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初恋は、十年越しに花開く。  作者: こよみん


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第3期 第6話 「初めての朝と、すれ違う時間」

挿絵(By みてみん)


月曜日。


午前六時三十分。


ジリリリリ――。


目覚まし時計が部屋に響く。


「ん……。」


ユウキがゆっくり目を開ける。


隣を見ると、マミはまだ気持ちよさそうに眠っていた。


「昨日、片付けで疲れたもんな。」


起こさないように静かにベッドを抜け出し、キッチンへ向かう。


コーヒーメーカーのスイッチを入れる。


部屋いっぱいに香ばしい香りが広がった。


数分後。


「おはよう……。」


眠そうな声が聞こえる。


「おはよう。」


マミは目をこすりながらリビングへやってきた。


「コーヒー?」


「うん。」


「ありがとう。」


マグカップを受け取り、一口飲む。


「おいしい。」


「よかった。」


何気ない朝。


でも、その何気なさが幸せだった。


「朝ご飯作るね。」


マミは冷蔵庫を開ける。


トーストを焼き、サラダを盛り付け、スクランブルエッグを作る。


「手伝うよ。」


ユウキが隣に立つ。


「じゃあ、お皿出して。」


「了解。」


二人並んでキッチンに立つ。


まだ少しぎこちない。


それでも息を合わせながら朝食を準備する時間は、自然と笑顔になれた。


「いただきます。」


「いただきます。」


トーストをかじりながら、マミが笑う。


「こういう朝、憧れてた。」


「俺も。」


「高校生の頃は想像もしてなかった。」


「うん。」


「朝起きたら好きな人がいるなんて。」


ユウキは少し照れながら笑った。


「毎日幸せだな。」


マミも優しく頷く。


「私も。」


時計を見る。


午前七時四十分。


「あっ!」


マミが立ち上がる。


「メイク!」


「急げ!」


一気に部屋が慌ただしくなる。


洗面所では、


「ドライヤー使うね!」


「そのあと髭剃る!」


「ごめん、あと一分!」


「了解!」


二人で譲り合いながら準備を進める。


「朝ってこんなに忙しいんだ……。」


ユウキが苦笑する。


「毎日こんな感じだよ。」


マミも笑った。


午前八時十五分。


玄関。


「行ってきます。」


「行ってらっしゃい。」


ユウキがドアを開ける。


一歩外へ出て、すぐ振り返った。


「どうしたの?」


「忘れ物?」


マミが首をかしげる。


「違う。」


ユウキは少し照れながら笑う。


「ちゃんと。」


「行ってきますって言いたかった。」


マミは優しく微笑んだ。


「うん。」


「行ってらっしゃい。」


その笑顔を見て、ユウキは会社へ向かった。


夜。


午後八時。


ユウキが帰宅する。


「ただいま。」


返事がない。


リビングの電気も消えている。


「あれ?」


テーブルの上に一枚のメモが置かれていた。


『急なトラブルで残業になりました。先にご飯食べててね。ごめんね。 マミ』


ユウキは小さく息を吐く。


「そっか。」


仕事だから仕方ない。


分かっている。


それでも少しだけ寂しかった。


午後九時半。


玄関のドアが開く。


「ただいま……。」


疲れ切ったマミが帰ってきた。


「おかえり。」


ユウキは笑顔で迎える。


「ごめん。」


「待たせちゃった。」


「気にしない。」


「ご飯、温めるね。」


「え?」


マミが驚く。


キッチンには温め直したシチューとサラダが並んでいた。


「作ったの?」


「昨日の残りだけど。」


「温めた。」


「それでも嬉しい。」


マミは目を細めて笑った。


食事を終えたあと。


ソファに並んで座る。


「ごめんね。」


マミがもう一度言う。


「初日から残業なんて。」


ユウキは首を横に振った。


「謝らなくていい。」


「でも。」


「一つだけお願い。」


「何?」


「残業になる時は、一言だけでも連絡して。」


「心配になるから。」


マミは少し反省したように頷く。


「うん。」


「今日はバタバタして忘れちゃった。」


「私からもお願い。」


「俺も?」


「帰りが遅くなる日は教えて。」


「一緒に暮らしてるから。」


「待ってる時間もあるし。」


ユウキは笑った。


「そうだな。」


「一人暮らしじゃないんだもんな。」


「うん。」


「二人暮らし。」


その言葉が嬉しかった。


寝る前。


ベッドに入る。


「今日。」


マミが静かに言う。


「一緒に暮らすって。」


「楽しいことばかりじゃないんだね。」


「うん。」


「でも。」


ユウキはマミの方を向く。


「一人だったら。」


「『おかえり』って言ってくれる人はいなかった。」


マミは優しく微笑む。


「私も。」


「疲れて帰っても。」


「『ただいま』って言える場所がある。」


「それだけで頑張れる。」


二人は顔を見合わせ、小さく笑った。


完璧じゃなくていい。


少しずつ。


二人で暮らしを作っていけばいい。


そう思えた夜だった。


翌朝。


目覚ましより少し早く目を覚ましたユウキは、キッチンから聞こえてくる音に気付く。


「トントントン……。」


包丁の音。


「……マミ?」


リビングへ行くと、エプロン姿のマミが真剣な表情で何かを作っていた。


「おはよう。」


「おはよう。」


「何してるの?」


マミは振り返り、少し照れながら笑う。


「お弁当。」


「今日から毎日。」


「ユウキの分も作るね。」


その笑顔に、ユウキの胸はじんわりと温かくなった。


しかし、そのお弁当が思わぬ出来事を引き起こし、会社中を巻き込む騒動になることを、二人はまだ知らなかった。


――第7話「愛妻弁当デビュー!?」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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