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初恋は、十年越しに花開く。  作者: こよみん


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第3期 第10話 「未来へ続くチャンス」

挿絵(By みてみん)


十月下旬。


朝七時。


「いってきます。」


「いってらっしゃい。」


玄関で笑顔を交わし、ユウキとマミはそれぞれ会社へ向かった。


同棲生活にも少しずつ慣れ、朝の支度も以前よりスムーズになってきた。


「今日は帰り遅くなるかも。」


靴を履きながらユウキが言う。


「大型プロジェクトのキックオフなんだ。」


「分かった。」


「私は先に夕飯食べて待ってるね。」


「ありがとう。」


自然に交わされる会話。


それは、二人にとって当たり前の日常になっていた。


東京本社。


営業会議室。


「今回の案件は、当社にとって今年最大規模になる。」


営業部長がスクリーンを映し出す。


全国展開を予定している新サービス。


各支社を巻き込む大型プロジェクトだった。


「主任。」


部長がユウキを見る。


「このプロジェクトのサブリーダーを任せたい。」


会議室が少しざわつく。


「私が……ですか?」


「名古屋での実績を評価した。」


「期待している。」


ユウキは姿勢を正した。


「ありがとうございます。」


「全力で取り組みます。」


その頃、大阪。


マミも部長に呼ばれていた。


「マミさん。」


「はい。」


「来年実施予定の海外研修メンバー候補に推薦したい。」


「海外研修……?」


「シンガポール本社で三か月。」


「営業戦略を学ぶプログラムだ。」


マミは驚いた。


「私に務まるでしょうか。」


部長は穏やかに笑う。


「だから推薦するんだ。」


「期待している。」


夜。


午後九時。


今日は二人とも帰宅が遅かった。


「ただいま。」


玄関を開けると、ほぼ同時にマミも帰ってきた。


「あれ?」


「同じタイミング。」


「おかえり。」


「おかえり。」


顔を見合わせて笑う。


「今日は疲れたね。」


「うん。」


それでも、一緒に帰れるだけで少し気持ちが軽くなった。


夕食は簡単にパスタを作る。


「今日は私が茹でる。」


「じゃあソースは俺。」


キッチンに並ぶ二人。


「こういう役割分担も慣れたね。」


「最初は洗剤の場所も分からなかったのに。」


「成長した。」


「うん。」


笑いながら料理を完成させる。


食後。


ソファで温かいお茶を飲みながら、今日あったことを話し始めた。


「実は。」


ユウキが口を開く。


「大型プロジェクトのサブリーダーになった。」


「本当に!?」


マミは目を輝かせた。


「おめでとう!」


「ありがとう。」


「すごいじゃん!」


ユウキは少し照れくさそうに笑う。


「責任も大きいけどね。」


「ユウキなら大丈夫。」


その言葉に、自然と力が湧いてきた。


「実は私も。」


マミが少し緊張した表情になる。


「海外研修の候補になった。」


「海外?」


「うん。」


「シンガポール。」


ユウキは驚きながらも、すぐに笑顔になった。


「すごい。」


「でも。」


マミは少し視線を落とす。


「三か月。」


「もし決まったら。」


「また離れ離れになる。」


部屋が少し静かになる。


ユウキは少し考えてから口を開いた。


「覚えてる?」


「名古屋にいた頃。」


「毎日午後十時に電話してた。」


マミは微笑んだ。


「覚えてる。」


「あの頃より。」


「今の俺たちは強い。」


「遠距離も経験した。」


「ちゃんと話し合うことも覚えた。」


「だから。」


「もし研修が決まっても。」


「応援したい。」


マミの目に涙が浮かぶ。


「ありがとう。」


「でも。」


「まだ決まってない。」


「うん。」


「決まってから、一緒に考えよう。」


「一人じゃなくて。」


「二人で。」


マミは力強く頷いた。


「約束。」


翌週。


休日。


二人は近所の公園を散歩していた。


紅葉が色づき始め、秋の風が心地よい。


「そういえば。」


マミが笑う。


「最近、お隣のおばあちゃんに『新婚さん?』って聞かれた。」


「なんて答えたの?」


「『まだです』って。」


「まだです。」


ユウキがその言葉を繰り返す。


「『まだ』か。」


少しだけ意味深に笑う。


「何?」


「いや。」


「いつか。」


「その『まだ』がなくなる日が来るのかなって。」


マミは照れながら、ユウキの腕を軽く叩いた。


「気が早い。」


「そうかな。」


「そうです。」


それでも二人とも笑顔だった。


帰宅すると、郵便受けに一通の封筒が入っていた。


差出人は、マミの会社。


「結果かな……。」


静かな部屋で、二人は顔を見合わせる。


マミはゆっくりと封を開いた。


その中には、海外研修の選考結果が書かれていた。


二人の未来を左右する答えが、そこにあった。


――第11話「離れても、同じ空の下で」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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