第2期 第12話 「両親に会おう」
名古屋で迎えた一周年の夜。
ホテルラウンジを出た二人は、名古屋駅へ向かって歩いていた。
その時だった。
ユウキのスマートフォンが震える。
母
と表示されている。
「ごめん。」
「ちょっと出るね。」
「うん。」
ユウキは少し離れた場所で電話に出た。
「もしもし、お母さん?」
『ユウキ、元気?』
「うん。」
『今度の日曜日、久しぶりに実家へ帰ってこない?』
「急にどうしたの?」
『たまには顔を見たいなって。』
母は少し間を置いてから、笑いながら続けた。
『それと……彼女がいるんでしょ?』
「……え?」
思わず声が裏返る。
『この前、おばあちゃんの家に帰ってきた時、スマホの待ち受け見えちゃったのよ。』
「見えてたの!?」
『すごく幸せそうな笑顔だった。』
「……。」
『一度、紹介してほしいな。』
電話を切ったあとも、ユウキはしばらくスマホを見つめていた。
「どうしたの?」
マミが心配そうに尋ねる。
「実は……。」
ユウキは苦笑しながら事情を話した。
「お母さんが?」
「会いたいって。」
「うん。」
マミは少し驚いたあと、優しく微笑んだ。
「私、行く。」
「え?」
「ちゃんとご挨拶したい。」
「でも緊張するよ?」
「すごく緊張する。」
「でも。」
「ユウキのお母さんに会いたい。」
その言葉が嬉しかった。
「ありがとう。」
翌週の日曜日。
ユウキの実家。
インターホンを押す。
「ただいま。」
『はーい!』
玄関の扉が開く。
「おかえり!」
「……あら!」
母はマミを見るなり笑顔になった。
「初めまして!」
「マミです。」
「本日はよろしくお願いいたします。」
深く頭を下げる。
「そんなに緊張しなくて大丈夫よ。」
母は優しく笑った。
「さあ、入って。」
リビング。
父も仕事を休んで待っていてくれた。
「初めまして。」
「ユウキの父です。」
「初めまして。」
マミは少し緊張しながら挨拶をする。
食卓には、母の手料理が並んでいた。
「おいしそう。」
「いっぱい食べてね。」
食事をしながら、高校時代の話になる。
「文化祭で再会したんです。」
ユウキが笑う。
「へぇ。」
母は興味津々だった。
「高校生の時は付き合ってなかったの?」
「はい。」
マミが照れながら答える。
「お互い好きだったんですけど。」
「勇気がなくて。」
母は思わず吹き出した。
「ユウキらしい!」
「お母さん!」
「昔から奥手だったものね。」
父も静かに笑っている。
「でも。」
「今こうして一緒にいるなら。」
「遠回りも悪くなかったんじゃないか。」
その言葉に、二人は顔を見合わせた。
「はい。」
同時に答える。
食後。
母が台所でお茶を準備している間。
父がユウキを庭へ呼んだ。
「少し話そう。」
縁側に並んで座る。
「ユウキ。」
「はい。」
「いい人に出会えたな。」
「うん。」
「大事にしろ。」
「もちろん。」
父は空を見上げながら言う。
「結婚は。」
「好きだけじゃ続かない。」
「思いやりと。」
「話し合いだ。」
ユウキは佐伯先生の言葉を思い出していた。
「ちゃんと話し合うこと。」
みんな同じことを言う。
それだけ大切なのだ。
一方。
リビングでは。
母とマミが二人で話していた。
「マミちゃん。」
「はい。」
「ユウキは昔から、人のために頑張りすぎるところがあるの。」
「知ってます。」
「だから。」
「たまには休ませてあげてね。」
マミは優しく頷く。
「はい。」
「私も支えてもらってるので。」
「これからは私も支えます。」
母は安心したように微笑んだ。
帰り道。
駅まで歩く二人。
「どうだった?」
ユウキが聞く。
「すごく優しいご両親だった。」
「安心した。」
「よかった。」
「それに。」
マミは少し照れながら笑う。
「私。」
「もっとユウキのお嫁さんになりたいって思っちゃった。」
その一言に、ユウキは思わず足を止める。
「……え?」
マミは慌てて手を振る。
「ち、違うの!」
「まだ先の話だから!」
「その……。」
「いつかの話!」
顔を真っ赤にして照れるマミ。
ユウキは優しく笑った。
「俺も。」
「え?」
「いつか。」
「そうなれたらいいなって思ってる。」
二人は照れながら顔を見合わせる。
結婚。
まだ具体的ではない。
でも。
その言葉を自然に話せるくらい、未来が近く感じられるようになっていた。
その夜。
マミのスマートフォンに一本の電話が入る。
『お母さん』
「もしもし?」
『今度の日曜日、帰ってこられる?』
『その……。』
『ユウキくんにも会ってみたいんだけど。』
マミは思わず笑顔になる。
「うん。」
「きっと喜んで来てくれる。」
こうして次は、マミの家族との初対面が決まった。
二人の恋は、少しずつ「二人だけのもの」から、「家族を含めた未来」へと歩み始めていた。
――最終話「未来への挨拶」へ続く。
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