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初恋は、十年越しに花開く。  作者: こよみん


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第5期 第5話 「はじめての名前」

挿絵(By みてみん)


六月下旬。


青空が広がる土曜日。


今日は、妊婦健診の日だった。


「緊張する?」


ユウキが車を運転しながら尋ねる。


助手席のマミは、お腹を優しくなでながら微笑む。


「うん。」


「今日は、もしかしたら分かる日だから。」


「俺も。」


「営業のプレゼンより緊張してる。」


「それ、もう聞き飽きた。」


「でも本当。」


二人は笑い合いながら病院へ向かった。


診察室。


エコー検査が始まる。


モニターには、以前よりずっと大きくなった赤ちゃんが映っていた。


小さな手。


小さな足。


元気よく動いている。


「順調ですね。」


医師が穏やかに話す。


「発育も良好です。」


マミは安心したように息をついた。


しばらく画面を見ていた医師が、二人の方へ向き直る。


「性別ですが……。」


ユウキとマミは思わず顔を見合わせる。


「ご希望でしたら、お伝えできますよ。」


「お願いします。」


二人の声がぴったり重なった。


医師は笑顔で頷く。


「女の子ですね。」


その一言で、診察室が静かになった。


「女の子……。」


マミが小さくつぶやく。


ユウキも思わず笑顔になる。


「そうか。」


「娘か。」


医師も優しく微笑む。


「元気いっぱいですよ。」


病院を出る。


初夏の風が心地よい。


「娘だって。」


マミが何度も言う。


「うん。」


ユウキも何度もうなずく。


「想像すると。」


「なんか。」


「もう会いたくなる。」


「まだ早いよ。」


「分かってる。」


でも、二人とも嬉しさを隠せなかった。


昼食は近くのカフェ。


窓際の席でランチを楽しむ。


「名前。」


マミがコーヒーを見つめながら言った。


「そろそろ考えようか。」


「そうだな。」


ユウキはメモ帳を取り出す。


「候補を書いていこう。」


「どんな名前がいい?」


マミが尋ねる。


ユウキは少し考える。


「呼びやすくて。」


「優しい響きがいい。」


「私も。」


「それと。」


「笑顔が似合う名前。」


「いいね。」


二人は思いつくままに書き始める。


「陽菜。」


「結衣。」


「美月。」


「紬。」


「咲希。」


「ひまり。」


「いっぱいあるね。」


「決められない。」


「ねぇ。」


マミが笑う。


「一つだけ条件。」


「何?」


「花園高校が始まりだったから。」


「花とか。」


「春を感じる名前も素敵かも。」


ユウキはその言葉に頷いた。


「桜。」


「すみれ。」


「菜々花。」


「かわいい。」


「でも。」


「顔を見てから決めるのもいいね。」


「うん。」


「この子に似合う名前を。」


帰宅後。


リビングには、小さなノートが置かれた。


表紙には、マミが丁寧な字で書く。


『赤ちゃんの名前ノート』


一ページ目。


二人で考えた名前が並んでいく。


その横には、小さなメモ。


『優しい子になりますように。』


『笑顔いっぱいの人生になりますように。』


『人を思いやれる子になりますように。』


名前だけではなく、願いも一緒に書き留めていった。


夕方。


ユウキの母から電話がかかってくる。


「健診どうだった?」


「女の子だった。」


電話の向こうから歓声が上がる。


「本当!?」


「かわいい服、いっぱい買っちゃいそう!」


「まだ早いよ。」


ユウキが苦笑する。


「分かってるけど。」


「楽しみなの。」


同じ頃、マミの母からも連絡が入る。


「ベビーベッド、必要なら一緒に見に行こうか。」


「ありがとう、お母さん。」


家族みんなが、新しい命を心待ちにしていた。


夜。


寝る前。


マミはお腹へ優しく話しかける。


「今日は。」


「あなたが女の子だって分かったよ。」


「お父さん。」


「すごく嬉しそうだった。」


ユウキも隣に座る。


「名前。」


「まだ決まってないけど。」


「ゆっくり考えよう。」


「一生の宝物だから。」


マミは優しく微笑んだ。


「うん。」


「焦らなくていいよね。」


「この子にぴったりの名前。」


「二人で見つけよう。」


数日後。


会社から帰宅したユウキは、玄関の前で小さな荷物を見つける。


送り主は、両家の祖父母たち。


中には、小さなベビー服が何着も入っていた。


まだ生まれてもいない孫へ。


家族みんなの愛情が、少しずつ形になり始めていた。


――第6話「小さなベビー服」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」



そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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