第10話 「初恋に、答えを」
土曜日。
午前十一時。
待ち合わせ場所は、高校時代によく通っていた駅前の公園。
秋の風が木々を揺らし、落ち葉が足元をゆっくりと転がっていく。
ユウキは約束の二十分前に到着していた。
(……また早く来ちゃったな。)
苦笑しながらベンチに腰を下ろす。
その時。
「ユウキ!」
聞き慣れた声が響く。
振り向くと、マミが少し息を切らしながら手を振っていた。
ベージュのニットに白いロングスカート。
優しい雰囲気が秋の景色によく似合っていた。
「待った?」
「いや。」
「今日も早かったでしょ?」
「……バレた?」
「もう分かるよ。」
そう言って笑うマミを見て、ユウキも自然と笑顔になる。
二人は公園をゆっくり歩く。
休日の公園では、小さな子どもたちが元気に遊んでいた。
「平和だね。」
「うん。」
「こういう休日、好き。」
「俺も。」
会話は自然だった。
一緒にいることが、もう当たり前のように感じられる。
「そうだ。」
マミが立ち止まる。
「先生の話。」
「うん。」
「私ね。」
少しだけ緊張した表情になる。
「高校を卒業してからも。」
「何度もユウキのこと思い出してた。」
ユウキは静かに耳を傾ける。
「大学に入って彼氏ができても。」
「社会人になって忙しくなっても。」
「文化祭のこととか。」
「席が前後だったこととか。」
「全部忘れられなかった。」
マミは照れくさそうに笑う。
「だから。」
「文化祭の招待状を見た時。」
「もしかしたら。」
「ユウキも来るかもしれないって。」
「少しだけ期待してた。」
その言葉に、ユウキは驚く。
「そうだったの?」
「うん。」
「でも本当に会えるなんて思ってなかった。」
ユウキはゆっくり息を吸う。
「実は俺も。」
「え?」
「招待状を見た時。」
「マミも来てたらいいなって思った。」
「……。」
「会えるわけないって思ってたけど。」
「少しだけ期待してた。」
マミは目を潤ませながら笑う。
「一緒だったんだ。」
「うん。」
しばらく無言で歩く。
風が二人の間を優しく吹き抜ける。
マミが足を止めた。
「ユウキ。」
「今日は。」
「私から話すって決めてた。」
「……うん。」
「高校一年生の時。」
「私はユウキが好きでした。」
「卒業しても。」
「大学生になっても。」
「社会人になっても。」
「完全には忘れられなかった。」
一歩、ユウキへ近づく。
「そして。」
「今も。」
「好きです。」
静かな告白だった。
でも、その一言には五年間積み重ねた想いが詰まっていた。
ユウキは目を閉じ、小さく笑う。
「ありがとう。」
「俺も。」
「高校一年生から。」
「ずっと好きだった。」
「今も。」
「マミが好き。」
マミの瞳から涙が一粒こぼれる。
嬉し涙だった。
「やっと。」
「やっと聞けた。」
「五年もかかったね。」
ユウキも笑う。
「遠回りしすぎた。」
「うん。」
「でも。」
「今日があるなら。」
「この五年も無駄じゃなかった。」
ユウキはゆっくりマミの前へ立つ。
「マミ。」
「はい。」
「改めて。」
深呼吸する。
高校一年生の自分には言えなかった言葉。
今度こそ。
逃げない。
「俺と。」
「付き合ってください。」
数秒の沈黙。
マミは涙を拭きながら、大きく頷いた。
「はい。」
「よろしくお願いします。」
その返事を聞いた瞬間。
ユウキの胸の中で、五年間止まっていた時計がようやく動き出した。
二人は顔を見合わせる。
照れくさくて笑ってしまう。
「これで。」
マミが笑う。
「恋人だね。」
「そうだね。」
「まだ実感ない。」
「俺も。」
「じゃあ。」
マミは少しだけ照れながら右手を差し出した。
「恋人らしく。」
ユウキはその手を優しく握る。
今までとは違う。
"友達"としてではない。
"恋人"として繋ぐ手。
温もりが心地よかった。
「ねぇ。」
マミが悪戯っぽく笑う。
「高校一年生の私たちに教えてあげたいね。」
「なんて?」
「安心して。」
「五年後。」
「ちゃんと付き合えるよって。」
ユウキは吹き出した。
「絶対信じないだろうな。」
「だね。」
二人は笑い合う。
夕日が二人を優しく照らしていた。
初恋は、ようやく実を結んだ。
しかし、恋人になった二人には、これから「恋人だからこそ」の新しい悩みや幸せが待っている。
手をつなぐこと、初めてのクリスマス、すれ違い、将来への不安――。
それらを一つずつ乗り越えながら、二人は本当の恋人になっていく。
――第11話「恋人になった最初の一日」へ続く。
『初恋は、十年越しに花開く。』を読んでくださり、本当にありがとうございます。
ユウキとマミの物語を「面白かった」「続きも読んでみたい」と少しでも感じていただけましたら、評価をつけていただけると、とても励みになります。
そして、
「二人の再会が好きだった」
「このシーンが心に残った」
「マミがかわいかった!」
「ユウキ、もっと勇気出せ!」
そんな一言だけでも、感想をいただけたら嬉しいです。
もちろん、レビューも大歓迎です。
皆さまからいただく評価・感想・レビューの一つひとつが、これから物語を書き続けていく大きな力になります。
そして何より――
この作品をきっかけに、
「誰かを好きになるって、やっぱりいいな」
そう思っていただけたなら、作者としてこれ以上嬉しいことはありません。
まだ評価されていない方は、ぜひ応援していただけると嬉しいです。




