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初恋は、十年越しに花開く。  作者: こよみん


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第5期 第1話 「新しい春、新しい命」

挿絵(By みてみん)


春。


桜が咲き始めた四月。


結婚して一年。


結婚記念日の朝だった。


「おはよう。」


ユウキがキッチンからコーヒーを運んでくる。


「おはよう。」


マミも眠そうに笑う。


結婚して一年が過ぎても、この「おはよう」は変わらない。


そして、その変わらなさが何より幸せだった。


「今日は約束の日だね。」


マミが言う。


「うん。」


佐伯先生からもらった最後の宿題。


『毎年、結婚記念日に花園高校へ行きなさい。』


その約束を守るため、二人は母校へ向かった。


花園高校。


校門をくぐると、春風に乗って桜の花びらが舞う。


「去年もここに来たね。」


「うん。」


「もう一年か。」


校舎は変わらない。


教室も。


廊下も。


二人にとっては、青春そのものだった。


一年一組。


許可をもらって入った教室。


「ここ。」


マミが前から二列目の窓際に座る。


ユウキはその後ろへ。


高校一年生の時と同じ席。


「毎年ここへ来るなんて。」


「先生らしい宿題だね。」


「でも。」


「好きだな。」


「この宿題。」


二人は笑い合った。


「ユウキ。」


「ん?」


マミは少しだけ緊張した表情になる。


「実は。」


「今日。」


「もう一つ話したいことがあるの。」


「何?」


少しだけ沈黙が流れる。


マミはバッグから小さな封筒を取り出した。


中には一枚の写真。


白黒の、小さな写真だった。


ユウキは首をかしげる。


「これ……。」


「病院でもらった。」


「昨日。」


その瞬間。


ユウキの表情がゆっくり変わる。


「……。」


「もしかして。」


マミは静かに頷いた。


「うん。」


「赤ちゃん。」


「できたの。」


教室が静まり返る。


聞こえるのは、窓の外の風の音だけ。


ユウキは写真を見つめたまま動けなかった。


「本当に?」


「うん。」


「お医者さんにも確認してもらった。」


「順調だって。」


ユウキは何度も写真を見て、何度もマミを見た。


そして。


「ありがとう。」


その一言だけを口にした。


目には涙が浮かんでいた。


マミも涙ぐみながら笑う。


「ありがとうは。」


「私の方。」


「ユウキと家族になれて。」


「本当に良かった。」


ユウキは立ち上がる。


そして、マミを優しく抱きしめた。


「守る。」


「二人とも。」


「いや。」


「三人とも。」


マミはその胸の中で、小さく頷いた。


「うん。」


その日の帰り道。


二人は産婦人科へ向かった。


先生から改めて説明を受ける。


「現在、妊娠八週目です。」


「赤ちゃんは順調に育っています。」


エコー画面に、小さな命が映る。


「これが。」


「赤ちゃん……。」


ユウキは画面から目を離せなかった。


「まだ小さいけど。」


「ちゃんと心臓が動いてますよ。」


トクン。


トクン。


小さな鼓動が部屋に響く。


マミは自然と涙を流していた。


ユウキも静かに涙をぬぐう。


病院を出る。


春の空はどこまでも青かった。


「実感。」


「湧いてきた?」


マミが聞く。


ユウキは笑う。


「少し。」


「でも。」


「父親になるって。」


「すごい責任だ。」


「一人じゃないよ。」


マミはそっとユウキの手を握る。


「一緒に。」


「お父さんとお母さんになろう。」


「うん。」


夜。


家へ帰る。


リビングには、結婚式の写真。


高校時代の写真。


新婚旅行の写真。


その隣に。


今日もらったエコー写真を飾った。


「新しい家族。」


マミが優しくつぶやく。


「ようこそ。」


ユウキも微笑む。


「会える日が楽しみだ。」


数日後。


二人はそれぞれの両親へ報告することを決めた。


「絶対泣くよね。」


マミが笑う。


「うちの母さんは泣く。」


「お父さんも。」


「たぶん。」


二人は笑い合う。


新しい命は。


家族みんなへ、たくさんの幸せを運んでくる。


春風が窓から部屋へ吹き込む。


高校一年生。


前後の席から始まった恋。


夫婦になり。


そして今。


父と母になる、新しい物語が始まろうとしていた。


――第2話「おじいちゃん、おばあちゃんになる日」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」



そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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