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第8話 「はじめての休日デート」

挿絵(By みてみん)


土曜日、午前十時。


待ち合わせ場所は、高校時代にも何度か友達同士で遊びに来た大型ショッピングモール。


ユウキは約束の三十分前には到着していた。


(……早すぎたな。)


腕時計を見る。


まだ九時三十五分。


落ち着こうと思って缶コーヒーを買うが、一口飲んでも妙に緊張が抜けない。


(営業のプレゼンより緊張してる。)


そんな自分に苦笑する。


その時だった。


「ユウキー!」


聞き慣れた明るい声。


振り返ると、マミが小さく手を振りながら駆け寄ってきた。


「ごめん!」


「待った?」


「いや。」


「俺も今来たところ。」


嘘だった。


マミはすぐに気付く。


「絶対嘘。」


「三十分前には来てたでしょ?」


「……なんで分かる?」


「顔。」


「昔から楽しみな日は早く来るタイプだったもん。」


「そこまで覚えてるの?」


「もちろん。」


二人は顔を見合わせて笑った。


今日のマミは、白いブラウスに淡い水色のロングスカート。


高校時代の制服姿とは違う、大人らしい落ち着いた雰囲気だった。


ユウキは思わず見惚れる。


「どうしたの?」


「え?」


「そんなに見られると恥ずかしい。」


「……似合ってる。」


その一言で、マミの頬がほんのり赤くなる。


「ありがとう。」


「ユウキも。」


「私服かっこいい。」


「営業マンより好きかも。」


「ほんと?」


「うん。」


朝からお互い照れっぱなしだった。


最初に向かったのは映画館。


「何観る?」


「恋愛映画?」


「恥ずかしくない?」


「じゃあアクション?」


「それにしよう。」


ポップコーンを一つ買って、並んで座る。


上映が始まる。


映画に集中していたはずなのに。


ユウキは隣が気になって仕方がない。


笑うタイミング。


驚く仕草。


時々、腕が少しだけ触れそうになる距離。


高校時代には絶対に経験できなかった時間だった。


映画が終わる。


「面白かった!」


「最後熱かったね。」


「主人公かっこよかった。」


「でも。」


マミが笑う。


「ユウキの方がかっこいい。」


「……え?」


「冗談。」


「心臓に悪い。」


「ふふっ。」


からかうように笑うマミ。


その笑顔が可愛くて、ユウキは何も言い返せなかった。


昼食はパスタ専門店。


「いただきます。」


食事をしながら話題は高校時代へ戻る。


「覚えてる?」


マミが笑う。


「数学の小テスト。」


「ああ。」


「ユウキ、一回だけ私より点数高かった。」


「奇跡だった。」


「すっごい自慢してきた。」


「そんなことした?」


「した!」


『今日は勝った!』


ってガッツポーズしてた。」


「うわ……恥ずかしい。」


「かわいかったよ。」


「その記憶消して。」


「無理。」


二人は大笑いする。


食後は雑貨店を見て回る。


マミは文房具売り場で立ち止まった。


「かわいい。」


手に取ったのは、桜柄のボールペン。


「仕事で使おうかな。」


「似合いそう。」


「ユウキも一本買いなよ。」


「営業だから?」


「うん。」


「おそろい。」


「……!」


思わぬ一言にユウキは固まる。


「嫌だった?」


「いや。」


「嬉しい。」


二人は同じボールペンを買った。


色違いで。


マミはピンク。


ユウキはネイビー。


夕方。


ショッピングモールを出る。


外は夕焼け。


「少し歩こうか。」


「うん。」


近くの川沿いの遊歩道を歩く。


秋風が心地よい。


「今日。」


マミが空を見上げる。


「すごく楽しかった。」


「俺も。」


「高校生の時に来てたら、どんな一日だったかな。」


「たぶん。」


ユウキは笑う。


「緊張しすぎて全然話せなかった。」


「私はずっと話してそう。」


「それは想像できる。」


二人で笑う。


少し沈黙が流れる。


その時。


マミが立ち止まった。


「ユウキ。」


「ん?」


「手。」


「え?」


「今日は……。」


少し恥ずかしそうに笑う。


「繋いでみる?」


ユウキの心臓が一気に高鳴る。


「……いいの?」


「うん。」


ゆっくり。


本当にゆっくり。


ユウキは右手を差し出す。


マミも左手を伸ばす。


そっと。


指先が触れる。


そして自然に手を重ねる。


温かい。


柔らかい。


高校一年生の自分が見たら、信じられない光景だった。


二人は顔を見合わせる。


少し照れながら。


でも嬉しそうに笑った。


「なんか。」


マミが小さく呟く。


「安心する。」


「俺も。」


手を繋いだまま、夕焼けの遊歩道を歩いていく。


その距離はもう、「ただの同級生」とは呼べないほど近づいていた。


しかし、その様子を少し離れた場所から見つめる一人の男性がいた。


スーツ姿の黒川だった。


「……やっぱり。」


彼は静かに目を伏せる。


「遅かったか。」


そう呟きながらも、二人の幸せそうな笑顔を見て、小さく微笑んだ。


「負けたくないけど……。」


「マミさんが幸せなら、それでもいいのかもしれない。」


ライバルの想いもまた、本物だった。


そしてユウキはまだ知らない。


来週、高校時代の恩師との再会が、二人の恋をもう一歩前へ進めることになることを。


――第9話「先生がくれた、あの日の真実」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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