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第2期 第5話 「突然の転勤話」

挿絵(By みてみん)


月曜日、午前九時。


星野テクノロジー株式会社・大阪本社。


営業部の朝礼が終わり、社員たちが席へ戻っていく。


「マミさん。」


部長が静かに声をかけた。


「少し会議室へ。」


「はい。」


いつもより少し真剣な表情。


マミは胸騒ぎを覚えながら後をついていった。


会議室。


部長は一枚の資料を机に置く。


「まずは。」


「新規プロジェクト、本当によく頑張ってくれている。」


「ありがとうございます。」


「実は本社でも高く評価されていてね。」


マミは嬉しそうに微笑んだ。


だが、その次の一言で表情が固まる。


「東京本社への異動候補に名前が挙がっている。」


「……え?」


一瞬、言葉の意味が理解できなかった。


「東京……ですか?」


「正式決定ではない。」


「ただ、六月から一年間、本社で経験を積んでほしいという話が出ている。」


六月。


もし決まれば、ユウキが名古屋にいる間に、マミは東京へ行くことになる。


昼休み。


マミは社員食堂の窓際で、一人スマホを見つめていた。


(どうしよう……。)


嬉しい話ではある。


営業として成長できる。


でも。


ユウキに何と伝えればいいのだろう。


「マミ。」


同期の黒川が隣に座った。


「元気ないね。」


「顔に出てる?」


「少し。」


マミは苦笑しながら事情を話した。


黒川は静かに聞いていた。


「東京か。」


「うん。」


「悩むよね。」


「仕事としては嬉しい。」


「でも。」


「恋人が遠くなる。」


マミは小さく頷いた。


黒川は少し考えてから言う。


「俺なら。」


「好きな人には、まず正直に話す。」


「一人で抱え込むと、余計につらくなるから。」


その言葉に、マミは少しだけ肩の力が抜けた。


「ありがとう。」


「相談してよかった。」


黒川は笑って席を立つ。


「恋人がいる人を応援するなんて、ちょっと複雑だけどね。」


冗談めかして笑うその表情は、どこか吹っ切れたようにも見えた。


その夜。


午後十時。


いつものビデオ通話。


「お疲れ。」


「お疲れ。」


少しだけ沈黙が流れる。


ユウキはすぐに気付いた。


「何かあった?」


「え?」


「マミ。」


「隠し事すると、左の眉が少し下がる。」


「そんな癖ある?」


「高校一年生から。」


マミは驚いて笑った。


「よく見てるね。」


「好きだから。」


照れくさそうに笑ったあと、マミは真剣な表情になる。


「実はね。」


東京本社への異動候補の話を、最初から最後まで包み隠さず話した。


話を聞き終えたユウキは、少しだけ考え込んだ。


「……びっくりした。」


「うん。」


「でも。」


「マミ。」


「これはチャンスだよ。」


「え?」


「高校の頃から知ってる。」


「マミは努力してきた。」


「その結果なんだから。」


「でも。」


「離れちゃうよ?」


ユウキは優しく笑う。


「今だって。」


「名古屋と大阪。」


「離れてる。」


「場所が変わるだけ。」


「それに。」


「俺はマミに、夢を諦めてほしくない。」


画面の向こうで、マミの目が潤む。


「本当にそう思う?」


「もちろん。」


「恋人だからこそ。」


「応援したい。」


マミは涙を拭きながら微笑んだ。


「ありがとう。」


「ずっと不安だった。」


「反対されたらどうしようって。」


「そんなわけない。」


「俺たち。」


「約束しただろ。」


「一人じゃなくて。」


「二人で歩くって。」


マミは大きく頷いた。


「うん。」


「忘れてた。」


「じゃあ。」


「正式に決まるまでは頑張ってみる。」


「応援してる。」


「ありがとう。」


通話を終えたあと。


ユウキはホテルの窓から夜景を眺めていた。


恋人を応援したい。


それは本心だ。


でも。


(本当は少し寂しい。)


その気持ちも確かにあった。


一方、マミもまたベッドに座りながら呟く。


「ユウキも、きっと我慢してくれてる。」


恋人だからこそ、本音を飲み込んでしまうこともある。


それでも二人は、お互いの夢を支え合うことを選んだ。


その選択が、二人の絆をさらに強くしていく。


そして数日後。


ユウキのもとに一本の電話が入る。


その知らせは、半年ぶりに二人の距離を一気に縮める、思いもよらない内容だった。


――第6話「帰ってこい」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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