第2期 第7話 「同じ未来を描く日」
六月。
ユウキは予定より早く東京本社へ戻ってきた。
「おかえり!」
営業部の先輩たちが拍手で迎えてくれる。
「名古屋で大活躍だったらしいな。」
「ありがとうございます。」
「今度は東京でも頼むぞ。」
「はい!」
新しい席に座る。
ホテル暮らしは終わり、久しぶりに自分の部屋へ帰ってきた。
ふと机の引き出しを開ける。
そこには、名古屋へ向かう日にマミからもらった手紙が、大切にしまってあった。
『半年後、「おかえり」って笑顔で言えるように、私も頑張る。』
ユウキはその文字を見つめ、小さく笑った。
「約束、少し早く叶ったな。」
その週の土曜日。
マミが新幹線で東京へやって来た。
「ユウキ!」
「マミ!」
東京駅で再会した二人は、自然と笑顔になる。
「今日は東京デートだね。」
「案内するよ。」
「期待してます。」
二人は肩を並べて歩き出した。
午前中は美術館。
午後は街を散策。
夕方には展望台から街並みを眺めた。
「すごい……。」
夕日に染まる東京の街。
ビル群の向こうに広がる空を見ながら、マミは静かに呟く。
「ユウキ。」
「ん?」
「名古屋に行く前より、少し大人になった気がする。」
「そうかな。」
「うん。」
「前は、自分一人で頑張ろうとしてた。」
「今は違う。」
「ちゃんと頼れるようになった。」
ユウキは少し照れながら笑う。
「それはマミのおかげ。」
夜。
二人は落ち着いたレストランで夕食をとる。
食事を終え、温かいコーヒーを飲みながら、将来の話になった。
「ねぇ。」
マミが少し真剣な表情になる。
「私たち。」
「もう付き合って半年くらいになるね。」
「そうだね。」
「高校時代を入れたら、もっと長いけど。」
二人は笑う。
「仕事も少し落ち着いてきたし。」
「うん。」
「最近、考えることがあるの。」
「何?」
マミは少し照れながら言った。
「いつか。」
「一緒に暮らしてみたいなって。」
その言葉に、ユウキは少し驚いた。
でも、すぐに穏やかな笑顔になる。
「実は。」
「俺も。」
「え?」
「同じこと考えてた。」
「遠距離を経験して思ったんだ。」
ユウキは静かに話し始める。
「仕事で疲れた日。」
「嬉しいことがあった日。」
「直接『おかえり』って言える人がいる生活って、幸せなんだろうなって。」
マミは何度も頷く。
「私も。」
「朝、『いってらっしゃい』って送り出して。」
「夜、『おかえり』って迎えて。」
「そんな毎日に憧れる。」
ユウキはテーブルの上に手を置く。
マミも自然にその手へ自分の手を重ねた。
「まだすぐじゃなくていい。」
「うん。」
「お互い仕事もある。」
「でも。」
「一年後くらいを目標に。」
「同棲、考えてみない?」
マミの目が大きくなる。
「……本当に?」
「もちろん。」
「無理に急ぐつもりはない。」
「ちゃんと準備して。」
「二人が納得できるタイミングで。」
マミは嬉しそうに笑った。
「うん。」
「それなら。」
「私も頑張って貯金する。」
「俺も。」
「いい部屋探さないとな。」
「ふふっ。」
二人は未来の話をしながら笑い合った。
レストランを出る。
夜風が心地よい。
「今日は。」
マミが空を見上げる。
「なんだか夢みたい。」
「どうして?」
「高校一年生の私に教えてあげたい。」
「何を?」
「『好きな人と、将来の話をしてるよ』って。」
ユウキは優しく笑う。
「たぶん。」
「昔の俺なら、信じない。」
「絶対信じない。」
二人は声を出して笑った。
東京駅。
新幹線の時間が近づく。
「今日はありがとう。」
「こちらこそ。」
「次は大阪だね。」
「うん。」
少しだけ名残惜しい空気が流れる。
「ねぇ。」
マミが微笑む。
「同棲の話。」
「今日だけの約束じゃなくて。」
「ちゃんと叶えようね。」
ユウキは力強く頷く。
「もちろん。」
「約束。」
二人は小指を絡める。
高校生の頃には交わせなかった約束。
恋人になった今は、その約束が少しずつ未来へ近づいていた。
その頃、ユウキの会社では東京本社への正式な昇進人事が進み始め、マミの会社でも大阪支社の新たな責任ある役職が検討されていた。
二人が描き始めた未来には、新しい選択と決断が待っている。
――第8話「二人の夢と、それぞれの夢」へ続く。
『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。
ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。
そして、
「二人の再会が好きだった」
「このシーンが心に残った」
「マミがかわいかった!」
「ユウキ、もっと勇気出せ!」
そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。
もちろん、レビューも大歓迎です。
皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。
そして何より――
この作品をきっかけに、
「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」
そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。
まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。




