10.魔王、ネット民すぎて会話にならん
ドレスコードのブレザーを無理やり着せられ、ようやく辿り着いた玉座の間。
そこには、漆黒の炎を纏い、禍々しいオーラを放つ魔王が鎮座していた。
「……来たか、勇者よ。待っていたぞ」
『……おお、やっとや。やっとこのクソゲーのラスボスと対面や。覚悟しろよ魔王、今までの理不尽、全部お前にぶつけてやるからな!』
俺がボロボロの聖剣(アプデ完了)を構えた瞬間、魔王がゆっくりと指を動かした。
すると、俺の頭上に巨大な「親指を下向けたアイコン」が浮かび上がり、不快なブザー音が鳴り響く。
『……低評価ボタン押すな! 初対面やろ! 挨拶の前に「評価」確定させるな!』
「勇者よ。お前のここまでの冒険……正直言って、テンポが悪い。1話から見直したが、ボブの髭の回とか、誰が得するんだ? ブラウザバック推奨だな」
『ネット民か! 魔王、掲示板の住人みたいな口調で喋るな! 命がけの旅をコンテンツ扱いすな! 誰が得するって、俺が一番損しとんねん!』
「今のツッコミも、少し長いな。1.5倍速で再生させてもらう。……さあ、かかってこい。見どころさんが無ければ、即『切り抜き』で済ませてやる」
『「見どころさん」とか言うな! ラスボス戦をダイジェストにされてたまるか! 1秒も飛ばさず全部見ろ! 俺の苦労を数分の動画にまとめるな!』
「勇者様、落ち着いて! 魔王の背後を見てください! 視聴者数(魔物)がリアルタイムで減っていますぞ!」
魔王の玉座の後ろには、現在の「同時接続数」が表示されており、俺が喋るたびに数字がゴリゴリ削られていく。
『同接気にするな! 人気配信者か! 視聴者が離れていくのを俺のせいにすな! お前のカリスマ性が足りてへんだけやろ!』
「フン、コメント欄も荒れているぞ。『勇者のブレザーがダサい』『ボブの黄金の鎧、反射がキツイ』……。おい、アンチを連れてくるな」
『アンチちゃうわ! 仲間や! ボブの反射は俺も眩しいと思ってたけど、それをわざわざ書き込むな! ネットの民度、魔界でも終わっとんのか!』
魔王はため息をつき、今度はスマホを取り出してフリック操作を始めた。
「……つまらんな。お前との戦い、スキップさせてもらう。次の勇者が来るまで、俺は裏で作業用BGMでも流しておくわ」
『スキップすな! 飛ばされる側の気持ち考えろ! 宿命の対決やろ! 5秒待ったら消える広告みたいに扱うな!』
「勇者様、魔王が『収益化』のために、我々の戦闘シーンに細かくCMを挟もうとしておりますぞ!」
『合間に「胡散臭いサプリの広告」流すな! 良いところで漫画アプリの宣伝入れるな! 集中できへんわ!』
結局、魔王は「あ、これ炎上しそうだからパス」と言い残し、煙のように消えていった。
『逃げるな! ログインし直せ! 垢バンされるまで殴らせろ! 俺を元の世界に即帰させろ!』




