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初恋は、十年越しに花開く。  作者: こよみん


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第3期 第12話 「二人で迎える、特別な年越し」

挿絵(By みてみん)


十二月三十一日。


午前九時。


窓の外には、冬の澄んだ青空が広がっていた。


「今日は大忙しだね。」


エプロン姿のマミが笑う。


「うん。」


ユウキも腕まくりをしながら頷く。


今日は二人にとって初めて迎える年越し。


どこかへ出かけるのではなく、家でゆっくり過ごすと決めていた。


「まずは大掃除!」


「了解!」


役割分担はすっかり定着していた。


ユウキはリビングと窓掃除。


マミはキッチンと水回り。


「そこ届く?」


「大丈夫。」


「危ないから椅子使って。」


「はい。」


同棲を始めた頃より、お互いへの声かけも自然になっていた。


昼前。


掃除が一段落する。


「疲れたぁ。」


マミはソファへ座り込む。


「お茶入れるよ。」


「ありがとう。」


湯気の立つ緑茶を飲みながら、二人は窓の外を眺める。


「今年はいろいろあったね。」


「名古屋から帰ってきて。」


「同棲して。」


「毎日があっという間だった。」


ユウキも静かに頷いた。


「人生で一番早い一年だった。」


午後。


スーパーへ買い出し。


年越しそば。


おせちの材料。


みかん。


そして、小さな鏡餅。


「これも買おう。」


マミが鏡餅を手に取る。


「お正月っぽい。」


「そうだね。」


「家族みたい。」


その一言に、ユウキは少しだけ照れたように笑った。


夕方。


二人でキッチンに立つ。


「伊達巻できた。」


「俺はだし巻き卵担当。」


「だし巻き?」


「挑戦。」


「焦がさないでね。」


「努力します。」


数分後。


「……。」


「焦げた?」


「少し。」


「少し?」


フライパンには、こんがりと色づいた卵焼き。


「これはこれで。」


「香ばしい。」


「便利な言葉。」


二人は笑い合う。


夜。


テレビでは年末特番が流れている。


食卓には二人で作った料理が並んでいた。


「いただきます。」


「いただきます。」


「おいしい。」


「今年最後のご飯だね。」


「来年も一緒に食べよう。」


「もちろん。」


そんな何気ない約束が嬉しかった。


午後十一時四十五分。


二人はベランダへ出た。


冬の空気は冷たい。


「寒い。」


「ほら。」


ユウキはブランケットを広げる。


二人で肩を寄せ合う。


「あと十五分。」


「一年終わるね。」


マミが空を見上げる。


「今年。」


「一番嬉しかったことは?」


ユウキは少し考えた。


「『ただいま』って言える家ができたこと。」


「マミは?」


「毎朝。」


「『いってらっしゃい』って言えたこと。」


二人は微笑み合う。


「ねぇ。」


マミが小さく言う。


「来年は。」


「海外研修がある。」


「うん。」


「少し不安。」


ユウキは優しく頷く。


「俺も。」


「でも。」


「帰ってくる場所はここだから。」


「……うん。」


「だから頑張れる。」


マミはそう言って笑った。


午後十一時五十九分。


テレビからカウントダウンが聞こえてくる。


「十。」


「九。」


「八。」


二人は自然と手をつないだ。


「三。」


「二。」


「一。」


「明けましておめでとう!」


新しい年が始まる。


「おめでとう。」


「今年もよろしく。」


「よろしく。」


その瞬間。


ユウキはポケットに手を入れた。


小さなケースに触れる。


ジュエリーショップから受け取った、あの日の品。


(まだだ。)


(今じゃない。)


(でも。)


(もう決めている。)


マミはそんなユウキの表情に気付かず、初日の出を楽しみに笑っていた。


翌朝。


近所の神社へ初詣に向かう。


参道には多くの人が並んでいた。


「何お願いする?」


マミが聞く。


「秘密。」


「ずるい。」


「マミは?」


「秘密。」


「お互い様だ。」


二人は笑う。


順番が来て、静かに手を合わせた。


ユウキの願いは一つ。


『これから先も、ずっとマミの笑顔を守れますように。』


マミの願いも、一つだった。


『どんな未来も、ユウキと一緒に歩いていけますように。』


神社を出ると、境内では振る舞いの甘酒が配られていた。


「温かい。」


「おいしいね。」


白い息を吐きながら歩く二人。


その時だった。


神社の石段で、小さな男の子が転びそうになる。


ユウキはとっさに駆け寄り、そっと支えた。


「大丈夫?」


「うん!」


男の子は笑顔で両親のもとへ戻っていく。


その光景を見ていたマミは、優しく微笑んだ。


「やっぱり。」


「ユウキらしい。」


「え?」


「困ってる人を放っておけないところ。」


ユウキは少し照れながら頭をかいた。


「高校の頃から変わってないな。」


「うん。」


「だから好き。」


その一言に、ユウキは思わず立ち止まる。


「……ありがとう。」


マミは照れ笑いを浮かべ、その手をぎゅっと握った。


家へ帰る道。


冬の青空を見上げながら、二人は並んで歩く。


海外研修まで、あと少し。


離れて暮らす日もまたやってくる。


それでも。


二人には「帰ってくる家」がある。


そして、帰りを待ってくれる人がいる。


その確かな幸せを胸に、新しい一年が始まった。


そしてユウキのコートのポケットには、小さなリングケースが静かに眠っていた。


その蓋が開く日は、もう遠くない。


――最終話「君と歩く、その先の未来」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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