第4期 第11話 「新婚旅行のはじまり」
結婚式から一週間。
朝六時。
「ユウキ、起きて。」
「ん……。」
まだ眠そうなユウキを見て、マミがくすっと笑う。
「今日、何の日か忘れた?」
「……。」
数秒考えたあと、ユウキは勢いよく起き上がった。
「新婚旅行!」
「正解。」
二人は顔を見合わせて笑った。
スーツケースを玄関へ運ぶ。
「忘れ物ない?」
「パスポート。」
「ある。」
「スマホ。」
「ある。」
「指輪。」
マミは左手を見せる。
結婚指輪が朝日を受けて静かに輝いていた。
「よし。」
「出発。」
空港。
たくさんの旅行客でにぎわうロビー。
「旅行なんて久しぶりだね。」
「文化祭の日に再会してからは、仕事ばっかりだったもんな。」
「今日は全部忘れよう。」
「夫婦として、初めての旅行。」
「楽しもう。」
搭乗ゲートへ向かう二人の足取りは軽かった。
飛行機の中。
窓際に座ったマミが、雲の海を見つめる。
「きれい。」
「高校の頃。」
「飛行機なんて年に一回乗るかどうかだった。」
「俺も。」
「まさか。」
「新婚旅行で一緒に乗るなんて。」
マミは小さく笑った。
「人生って不思議。」
「本当に。」
数時間後。
目的地へ到着。
海が見えるリゾートホテルだった。
ロビーへ入ると、スタッフが笑顔で迎える。
「ご結婚、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。」
チェックインを済ませると、部屋へ案内される。
扉が開いた瞬間。
「わぁ……。」
大きな窓いっぱいに青い海が広がっていた。
「すごい。」
「絶景だ。」
二人は思わず窓際まで駆け寄る。
ベランダへ出る。
潮風が心地よい。
「気持ちいい。」
マミは目を閉じて深呼吸した。
「こうして二人でゆっくり過ごす時間。」
「久しぶりだね。」
「仕事のこと考えなくていいし。」
「電話も鳴らない。」
ユウキも笑う。
「今日は営業主任でもない。」
「メーカーの副リーダーでもない。」
「ただの。」
「新婚夫婦。」
二人は照れながら笑い合った。
夕方。
海辺を散歩する。
波が静かに砂浜を打つ。
「ねぇ。」
マミがユウキの手を握る。
「結婚しても。」
「こうして手をつないで歩けるのが嬉しい。」
「俺も。」
「何歳になっても。」
「歩こう。」
「約束。」
夕日に照らされた二人の影が、砂浜に長く伸びていた。
ホテルへ戻ると、部屋には一枚のカードが置かれていた。
『Happy Honeymoon』
スタッフからのメッセージだった。
「うれしいね。」
「思い出がまた増えた。」
テーブルには小さなケーキも用意されている。
二人はグラスを合わせた。
「結婚、おめでとう。」
「これからもよろしく。」
「こちらこそ。」
短い言葉だったが、その中にはこれまでの時間と、これからの未来への想いが詰まっていた。
夜。
窓の外には満天の星空。
静かな波音だけが聞こえる。
「今日だけでも。」
マミが穏やかに言う。
「すごく幸せ。」
「俺も。」
ユウキは優しく微笑む。
「でも。」
「これは始まりなんだよな。」
「うん。」
「夫婦としての。」
「長い人生の。」
二人は肩を寄せ合いながら、夜空を見上げた。
翌朝。
ホテルのロビーで観光パンフレットを眺めていると、一枚のチラシが目に留まる。
『夫婦で参加できるサンライズクルーズ』
マミが目を輝かせた。
「これ、行ってみたい。」
ユウキも笑顔で頷く。
「決まり。」
そのクルーズで交わされる新たな約束が、二人の未来をさらに温かく彩ることになる。
――第12話「朝焼けに誓う未来」へ続く。
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