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初恋は、十年越しに花開く。  作者: こよみん


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第3期 第5話 「ただいま、と言える場所」

挿絵(By みてみん)


四月最初の土曜日。


朝七時。


引っ越し当日。


「よし。」


ユウキは最後の段ボールにガムテープを貼る。


ワンルームで過ごした社会人生活。


楽しかったことも、寂しかったこともあった。


でも今日で、この部屋ともお別れだ。


「お世話になりました。」


小さく頭を下げる。


同じ頃、大阪。


マミも荷物をまとめ終えていた。


部屋の中は段ボールだけ。


少しだけ寂しい。


「ここで毎日ユウキと電話したな。」


遠距離恋愛の夜。


嬉しかった日も、泣いた日も。


全部この部屋だった。


「ありがとう。」


そう呟いて、玄関のドアを閉めた。


午後一時。


新居。


引っ越し業者が次々と家具を運び込んでいく。


「ソファはこちらでよろしいですか?」


「お願いします。」


「ベッドは寝室へ。」


「はい。」


部屋は少しずつ「家」になっていく。


「終わりました!」


業者が帰る。


静かになったリビング。


まだ段ボールは山積み。


でも。


「終わったね。」


マミが笑う。


「うん。」


「今日から。」


「ここが私たちの家。」


ユウキも笑顔で頷いた。


二人はリビングの真ん中に立つ。


「せーの。」


「ただいま。」


誰もいない部屋へ向かって言う。


少し間を置いて。


「おかえり。」


お互いに笑ってしまう。


「何それ。」


「練習。」


「でも。」


「嬉しい。」


マミは少し目を潤ませていた。


「ずっと夢だったから。」


午後。


段ボールを開け始める。


「これは?」


「食器。」


「これは?」


「本。」


「重っ!」


「漫画多すぎ。」


「宝物だから。」


「減らしてください。」


「善処します。」


「それはやらないやつ。」


笑いが絶えない。


「ユウキ。」


「ん?」


「この箱。」


「開けて。」


中には、高校時代の思い出が詰まっていた。


卒業アルバム。


文化祭のパンフレット。


そして、一枚の写真。


「これ。」


文化祭で再会した日に撮ったツーショット。


二人は写真を見ながら笑う。


「懐かしい。」


「あの日から全部始まった。」


「うん。」


「この写真。」


「飾ろうか。」


「賛成。」


夕方。


ようやく荷ほどきが終わる。


「疲れたぁ。」


マミはソファへ倒れ込む。


「ご飯どうする?」


「作る。」


「え。」


「記念日だから。」


「今日は私が。」


キッチンへ向かう。


エプロンをつける。


先日プレゼントしてもらったベージュのエプロンだった。


「似合ってる。」


「ありがとう。」


「ユウキ。」


「皿洗い担当。」


「はい!」


紺色のエプロンをつける。


「似合う。」


「照れる。」


一時間後。


食卓には、ハンバーグ、サラダ、コンソメスープが並んだ。


「いただきます。」


「いただきます。」


「おいしい。」


ユウキが笑顔になる。


「本当?」


「お店みたい。」


「言い過ぎ。」


「いや。」


「本当に。」


マミは嬉しそうに微笑んだ。


食後。


ユウキは宣言通り皿洗いを始める。


「スポンジどこ?」


「右。」


「洗剤は?」


「左。」


「まだ慣れないな。」


「これから覚えよう。」


二人で笑う。


夜。


ベランダへ出る。


春風が心地いい。


遠くには夜景が広がっている。


「ねぇ。」


マミが静かに言う。


「今日。」


「一番嬉しかったこと分かる?」


「何?」


「『ただいま』って言えたこと。」


ユウキは少しだけ考えてから答えた。


「俺は。」


「『おかえり』って言えたこと。」


マミは優しく笑った。


「毎日言おうね。」


「もちろん。」


「約束。」


寝る時間。


寝室。


新しく買ったクイーンサイズのベッド。


二人とも少しだけ緊張していた。


「……。」


「……。」


目が合う。


「なんか。」


「恥ずかしい。」


「分かる。」


高校時代には想像もできなかった。


恋人になって。


遠距離を乗り越えて。


そして今。


同じ家で、同じ一日を終える。


「おやすみ。」


マミが微笑む。


「おやすみ。」


ユウキも優しく返す。


部屋の明かりが消える。


静かな夜。


それだけで十分幸せだった。


翌朝。


目覚まし時計が鳴る。


「ん……。」


マミが目を覚ます。


隣を見る。


ユウキが眠っている。


「本当に一緒に暮らしてるんだ。」


思わず小さく笑う。


すると。


ユウキも目を開けた。


「おはよう。」


「おはよう。」


その何気ない一言が、二人にとって世界で一番幸せな朝だった。


しかし、幸せな同棲生活は始まったばかり。


朝の支度。


通勤時間。


生活リズムの違い。


「一緒に暮らす」からこそ見えてくる、小さなすれ違いも少しずつ始まっていく。


――第6話「初めての朝と、すれ違う時間」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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