第26話「人類接続」
それは、声ではなかった。
通信でも、電波でも、信号でもない。
重力の揺らぎ。
宇宙そのものを通して、広がっていく“呼びかけ”。
――手、貸して。
その一言が。
銀河中に、静かに響いた。
外宇宙航路。
補給艦の中で、整備士が顔を上げる。
「……今の、なに?」
火星圏。
訓練中のパイロットが、ふと手を止める。
「誰か、呼んだ?」
地球。
夜の空を見上げていた少女が、胸を押さえる。
「……ソラ?」
そして。
軌道都市ユグドラシル。
GF部隊。
レイが、目を閉じる。
「……届いた。」
DENEBのオペレーターが混乱する。
「全通信チャンネルに異常波!」
「でもこれ……ノイズじゃない……!」
ミナトがモニターを見つめる。
「違う。」
「これ……同期してる。」
内部。
ソラは、限界の中にいた。
視界は崩れ。
感覚は薄れ。
存在そのものが、崩壊寸前。
それでも。
手を伸ばし続ける。
「……もう少し。」
そのとき。
NOVAの中に、微かな反応が生まれる。
ひとつ。
またひとつ。
点のような光。
それは――
人の意識。
外部。
レイが操縦桿を握る。
「……応答する。」
VEGAの重力炉が起動する。
赤い光が灯る。
「ソラ。」
「一人じゃない。」
ORION。
ALTAIR。
DENEB。
次々と反応が上がる。
さらに。
艦隊。
コロニー。
遠く離れた星系。
無数の“意識”が、重力を通して繋がっていく。
内部。
ソラが目を見開く。
「……来た。」
NOVAの中に、光が増えていく。
無数の点。
やがて線になり。
面になり。
広がる。
「これ……」
「人類……全部?」
“それ”が反応する。
異常。
未定義。
干渉不能。
ソラは笑った。
「一人じゃ無理でもさ。」
「みんななら、いける。」
重力が変わる。
今度はソラ一人のものではない。
人類全体の“意思”
外部。
DENEBが叫ぶ。
「重力波、全域同期!」
「こんなの……観測したことない!!」
レイが静かに言う。
「……繋がった。」
内部。
ソラは立ち上がる。
もう揺れていない。
崩れていない。
「いける。」
NOVAの姿が変わり始める。
装甲ではない。
構造そのものが変化する。
より大きく。
より深く。
より“広く”。
“それ”が動く。
完全な修正。
全領域初期化。
だが。
今度は違う。
止まる。
押し返される。
ソラが手を伸ばす。
その手は。
もはや一人のものではない。
「これが。」
「人類。」
重力が重なる。
宇宙と。
人と。
法則と。
可能性が、交差する。
“それ”が初めて後退する。
ほんのわずか。
だが確実に。
ソラが呟く。
「届く。」
一歩踏み出す。
「もう少しで――」
そのとき。
さらに奥。
本当の最深部から。
完全な“何か”が起動する。
今までのすべてが、前段階だったと理解させる存在。
DENEBが震える。
「まだ……あるの……?」
ソラは静かに笑う。
「いいよ。」
「全部来なよ。」
その目は揺れていない。
人類と宇宙。
その戦いは。
ついに――
決戦段階へ突入する。




