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初恋は、十年越しに花開く。  作者: こよみん


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第3期 第11話 「離れても、同じ空の下で」

挿絵(By みてみん)


夜九時。


リビング。


食卓の上に置かれた一通の封筒を、ユウキとマミは並んで見つめていた。


「開けるね。」


「うん。」


マミは静かに封を切る。


中から一枚の通知書を取り出した。


その文字を読んだ瞬間、小さく息をのむ。


「……。」


「どうだった?」


ユウキが静かに尋ねる。


マミはゆっくり顔を上げた。


「合格。」


「海外研修メンバーに選ばれた。」


一瞬、部屋が静まり返る。


そして。


「おめでとう。」


ユウキは誰よりも先に笑顔になった。


「本当におめでとう。」


マミの目には涙が浮かんでいた。


「ありがとう。」


「でも……。」


通知書にはこう書かれていた。


研修期間 三か月


勤務地 シンガポール本社


来年一月より開始


あと三か月後。


また離れて暮らすことになる。


それも今度は海外。


「嬉しい。」


「でも。」


「やっぱり少し怖い。」


マミは正直な気持ちを口にした。


ユウキは通知書をテーブルへ置く。


「覚えてる?」


「名古屋へ行く日。」


「駅で約束した。」


マミは小さく頷く。


「毎日連絡すること。」


「本音を隠さないこと。」


「うん。」


「全部守れた。」


「今回も。」


「守ろう。」


マミは涙を拭きながら笑った。


「うん。」


翌日。


二人は休みを合わせて海へ出かけた。


冬が近づいた海は静かだった。


波の音だけが聞こえる。


「寒いね。」


「うん。」


それでも手は自然につながっていた。


「ねぇ。」


マミが海を見つめたまま話し始める。


「高校生の頃。」


「遠距離恋愛なんて絶対無理だと思ってた。」


「俺も。」


「でも。」


「名古屋でできた。」


「今度は海外。」


ユウキは笑う。


「レベルアップしたな。」


「ゲームみたい。」


「ラスボス?」


「まだ中ボスくらい。」


二人は笑った。


しばらく歩いたあと。


ベンチに腰掛ける。


「ユウキ。」


「ん?」


「私。」


「研修へ行きたい。」


「うん。」


「営業として。」


「もっと成長したい。」


「うん。」


「でも。」


「その夢の中には。」


「ちゃんとユウキがいる。」


その言葉を聞いて、ユウキは優しく微笑んだ。


「ありがとう。」


「俺も。」


「将来の夢を考えると。」


「必ず隣にマミがいる。」


夕日が海へ沈んでいく。


「ねぇ。」


ユウキが静かに言う。


「一つ約束しよう。」


「何?」


「三か月。」


「離れてても。」


「帰ってきたら。」


「またここへ来よう。」


マミは笑顔で頷く。


「うん。」


「約束。」


小指を絡める。


何度目か分からない約束。


でも、その一つひとつが二人をここまで連れてきた。


夜。


帰宅後。


ソファで並んで座る。


「今日は。」


マミが笑う。


「少し安心した。」


「俺も。」


「本当は。」


ユウキが照れながら言う。


「寂しい。」


「うん。」


「私も。」


「でも。」


「我慢じゃなくて。」


「ちゃんと言えた。」


「それだけで違うね。」


二人は顔を見合わせて微笑んだ。


数日後。


マミは研修に向けて英会話の勉強を始める。


ユウキも仕事の合間に英語のアプリをダウンロードした。


「なんで?」


マミが不思議そうに聞く。


「少しでも。」


「向こうの話が分かったら楽しいかなって。」


「……。」


マミは思わず笑った。


「ありがとう。」


「一緒に勉強しよう。」


「うん。」


二人は机を並べて座る。


辞書を開き、ノートを書く。


恋人。


同棲相手。


そして。


お互いの夢を応援する、一番近い味方。


そんな時間が静かに流れていった。


年末。


会社から帰宅したユウキが郵便受けを開けると、一通の封筒が入っていた。


差出人は――


ジュエリーショップ


数週間前、ユウキが一人で立ち寄った店だった。


「届いたか。」


小さくつぶやき、その封筒を大切そうにバッグへしまう。


リビングでは、マミが夕食の準備をしながら鼻歌を歌っている。


その笑顔を見つめながら、ユウキは静かに決意する。


(まだ少し先だけど。)


(その日が来たら。)


(今度こそ、自分から伝えよう。)


二人の未来は、もう次の季節へ向かって歩き始めていた。


――第12話「二人で迎える、特別な年越し」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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