第4期 第9話 「永遠の誓い」
七月。
午前十時。
真夏の青空がどこまでも広がっていた。
白いチャペルの鐘が、高らかに鳴り響く。
今日は、ユウキとマミの結婚式。
高校一年生から始まった、長い初恋が一つの節目を迎える日だった。
新郎控室。
タキシード姿のユウキは、鏡の前で深呼吸を繰り返していた。
「緊張してる?」
父が笑いながら声をかける。
「すごく。」
「営業のプレゼン百回分くらい。」
父は声を出して笑った。
「それなら大丈夫だ。」
「お前は、本番に強い。」
「今日は違うよ。」
「今日だけは。」
「人生で一番大切な日だから。」
父はユウキの肩を軽く叩いた。
「だからこそ。」
「いつものお前で行け。」
その一言に、ユウキは少しだけ肩の力が抜けた。
一方、新婦控室。
純白のウェディングドレスに身を包んだマミは、鏡の前で静かに座っていた。
「きれい……。」
母が目を潤ませながらつぶやく。
「ありがとう。」
「お母さん。」
「今日まで育ててくれて。」
母は優しくマミのベールを整えた。
「幸せになってね。」
「うん。」
二人はそっと抱きしめ合う。
チャペル。
参列者が席に着く。
最前列には両親。
その隣には佐伯先生。
高校時代の友人たち。
野球部の仲間。
そして、マユの姿もあった。
静かなオルガンの音色が響く。
「新郎、ご入場です。」
扉が開く。
ユウキはゆっくりとバージンロードを歩く。
祭壇の前に立ち、深呼吸をする。
(いよいよだ。)
「新婦、ご入場です。」
チャペルの扉がゆっくり開く。
純白のドレスに包まれたマミ。
父と腕を組み、一歩ずつ歩いてくる。
ユウキはその姿を見つめたまま動けなかった。
(きれいだ。)
(世界で一番。)
高校一年生の制服姿が、一瞬重なる。
あの日、教室で笑っていた少女が、今、人生を共に歩む人として目の前にいる。
思わず目頭が熱くなった。
祭壇の前。
父はマミの手をそっとユウキへ託す。
「よろしくお願いします。」
「はい。」
ユウキは真っすぐに頷いた。
「必ず幸せにします。」
父は安心したように微笑み、自分の席へ戻る。
牧師が静かに語りかける。
「これより、お二人は夫婦となります。」
チャペルは静寂に包まれる。
「新郎、ユウキ。」
「あなたは健やかなる時も、病める時も、この人を愛し、支え続けることを誓いますか。」
「誓います。」
迷いのない声だった。
「新婦、マミ。」
「あなたは健やかなる時も、病める時も、この人を愛し、支え続けることを誓いますか。」
マミはユウキを見つめる。
「誓います。」
その笑顔は、高校一年生の頃と変わらず優しかった。
結婚指輪の交換。
ユウキがマミの左手へ。
マミがユウキの左手へ。
内側には、二人だけの言葉。
"Always Together"
「いつも、一緒に。」
その約束が、形になった瞬間だった。
結婚証明書へ署名をする。
ユウキ。
マミ。
二人の名前が並ぶ。
牧師が優しく頷く。
「お二人は、ただ今をもって夫婦となりました。」
チャペルは大きな拍手に包まれる。
その瞬間。
佐伯先生が静かに立ち上がった。
拍手を送りながら、小さくつぶやく。
「本当に、お似合いだ。」
隣に座るマユも微笑みながら涙をぬぐう。
「やっとだね。」
高校時代から見守ってきた人たちの思いが、一つになった。
チャペルの扉が開く。
夏の光が二人を包む。
外ではフラワーシャワーの準備が整っていた。
「おめでとう!」
「お幸せに!」
花びらが舞う。
笑顔と祝福の声に包まれながら、二人はゆっくりと歩き出す。
マミは小さな声で言った。
「ユウキ。」
「ん?」
「夫婦になったね。」
ユウキは照れくさそうに笑う。
「ああ。」
「よろしく。」
「こちらこそ。」
二人は自然に手をつないだ。
その手は、高校一年生の頃にはつなげなかった手。
遠回りしたからこそ、たどり着いた温もりだった。
チャペルの鐘がもう一度鳴る。
青空へ響くその音は、新しい人生の始まりを祝福しているようだった。
そして、舞台はいよいよ披露宴へ。
恩師、友人、家族。
たくさんの「ありがとう」を伝える時間が始まる。
――第10話「ありがとう、そしてこれからも」へ続く。
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