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9.ラストダンジョン、ドレスコードで門前払い

魔王城の門の前に到着した俺たちは、ついに最終決戦の熱気に包まれていた。

重厚な黒鉄の門を見上げ、俺は伝説の剣(現在アップデート中)を構え直す。


「勇者様、いよいよですな。この門の先には、世界を絶望に染める魔王が……!」


『……ああ、長かった。ボブの髭出汁を飲み、雀卓でドラを投げつけられ、ようやくここまで来た。じいさん、行くぞ!』


俺が門に手をかけようとしたその時、横の小窓からひょいと門番が顔を出した。

白い手袋をはめ、やたらと姿勢の良い男が、俺の足元から頭のてっぺんまでをジロジロと眺める。


「……お客様。誠に恐縮ながら、その格好でのご入場はお断りしております」


『……は? お客様? 俺、勇者やねん。魔王倒しに来てんねん。格好って、これフル装備の聖騎士の鎧やぞ?』


「左様でございますか。しかし当城のラストステージは『ジャケット着用』が必須となっております。あいにく、鎧のままではカジュアルすぎますな」


『Tシャツ短パン禁止の高級レストランか! 魔王城、いつから会員制のラウンジになったんや! 殺し合いに来てんねん、死生観の確認の前にドレスコードの確認すな!』


「ご安心ください。あちらのクロークで、貸し出し用のブレザーをご用意しております。……ほら、ボブ様も既に着替えておられますよ」


横を見ると、黄金の鎧の上から無理やりピチピチの紺色のブレザーを羽織ったボブが、苦しそうに立っていた。


『ボブ、似合ってへんねん! 腕が上がらんやろ! 黄金の肩パッドがブレザー突き破っとるわ! 「新橋の酔っ払ったラグビー部員」みたいになっとるやんけ!』


「……Oh、ユーシャ。コレ、首、キツイネ。ボタン、全ブ飛ンダネ」


『当たり前やろ! 鎧の上から着る設計になってへんねん! 勇者の最強装備、台無しやんけ!』


「さらに、足元も失礼。……お客様、その『伝説のブーツ』、サンダル扱いになりますので。こちらの黒の革靴に履き替えていただけますか?」


『伝説の武具をクロックス扱いすな! 誰が便所サンダルやねん! 革靴でダンジョンの階段登れるか、滑って頭打つわ!』


結局、俺たちは「伝説の鎧」の上から「安っぽいブレザー」を羽織り、「伝説の剣」を「ゴルフバッグ」に入れて運ぶという、謎の接待ゴルフスタイルで門をくぐることになった。


『これ、魔王に会った瞬間「ナイスショット!」って言わなあかんのか! 緊張感ゼロやんけ!』


「勇者様、魔王様は現在、他のお客様と商談中ですので、あちらの待合室でお待ちを」


『魔王、多忙たぼうか! 予約サイトから申し込まなあかんのか! 俺を元の世界に即帰そっきさせろ!』

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