月狼の声が響く。
「始めろ」
次の瞬間。
蓮が動いた。
水面を滑る。
一直線。
霜月の間合いへ。
拳。
届く――
だが。
すり抜ける。
霜月の姿が、砕けた。
「……鏡か」
背後。
衝撃。
蹴りが、蓮の背中に入る。
「っ……!」
さらに。
撫子が3人。
同時に来る。
蓮が迎撃。
1体に拳が当たる。
だが。
手応えが浅い。
「……軽い?」
もう1体。
すり抜ける。
残る1体。
腹に、拳が入る。
「……こいつか!」
水無月が即座に否定する。
「違う!」
「当たってるのに、“重さが乗ってない”」
「攻撃だけ通る分身だ!」
撫子が笑う。
「当たり。全部ハズレだけどね」
蓮が舌打ちする。
「厄介だな……!」
踏み込む。
鏡を割る。
1枚。
また1枚。
撫子の像が砕ける。
だが、本体は見えない。
その時。
ほんの一瞬。
撫子の1体だけ、動きが遅れる。
「……そこか!」
踏み込む。
一直線。
霜月が反応する。
「遅い」
時間減速。
水の流れが鈍る。
蓮の動きも、重くなる。
止まる。
撫子が殴る。
だが――
水鏡。
衝撃が反射する。
「なっ……!?」
撫子が吹き飛ぶ。
水無月が前に出る。
「それ以上は通さない」
霜月が距離を取る。
「……厄介だな」
その瞬間。
水面が揺れる。
背後。
水無月が接近。
「隙だ」
直撃。
霜月が吹き飛ぶ。
体勢を崩す。
着地。
その先。
蓮。
周囲に展開された水鏡。
撫子の分身がその周りを囲む。
だが。
踏み込めない。
攻撃は、すべて反射される。
霜月が歯を食いしばる。
「……突破できないか」
撫子がため息。
「これ、時間かかるだけだね」
沈黙。
霜月が目を閉じる。
「……ここまでだ」
撫子が手を上げる。
「降参」
月狼が告げる。
「勝者――水無月・蓮」
水面が静まる。
鏡が、静かにひび割れた。
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