第20話「宇宙への干渉」
そこは、もはや戦場ではなかった。
空間は形を失い、時間は流れを曖昧にし、上下も距離も意味を持たない。
ただ一つ。
“存在”と“意思”だけがぶつかり合う領域。
シンギュラリティ級の最深部。
その中心で――
アマミヤ・ソラと、
**“宇宙の意思”**が対峙していた。
外部。
GF部隊は、崩壊し続ける巨大存在を見つめていた。
シンギュラリティ級は、すでに原型を失っている。
だが消えてはいない。
むしろ――
さらに濃くなっている。
DENEBが叫ぶ。
「内部反応、増大!」
「縮んでる……!?」
レイが目を細める。
「違う。」
「収束している。」
ORIONのパイロットが呟く。
「一点に……?」
その一点こそが。
本体。
内部。
ソラは息を整えていた。
目の前にある“それ”。
形はない。
だが確かにそこにある。
そして――
自分を拒絶している。
「……さっきので分かった。」
ソラが静かに言う。
「これ、壊せない。」
NOVAの光が揺れる。
「だってこれ。」
少し笑う。
「宇宙そのものだもんね。」
“それ”が動く。
重力の波が押し寄せる。
ソラは動かない。
ただ見ている。
「でもさ。」
操縦桿を握る。
「干渉はできる。」
NOVAの内部。
重力炉が静かに変化する。
これまでのような出力上昇ではない。
より根本的な変化。
AIが記録する。
《重力制御方式変化》
《未知プロトコル検出》
ソラが呟く。
「これ、力じゃない。」
「ルールだ。」
その瞬間。
NOVAの周囲に、新しい“法則”が生まれる。
重力が、命令に従う。
“それ”が揺らぐ。
初めて。
明確に。
反応する。
――異常。
――危険。
――排除。
ソラは笑った。
「やっと会話できた。」
一歩踏み出す。
距離はない。
だが確実に近づく。
「ねえ。」
「なんで壊すの?」
“それ”は答えない。
だが、重力の波が強くなる。
拒絶。
否定。
排除。
ソラは頷く。
「そっか。」
「必要だから、だよね。」
少し目を閉じる。
「宇宙を守るために。」
再び目を開く。
「でもさ。」
その瞳が強くなる。
「私も同じなんだよ。」
NOVAの光が深くなる。
青を越えて。
より重い、濃い光へ。
「守りたい。」
「この宇宙を。」
重力が広がる。
今度は、ぶつけるのではない。
重ねる。
“それ”の法則に。
自分の法則を。
干渉。
上書き。
その瞬間。
宇宙が震えた。
外部。
全観測機器が一斉に異常を示す。
DENEBが叫ぶ。
「重力定数が変動!?」
「そんなことありえない!!」
レイが呟く。
「……ソラ。」
内部。
“それ”が揺らぐ。
明確に。
構造が崩れ始める。
ソラは手を伸ばす。
「届く。」
あと少し。
そのとき。
強烈な反発。
NOVAが押し戻される。
「っ……!」
ソラが歯を食いしばる。
「まだ……!」
だが笑う。
「でも分かった。」
「あと一歩。」
“それ”もまた、変化していた。
ただの排除ではない。
対抗。
意思を持って、ソラに向き合う。
宇宙が、彼女を認識する。
ソラは静かに言った。
「いいよ。」
「やろう。」
操縦桿を握る。
NOVAの重力炉が、これまでにない光を放つ。
「トップを越えるって――」
深く息を吸う。
「こういうことだよね。」
宇宙と人類。
二つの“意思”が
真正面から衝突する。
その先にあるのは――
進化か、消滅か。




