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第2期 第3話 「届かない『おやすみ』」

挿絵(By みてみん)


午前八時三十分。


名古屋支社。


「ユウキくん。」


営業課長が会議室へ呼ぶ。


「昨日話した案件なんだが。」


「はい。」


「先方から仕様変更の要望が入った。」


「納期は変わらない。」


「……え?」


「来週までに提案書を全部作り直してくれ。」


部屋の空気が重くなる。


大型プロジェクト。


しかも締め切りは一週間後。


「分かりました。」


ユウキは静かに頷いた。


その日から残業が続いた。


午後八時。


午後九時。


午後十時。


それでも終わらない。


時計を見る。


21:58


(まずい……。)


急いでスマートフォンを取り出す。


ユウキ

『ごめん!今日は少し遅れそう!』


送信。


既読はすぐについた。


大阪。


午後十時。


マミはソファに座り、スマホを見つめていた。


テーブルには二人で買ったペアマグカップ。


その隣には、ユウキからもらったシルバーのブレスレット。


通知が鳴る。


『今日は少し遅れそう!』


「大変なんだね。」


マミはすぐ返信する。


『無理しないでね♪』


そしてビデオ通話の画面を閉じた。


時計は午後十一時を回る。


十一時半。


零時。


ユウキから連絡はない。


(寝ちゃったのかな。)


そう思いながらも、マミは眠れなかった。


結局、スマホを握ったまま眠りについてしまう。


翌朝。


午前六時。


ユウキは会社近くのホテルで目を覚ました。


机にはノートパソコン。


昨夜はホテルへ戻ってからも仕事を続け、そのまま寝落ちしてしまっていた。


「しまった!」


スマホを見る。


マミからのメッセージ。


『おやすみ♪』


送信時刻は22時15分。


返信できていない。


ユウキはすぐ電話をかけた。


「もしもし?」


少し眠そうな声。


「ごめん!」


「昨日……。」


「寝ちゃった?」


マミは優しく笑う。


「ううん。」


「仕事で疲れてたんでしょ?」


「本当にごめん。」


「気にしない。」


そう言うマミ。


でも、その声は少しだけ寂しそうだった。


ユウキには分かった。


「今日も遅くなる?」


「たぶん。」


「そっか。」


「でも。」


「電話一本だけでもして。」


「五分でいいから。」


「声が聞けたら安心する。」


ユウキは強く頷いた。


「約束する。」


その日の夜。


午後十時。


ユウキはまだ会議中だった。


スマホが震える。


画面には


マミ


の名前。


(出たい……。)


でも出られない。


会議は続く。


午後十時二十分。


ようやく終わる。


急いで電話をかける。


しかし。


『ただいま電話に出られません。』


留守番電話。


ユウキはメッセージを残した。


「ごめん。」


「本当にごめん。」


「今終わった。」


「声だけでも聞きたかった。」


大阪。


その頃。


マミは会社の会議室にいた。


新規プロジェクトの打ち合わせが長引いていた。


スマホを見る。


着信 ユウキ


「……。」


「あと少しだったのに。」


小さくため息をつく。


お互い忙しい。


誰も悪くない。


分かっている。


それでも。


タイミングが少しずつずれていく。


金曜日。


二人とも疲れが溜まっていた。


夜。


久しぶりにビデオ通話がつながる。


画面に映った瞬間。


「お疲れ。」


「お疲れ。」


笑おうとする。


でも。


どちらも少し元気がない。


「最近。」


マミが静かに言う。


「寂しい。」


「……。」


「会えないのは仕方ない。」


「でも。」


「声も聞けない日が続くと。」


「遠く感じちゃう。」


ユウキは画面越しに頭を下げた。


「ごめん。」


「仕事を言い訳にはしたくない。」


「でも今だけは。」


「もう少しだけ頑張らせて。」


マミはゆっくり頷く。


「私も。」


「応援したい。」


「だから。」


「我慢じゃなくて。」


「ちゃんと話そう。」


「寂しい時は寂しいって。」


「会いたい時は会いたいって。」


「隠さない。」


ユウキは笑った。


「それが一番だな。」


「うん。」


「約束。」


「約束。」


通話を終えたあと。


二人とも同じことを考えていた。


遠距離恋愛で一番怖いのは、距離じゃない。


「大丈夫」と言い過ぎて、本当の気持ちを伝えなくなること。


だからこそ。


二人は今日、もう一つ新しい約束を作った。


「本音を隠さないこと。」


その約束は、これから訪れるもっと大きな試練を乗り越えるための、大切な支えになっていく。


そして翌週。


ユウキは突然、大阪への一日だけの出張を命じられる。


離れて一か月。


二人に訪れる、思いがけない再会の日が近づいていた。


――第4話「たった三時間の再会」へ続く。

『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。


ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。


そして、


「二人の再会が好きだった」

「このシーンが心に残った」

「マミがかわいかった!」

「ユウキ、もっと勇気出せ!」


そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。


もちろん、レビューも大歓迎です。


皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。


そして何より――


この作品をきっかけに、


「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」


そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。


まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。

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