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初恋は、十年越しに花開く。  作者: こよみん


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第5期 第2話 「おじいちゃん、おばあちゃんになる日」

挿絵(By みてみん)


日曜日。


柔らかな春の日差しがリビングを照らしていた。


テーブルの上には、小さな紙袋。


その中には、病院でもらったエコー写真が大切にしまわれている。


「緊張する?」


ユウキが尋ねる。


「うん。」


マミは少しだけ笑った。


「結婚の報告の時より緊張してるかも。」


「俺も。」


今日は、両家へ新しい命の報告をする日だった。


最初に訪れたのは、ユウキの実家。


玄関を開けると、母がいつものように笑顔で迎えてくれる。


「いらっしゃい。」


「二人とも元気?」


「うん。」


父もリビングから顔を出した。


「今日は珍しく改まった顔だな。」


「何かあったのか?」


ユウキとマミは顔を見合わせ、小さくうなずく。


温かいお茶が運ばれてくる。


少しだけ沈黙が流れた。


ユウキが深呼吸をする。


「父さん、母さん。」


「今日は報告があるんだ。」


母は優しく微笑む。


「何?」


ユウキは紙袋からエコー写真を取り出し、テーブルへそっと置いた。


「……。」


母は写真を見つめる。


数秒後。


目を大きく見開いた。


「これって……。」


マミが静かに答える。


「赤ちゃんができました。」


一瞬、部屋が静まり返る。


そして次の瞬間。


「本当に!?」


母の目から涙があふれた。


「おめでとう……!」


立ち上がって二人を抱きしめる。


「ありがとう。」


「本当にありがとう。」


父も目を潤ませながら写真を見つめていた。


「俺も……。」


「おじいちゃんか。」


照れくさそうに笑う父の声が少し震えていた。


「予定日は?」


母が涙を拭きながら尋ねる。


「十一月です。」


「そう。」


「楽しみね。」


母は嬉しそうにエコー写真を見つめる。


「こんなに小さいのに。」


「もう家族なんだね。」


マミは優しくお腹に手を添えた。


「うん。」


「毎日少しずつ育ってるんだって。」


昼食を囲みながら、話題は自然と子どものことになる。


「名前は?」


父が聞く。


ユウキは笑う。


「まだ全然。」


「性別も分からないし。」


母が笑顔で言う。


「焦らなくていいの。」


「元気に生まれてきてくれることが一番。」


その言葉に、二人は大きくうなずいた。


午後。


今度はマミの実家へ向かう。


「ただいま。」


「おかえり。」


母が嬉しそうに迎える。


父も新聞を置いて立ち上がった。


「今日は何だか二人とも顔が明るいな。」


「実はね。」


マミは小さく笑った。


「お父さん。」


「お母さん。」


「報告があります。」


エコー写真を差し出す。


母は一目見た瞬間、口元を押さえた。


「まさか……。」


「うん。」


「赤ちゃん。」


その一言で十分だった。


母は涙を流しながらマミを抱きしめる。


「おめでとう。」


「本当に、おめでとう。」


父も静かに笑った。


「ユウキくん。」


「はい。」


「ありがとう。」


「娘を幸せにしてくれて。」


ユウキは首を横に振る。


「僕の方こそ。」


「マミと出会えたから、今があります。」


父は大きくうなずいた。


「これからは。」


「三人で幸せにな。」


「はい。」


夕方。


四人でアルバムを開く。


幼い頃のマミ。


小学生。


中学生。


高校の入学式。


「懐かしい。」


マミが笑う。


母は一枚の写真を指差した。


「この頃は。」


「あなたが誰かのお母さんになるなんて、想像もしなかった。」


「私も。」


「まだ実感がない。」


マミは少し照れくさそうに笑った。


帰り道。


夕焼けが街をオレンジ色に染めていた。


「みんな喜んでくれたね。」


マミが静かに言う。


「うん。」


「俺まで泣きそうになった。」


「もう泣いてたよ。」


「バレてた?」


「うん。」


二人は笑い合う。


家へ戻る。


玄関を開ける。


「ただいま。」


「おかえり。」


その言葉を交わしたあと、ユウキはリビングの写真立てを見つめた。


高校時代。


結婚式。


新婚旅行。


そして、その隣にはエコー写真。


「家族が増えるんだな。」


「うん。」


マミは優しく微笑む。


「この子にも。」


「いつか見せよう。」


「私たちの始まりの写真。」


ユウキはうなずいた。


「花園高校の教室も。」


「佐伯先生との約束も。」


「全部。」


「伝えてあげたい。」


その夜。


眠る前。


マミはお腹にそっと手を添えた。


「今日ね。」


「おじいちゃんと、おばあちゃんが。」


「すごく喜んでくれたよ。」


「みんな。」


「あなたに会える日を楽しみにしてる。」


隣ではユウキも、お腹にそっと手を重ねる。


「焦らなくていい。」


「元気に。」


「ゆっくり大きくなってくれ。」


静かな部屋に、二人の優しい声が溶けていった。


そして数週間後。


定期健診の日。


医師から告げられる、新たな知らせに、二人は再び大きな喜びに包まれることになる。


――第3話「小さな鼓動、大きな奇跡」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」



そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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