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第3期 第1話 「はじまりの部屋探し」

挿絵(By みてみん)


三月。


春の訪れを感じる暖かな土曜日。


東京駅の改札前で、ユウキは腕時計を見つめていた。


「そろそろかな。」


数分後。


「ユウキ!」


聞き慣れた声が響く。


「マミ。」


二人は自然に笑顔になる。


付き合って一年半。


両親への挨拶も終え、お互いの家族からも応援される関係になった。


今日は二人にとって、新しい一歩を踏み出す日。


「じゃあ。」


「行こうか。」


「うん。」


目的地は、不動産会社だった。


「いらっしゃいませ。」


担当の女性スタッフが笑顔で迎える。


「今日はどのようなお部屋をお探しですか?」


ユウキとマミは顔を見合わせる。


少し照れながら、ユウキが答えた。


「同棲する部屋を探しています。」


「おめでとうございます!」


スタッフは嬉しそうに微笑んだ。


「ご希望はありますか?」


条件を書き出していく。


「職場へのアクセスがいいこと。」


「二人とも通勤時間は一時間以内が理想ですね。」


「あと。」


マミが笑う。


「キッチンは広めがいいです。」


「料理するんだ?」


ユウキが聞く。


「毎日じゃないけど。」


「ユウキにお弁当作りたいし。」


「……。」


思わず照れてしまう。


スタッフはそんな二人を見て優しく笑った。


数件の物件資料が並ぶ。


「こちらはいかがでしょう。」


二LDK。


駅から徒歩八分。


家賃は予算ぎりぎり。


「いいね。」


「でも少し高い。」


「こっちは?」


一LDK。


駅から徒歩五分。


広いリビング。


「ここ好き。」


マミが目を輝かせる。


「ソファ置ける!」


「映画も観られるね。」


「うん!」


想像するだけで楽しい。


午後。


実際に内見へ向かう。


玄関を開ける。


「わぁ……。」


白を基調とした明るい部屋。


大きな窓から春の日差しが差し込んでいる。


「広い。」


「思ったより。」


マミはリビングを歩き回る。


「ここにテレビ。」


「こっちにソファ。」


「観葉植物も置きたい。」


「気が早い。」


「だって楽しいもん。」


その笑顔を見ているだけで、ユウキも嬉しくなる。


キッチン。


「広い!」


マミはシンクを見て笑う。


「二人で料理できそう。」


「俺も手伝う。」


「本当に?」


「皿洗いくらいなら。」


「くらい?」


「……料理も頑張ります。」


「よし。」


マミは満足そうに頷いた。


寝室へ入る。


ベッドが置かれていない広い空間。


二人は同時に部屋を見渡す。


「ここが寝室か。」


「うん。」


一瞬だけ静かになる。


同棲。


つまり。


毎日一緒に眠り、毎朝一緒に起きる生活。


今まで想像していた未来が、急に現実味を帯びてきた。


「なんか。」


マミが少し照れながら笑う。


「緊張する。」


「俺も。」


ベランダへ出る。


春風が気持ちいい。


「景色もいいね。」


「うん。」


少しの沈黙。


「ねぇ。」


マミが静かに言う。


「高校一年生の私たちに。」


「また教えてあげたい。」


「何て?」


「『将来ね。』」


「『好きな人と、一緒に住む部屋を探してるよ。』って。」


ユウキは笑う。


「絶対信じない。」


「うん。」


「でも。」


「本当になった。」


内見を終え、不動産会社へ戻る。


「いかがでしたか?」


担当者が尋ねる。


二人は顔を見合わせる。


「気に入りました。」


「申し込みます。」


担当者は笑顔で頷いた。


「ありがとうございます。」


「では入居審査の手続きを進めますね。」


帰り道。


桜並木を歩く二人。


「決まったね。」


「うん。」


「いよいよ。」


「同棲。」


マミは少しだけユウキの腕に寄り添う。


「楽しみ?」


「もちろん。」


「でも。」


「少し怖い。」


「どうして?」


「一緒に住んで。」


「嫌なところ見つけちゃったらどうしようって。」


ユウキは優しく笑った。


「その時は。」


「ちゃんと話そう。」


「約束しただろ。」


「話し合うことをやめないって。」


マミは安心したように微笑む。


「うん。」


「約束。」


その夜。


二人はそれぞれの家で、新しい部屋の間取り図を見つめていた。


家具をどこに置くか。


どんな生活になるのか。


期待と少しの不安。


そのすべてが、二人にとってかけがえのない未来だった。


しかし翌日。


不動産会社から一本の電話が入る。


「申し訳ありません。」


「実は、その物件についてご相談がありまして……。」


順調だと思われた同棲計画は、思わぬ出来事によって最初の壁にぶつかることになる。


――第2話「二人の新居、大ピンチ!?」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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