第3期 第4話 「家事分担、大論争!?」
引っ越しまで、あと一か月。
土曜日の午後。
ユウキとマミは、新居に置く家具や家電の最終確認をするため、カフェで向かい合って座っていた。
テーブルの上には、新生活チェックリスト。
マミが一つずつ読み上げていく。
「冷蔵庫。」
「注文済み。」
「洗濯機。」
「来週配送。」
「食器。」
「買った。」
「よし。」
順調だった。
ここまでは。
「じゃあ。」
マミが次のページを開く。
「家事分担。」
「……。」
ユウキの動きが止まる。
「決めとかない?」
「住み始めてからケンカしたくないし。」
「そうだね。」
ユウキも頷いた。
「私は。」
マミがペンを持つ。
「料理が好きだから。」
「平日の夕飯はできるだけ作りたい。」
「ありがとう。」
「でも毎日は無理。」
「残業もあるし。」
「もちろん。」
「そこは一緒に考えよう。」
順調だった。
ここまでは。
「じゃあ。」
「掃除は?」
マミが聞く。
「休みの日に一緒にやろう。」
「賛成。」
「洗濯は?」
「気付いた方。」
「うん。」
「ゴミ出し。」
「俺がやる。」
「ありがとう。」
「……。」
二人は顔を見合わせる。
「あれ?」
「意外と平和。」
「だね。」
笑い合う。
しかし。
「あと。」
マミが少し言いづらそうに切り出した。
「お金のこと。」
空気が少し変わる。
「生活費。」
「どうする?」
ユウキは少し考える。
「俺が多めに出すよ。」
「え?」
「主任になったし。」
「収入も少し多いから。」
マミはすぐに首を横へ振る。
「それは嫌。」
「なんで?」
「恋人だからじゃなくて。」
「パートナーだから。」
「ちゃんと半分ずつがいい。」
「でも。」
「収入違うし。」
「それでも。」
二人とも譲らない。
少しだけ沈黙が流れる。
「ごめん。」
ユウキが先に口を開く。
「マミを楽にしてあげたかった。」
マミは優しく笑う。
「ありがとう。」
「でもね。」
「守られるだけじゃ嫌なの。」
「私も支えたい。」
その言葉を聞いて、ユウキははっとする。
高校生の頃から変わらない。
マミはいつも、隣を歩きたい人だった。
後ろでも前でもない。
隣で。
「じゃあ。」
ユウキが提案する。
「家賃は収入の割合で。」
「生活費は半分。」
「どう?」
マミは少し考えてから笑顔になる。
「それ。」
「すごくいい。」
「決まり。」
二人はハイタッチをした。
その日の夕方。
ホームセンターへ寄る。
「洗剤。」
「スポンジ。」
「ゴミ袋。」
生活用品ばかりがカートへ入っていく。
「なんか。」
マミが笑う。
「地味。」
「すごく。」
「でも。」
「楽しい。」
「うん。」
「これも新生活だね。」
レジへ向かう途中。
エプロン売り場でマミが立ち止まる。
「これ。」
淡いベージュのエプロン。
「かわいい。」
「買う?」
「うーん。」
迷っていると。
ユウキがそっと手に取った。
「これ。」
「新生活祝い。」
「え?」
「料理担当へのプレゼント。」
マミは驚いたあと、優しく笑った。
「ありがとう。」
「じゃあ。」
今度はマミが隣の棚から紺色のエプロンを手に取る。
「これは。」
「皿洗い担当。」
「俺?」
「もちろん。」
「逃げられません。」
「了解しました。」
二人はおそろいのエプロンを抱えて笑い合った。
帰り道。
夕日が街をオレンジ色に染める。
「ねぇ。」
マミが歩きながら言う。
「今日。」
「ちょっとだけ言い合いになったね。」
「うん。」
「でも。」
「嫌な気持ちにならなかった。」
「俺も。」
「ちゃんと話したら。」
「ちゃんと分かり合えた。」
マミは微笑む。
「佐伯先生。」
「話し合うことをやめるなって言ってたもんね。」
「本当にその通りだった。」
ユウキも頷く。
「恋人から。」
「家族になる練習だな。」
「うん。」
「少しずつ。」
「私たちらしく。」
その夜。
二人はそれぞれ新しく買ったエプロンを部屋に飾った。
まだ一緒には住んでいない。
でも。
少しずつ。
一つずつ。
「二人の家」が形になっていく。
そして一週間後。
いよいよ引っ越しの日がやってくる。
二人の同棲生活は、笑顔と少しの緊張を乗せて始まろうとしていた。
――第5話「ただいま、と言える場所」へ続く。
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