ep.5「地下帝国December」
かれこれ5分は落下している。
腕は胸の前でクロス、顎は引く……このポージングも少しキツくなってきた。
少しでも動けば、身体が削れそうなほど窮屈な空間。
もっと、お客さんに優しい設計にして欲しい。
ていうか、あのお姉さんなに?
本当に味方なの?
てか、そもそもなんでこんなことしてるの俺。
蝿の家で年越ししてただけだよね……?
という具合に、何もやることがないので文句ばかり思い浮かぶ。
足元から光が差し込む。
ようやく、この穴地獄から抜けられるようだ。
「これは……」
ようやく、暗い穴から抜け出した俺の視線に広がるのは都市というべきか国というべきか、なにやら、見たことのない文明が広がっていた。
自然な緑が見当たらない真っ白な鉄鉄しい景色、マンションというには角が足りない円型の建物。
中央には一際身長の高い、タワーが聳え立っている。
未来都市というのが1番近い表現かもしれない。
だんだんと近づく未来都市だが、変わらず身体は高速で落下している。
地面を視認できる距離まで迫るとそこにあるのは、落ちる前にあったマンホールのような円状に青白く光る物体。
おそらくあそこが着地地点なのだろうが、
「これ、どうやって止まったらいいのぉぉぉ!!」
パラシュートも何も装備していない俺にはこの落下を止める術はない。
よく見る飛び降りる夢と同じ、フワッと感が身体をくすぐらせる。
せっかく、エイリアンから逃れられたのに意味分からないところで落下死なんてのはごめんだ。
着地と同時に受け身を取れば助かるか?
膝を曲げて、身体を丸めてローリングからの手で地面をパンッ……
よし、いける!やるしかない!
近づく着地地点。
受け身のシュミレーションはバッチリ。
「いつでもかかってこい。」と無謀な決意を固めた、地面から約20mほどのことである。
突然、落下スピードがフワッと減速した。
そういえば、蝿が言っていたっけ。
人間は死ぬ瞬間に脳の処理速度が高まって景色がスローモーションになるって……。
タキサイなんとか現象だっけか?
今、体験しているのはまさにそれか。
……逆に都合がいい。
受身のタイミングが分かりやすいからな。
ゆっくりと着地地点が近づいてくる。
足に硬い物体の感触を感じる。
——いまだ!
俺はすかさず、膝を曲げ身体を丸める。
ここまで完璧。
そして、ローリングからの最後に地面を……
パンッ!!
……決まった。
身体は無事だが、受け身の衝撃で手がジンジンと痛む。
とてつもない速度で落下したんだ、エネルギーを手で分散するには妥当な痛みだろう。
「えーっとぉ……なにしてるの?」
上からゆっくりと降りてくるお姉さん。
受け身も取らずにゆっくりと着地する。
「受け身です。あんな距離落下したら死ぬと思って……」
「いくら、緊急用の入り口だからって"グラヴィティコントロール"があるから死なないわよぉ……」
「グラヴィティコントロール……って、なんですか……?」
「そっか、僕ちゃんの世界にはまだ無かったんだっけぇ?」
「は、はい……こんな技術は無いです……」
俺の世界……?
ここは、俺がいた世界とは違う世界なのか?
頭上を通る自動車、建物も角が削ぎ落とされたようなデザイン。
確かに、技術もデザインセンスも違うようだが。
未来にタイムスリップしたとか……?
「まぁ、すぐになれるわぁ。
とりあえず、案内するわぁ。ついておいでぇ。」
「は、はい!」
この、近未来な都市に着くや否やお姉さんは俺を連れて案内をしてくれた。
予めルートが決まっているような、流れるようにスムーズな案内であった。
お姉さんの説明はどうやら、俺には情報量が多すぎたので分かったことを一旦整理しよう。
①ここは、Decemberという地下帝国であり、地上のエイリアンから身を隠すための人類最後の隠れ家だということ。
②Decemberの人口は約1000人。
仕事をしたり遊んだり、俺がいた世界とほとんど変わらない生活を送っている。
③お姉さんの所属している地球解放軍32は、選ばれしものが所属できる組織で、この国の治安を守るいわば"警察"のような役割をしているという。
まぁ、超簡単にまとめるとこんな感じか。
なぜ、エイリアンに支配されているのかなぜ人類が地下にいるのかを質問したが、「目覚めたばかりで疲れているだろうから、おいおい話すわねぇ」と綺麗に流された。
なにか、隠している感じも否めない。
「まぁ、だいたいこんな感じかなぁ……?
まだ目覚めて間もないから頭こんがらがっているよねぇ?
近くのホテルがあるから今日はそこに泊まりなぁ」
「あ、ありがとうございます!
……って、俺今お金持ってないんですけど……」
「お金ぇ……?
あぁ、何年か前にそんなのあったわねぇ。
Decemberは自由な国だからねぇ。
ここではお金なんてのはいらないよぉ。」
「そ、そうなんですか……⁉︎」
「それじゃあ、気をつけてねぇ〜。
て、そうだ。まだ名前聞いてなかったねぇ?」
「名前は金富 正義って言います!」
「正義くんねぇ。これからよろしくねぇ……
ん?まって?もう一回名前言って?」
「金富 正義です……」
「カナト……金富⁉︎
ちょっとそれさっき言ってよ‼︎
今すぐボスのところ行くよ‼︎」
「え、ちょっと⁉︎急になんですかぁ‼︎」
俺の名前を聞くや否や俺の腕を引っ張り走り出す。
どうやら、ボスのところに向かっているようだが、なんで急に……
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