↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
5/19

第5話 「はじめて交換する連絡先」

挿絵(By みてみん)


夕焼けに染まる花園高校。


文化祭の終了を告げるアナウンスが流れ、生徒たちは後片付けを始めていた。


校門へ向かう人の流れに混じりながら、ユウキとマミもゆっくり歩く。


「終わっちゃったね。」


マミが少し寂しそうに笑う。


「そうだね。」


「こんなに一日が短く感じたの、久しぶりかも。」


「俺も。」


高校時代には叶わなかった"一緒に文化祭を回る"という夢。


それが今日、五年越しに叶った。


校門を出ると、秋風が心地よく吹き抜ける。


二人は自然と駅まで続く坂道を並んで歩いた。


「そういえば。」


マミが横を向く。


「ユウキ、ご飯って今日?」


「うん。」


「もし予定なければ。」


「あるわけないじゃん。」


「文化祭終わったら家でゲームしようと思ってたくらい。」


「ふふっ。」


「ユウキらしい。」


「褒めてる?」


「半分だけ。」


二人で笑う。


駅前まで来ると、小さなイタリアンレストランが目に入る。


「ここ入ってみる?」


「いいね。」


店内は落ち着いた雰囲気で、社会人らしいデートにもぴったりだった。


案内された窓際の席。


向かい合って座る。


高校生の頃には考えられなかった距離だ。


「なんか緊張する。」


ユウキが苦笑する。


「え?」


「教室では平気だったのに。」


「こういうお店だと急に意識しちゃう。」


マミは小さく笑った。


「実は。」


「私も。」


料理を待ちながら話は尽きない。


大学時代のこと。


仕事のこと。


休日の過ごし方。


「営業って大変?」


「毎日数字との戦い。」


「マミは?」


「法人営業。」


「え?」


「コピー機とか複合機とか。」


「俺のお客さんとかぶるかも。」


「本当?」


「業界近いね。」


「じゃあ仕事で会ってた可能性あるじゃん。」


「それ面白いな。」


社会人になった今だからこそ話せる話題が、新鮮だった。


料理が運ばれてくる。


「いただきます。」


「いただきます。」


食べながらも笑顔が絶えない。


「高校の頃さ。」


マミがフォークを置く。


「ユウキ、お弁当いつもお母さんが作ってくれてたよね。」


「覚えてるの?」


「覚えてるよ。」


「卵焼きが入ってた。」


「なんでそこまで。」


「毎日見えてたもん。」


ユウキは思わず笑った。


「じゃあ俺も。」


「なに?」


「マミが毎週金曜日だけパンだったの覚えてる。」


マミの目が丸くなる。


「えっ。」


「見てたの?」


「……まあ。」


「なんで?」


「可愛いなって。」


マミは一気に顔を赤くした。


「もう!」


「そういうこと普通に言うようになったんだ。」


「大学で鍛えられました。」


「ずるい。」


食事を終え、店を出る。


外はすっかり夜。


駅前のイルミネーションが輝いていた。


「今日はありがとう。」


マミが立ち止まる。


「私、本当に楽しかった。」


「俺も。」


少しだけ沈黙。


このまま帰るのは惜しい。


でも、まだ恋人ではない。


そんな微妙な距離。


その時だった。


「そうだ。」


マミがバッグからスマートフォンを取り出す。


「ユウキ。」


「ん?」


「連絡先。」


「交換しない?」


ユウキは一瞬固まった。


高校時代。


スマートフォンは持っていた。


でも、お互いに連絡先を聞く勇気がなかった。


だから一度も交換できなかった。


それが今。


マミの方から言ってくれた。


「もちろん。」


ユウキもスマートフォンを取り出す。


画面を見せ合う。


QRコードを読み取る。


ピコン。


『マミさんを友だち追加しました。』


その通知を見ただけで、自然と笑みがこぼれる。


「なんか。」


マミも笑う。


「やっとって感じだね。」


「五年越しだもんな。」


「遅すぎる。」


「ほんとに。」


「じゃあ。」


マミがスマホを操作する。


ピコン。


ユウキのスマホが震えた。


『今日は会えて嬉しかった♪』


たった一通のメッセージ。


それだけなのに、胸が温かくなる。


ユウキはすぐに返信した。


『俺も。またご飯行こう。』


数秒後。


『うん!今度は私がお店探すね♪』


そのやり取りが嬉しくて仕方なかった。


「じゃあ、また。」


「うん。」


改札は反対方向。


二人は手を振る。


「おやすみ。」


「おやすみ。」


電車に乗り込んだユウキは、窓の外を見つめながらスマホを開く。


マミとのトーク画面。


たった数通のメッセージなのに、何度も見返してしまう。


その時、新しい通知が届いた。


『実はね。』


『今日、ユウキに会えたの、すごく運命だと思った。』


ユウキの鼓動が大きく跳ねる。


その一文を見つめながら、小さく笑った。


「俺もだよ。」


誰にも聞こえない声でそう呟き、返信を打ち始める。


高校一年生で止まっていた二人の時間は、ようやく再び動き始めた。


しかし二人はまだ知らない。


運命の再会を喜ぶ一方で、それぞれの職場には新たな出会いが待っていることを。


そしてその出会いが、二人の恋を大きく揺さぶることになる。


――第6話「月曜日、それぞれの職場で」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。