ep.6「ボスの正体」
「はぁ……はぁ……ここは……どこですか?」
「ここは、地球解放軍32の本部だよ!」
お姉さんに引っ張られ辿り着いた先は、Decemberの中央に聳え立つタワー。
どうやら、ここにボスとやらがいるらしい。
俺の名前を聞いた途端、お姉さんは分かりやすく焦り出しボスと面会させようとしている。
つまり、ボスは俺のことを知っているか言うことだよな……。
「ささ!早く行こっ!
早くしないと私が怒られちゃう!」
人類最後の隠れ家、Decemberのトップなんだ、きっとオーラがあってとてつもないカリスマ性を持った人なんだろう。
そんな人が俺に会いたがっている。
知らない世界で目覚めて、ボスが俺を求めている……
俺ってば、この世界の救世主ってやつなのかもしれない。
剣と魔法のファンタジー世界では、無さそうなのが少し残念だが。
お姉さんに案内され、地球解放軍32の本部へと足を踏み入れる。
ボスがいるのは最上階の部屋らしく、お姉さんと共にエレベーターへ乗り込む。
エレベーターは丸いカプセル型で、一面ガラス張りになっている。
技術が進歩すると全てのモノが丸っこくなるのか?
そんな、雑念が思い浮かぶほどに会話の無い、無言の空間が続いていた。
階を重ねる毎にお姉さんの顔は緊張度を増している。
ボスというのは、よっぽど怖い存在なのだろう。
ピロン……384階、最上階です。
エレベーターのアナウンスが流れる。
384階、初めて聞く階数に驚いている暇なんてない。
だって、この先に俺を救世主たらしめる、ボスがいらっしゃるのだから。
エレベーターの扉が開くと、奥に見えるのは一枚の真っ白な扉。
あの先にボスの部屋があるのだろう。
扉の前に到着するとお姉さんは上を見上げる。
視線の先には、カメラのような装置がこちらを向いている。
「大蛇です。金富 正義を発見いたしました。」
「入れ……」
そのカメラから低い男性の声が聞こえると、真っ白な扉は招くようにゆっくりと開き、俺はボスの部屋に足を踏み入れる。
本棚や未来装置のような見慣れない機械が壁面に飾られている。
内装は至ってシンプル。
そして、部屋の奥には重厚感のあるデスク。
いかにもボスのデスクであることを表している。
「ボス、この子が金富 正義をお連れしました。」
ゆっくりと後ろ向きのデスクチェアが回転する。
ようやく、ボスとのご対面。
これから何が起こるんだ?
異世界転生では無さそうだからスキルとかステータスとかは無いんだよな?
ってことは、武器とか?
まぁ、なんでもいいや、なんて言ったって俺はこの世界の救世……えっ……
「久しぶりだな、正義……」
「え……」
「俺のメッセージ通りにしてくれたようだな」
「え、いや……」
「あれから、10年か……大きくな——」
「——お父さん⁉︎」
そう、目の前に座るボスとやらは俺の父、金富 慈鳥。
顔は少し老けているが、白髪混じりの金髪や少し吊り上がった目は健在。
実の父なんだ俺が間違えるはずがない。
「えぇー⁉︎お、親子……?」
10年ぶりな父との再会の衝撃を上回るお姉さんの驚き。
少し空気を読んで欲しい場面だが、俺はそれどころではない。
「ど、どういうこと……?なんで、お父さんが……」
「まず、この世界について話さねばならん。」
「この世界……?」
「あぁ、この世界はエイリアンによって支配されている。
そして、正義……お前が生きていた世界はエイリアンによって見せられていた仮想現実だ。」
「ど、どういうこと……?」
父はそれから、この世界のことについて実に1時間ほどかけ、詳しく説明してくれた。
父が話していた内容を俺なりに噛み砕くと……
まず、この世界はエイリアンによって、人類が支配された世界だそうだ。
エイリアンは人間になりすまし、社会に紛れ込み、長い年月をかけ地球をジワジワと侵略していったらしい。
そして、決定的となったのは、2025年に発令された、『生命資源管理法』。
それは「資源の枯渇から人類を守る」という名目で、人間の意識を仮想現実へ移行させる法律だった。
人々は専用のカプセルに入り、ゴーグルを装着。
すると、意識は仮想現実へと送られる。
俺が目を覚ました時に入っていたカプセルがまさにそれだ。
仮想現実では、カプセルに入る前の記憶は改ざんされ仮想現実こそが現実だと錯覚するらしい。
その世界で費やす寿命が人間エネルギーとなり、エイリアンの生活エネルギーの源になるそうだ。
つまり、人間で言う発電をこの世界では、エイリアンが人間で行っているわけだ。
まぁ、この世界というかここが本当の地球らしいのだが……
これを、すぐに信じられるほど俺の頭はファンタジーではない。
まるで、都市伝説の話だ。
「なんで、俺はこの世界に来ることができたの?」
「それは、年越しジャンプしなかったからだ」
「やっぱりお父さんの遺言って、年越しジャンプをしないことだったんだね……」
「仮想現実はその名の通り作られた世界。
エイリアンの技術によって管理された世界なのだ」
「管理された世界……」
「だが、その世界も永久ではない。
ソフト同様、定期的にアップデートを行う必要があるのだが、そのタイミングが10年毎の年越しのタイミングなのだ。
その時に年越しジャンプをしないことによって、システム異常を起こし、この世界に意識が戻ってくる……」
「じゃあ、お父さんもそれでこっちの世界に?」
「あぁ、そこの大蛇の協力もあってな」
父は僕の隣で立っているお姉さんを指差している。
聞くのを忘れたいたが、名前は大蛇と言うらしい。
見た目からは想像できないかっこいい名前だ。
「そこで正義、お前をこっちの世界に呼んだのは他でもない、地球解放軍32として人類の地球を取り返してほしい」
「え、つまり……
僕もその地球解放軍に入るってこと……?
取り返すって、エイリアンと戦ったり……」
「あぁ、地上に存在するエイリアンを駆逐することが地球解放軍32の使命だ」
「でも、僕戦ったりとか——」
「人類のためなんだ、頼む」
父は頭を下げる。
まぁ、ある意味期待していた世界の救世主なのだが、エイリアンと戦うなんて聞いてない。
ましてや、ボスが父だなんて。
しかも、スキルや魔法が無いんだ。
素手で戦えって言うのか?
ていうか、32って選ばれしものしか入隊できないんだよね……。
え、待って……仮想現実に帰りたい……。




