11.魔王、逃走先で「投げ銭(スパチャ)」稼ぎに走る
玉座の間から煙のように消えた魔王。
あいつを逃がしてなるものかと、俺とじいさんとボブとゼンイチは、魔法の水晶モニターにかじりついていた。
「勇者様、映りましたぞ! ……おっと、現在12万人が視聴中(同接)ですな!」
『……何しとんねん! 魔王のチャンネル、「勇者から逃げてみたw【生配信】」ってタイトルついとるわ! 逃走劇をコンテンツにするな!』
画面の中の魔王は、リラックスした様子で自室のソファに座り、マイクに向かってヘラヘラと喋っていた。
「……あ、ギフトあざす! 『魔王様、逃げ足速すぎw』? いやー、あの勇者のブレザーがダサすぎて、同じ空間にいるの耐えられなかったんだよね。……おっと、赤スパ(一万円以上の投げ銭)きた! ナイスパ!」
『「ナイスパ」とか言うな! 悪のカリスマがリスナーに媚びるな! 画面が「¥10,000」のステッカーで埋まって、魔王のツノしか見えへんぞ!』
「勇者様、見なされ! 画面の右側を! 視聴者の魔物たちが熱狂して、投げ銭が滝のように流れておりますぞ!」
『魔界の経済回しすぎやろ! 世界の命運をスパチャの総額で決めるな、ただの札束の殴り合いやんけ!』
すると、魔王がカメラ目線で不敵に微笑み、こちらを挑発してきた。
「勇者、見てるか? 俺と戦いたければ、まずは『メンバーシップ(月額500円)』に登録しろ。あと、この配信の同時接続数が100万を超えたら、次のダンジョンを解放してやるよ。……あ、高評価も忘れずにな!」
『……戦うのにサブスク契約が必要なんか! 月額制のラスボス戦とか、コスパ悪すぎるわ! 100万人集まるまで待機させんな、サーバー落ちるわ!』
「Oh、ユーシャ……俺サマ、ボブ。魔王ニ、バカにサレテ、悔シイネ。……俺サマ、負ケナイヨ。……ハイ、スパチャ、GOネ!」
ボブがどこからか取り出した「黄金のスマホ」を連打し始めた。
『ボブ、お前が投げ銭してどうすんねん! 敵を応援するな! 自分の給料、全部魔王に貢いどるやんけ! 「ボブ@ゴールド騎士」ってハンドルネームで赤スパ投げるな!』
「勇者様、見てください! ボブ殿の投げ銭で、魔王が『ありがとうボブ! 認知したよ!』と喜んでおりますぞ!」
『「認知」とか言うな! 距離感バグっとんのか! 勇者パーティの資金が、魔王の新しいマイク代に消えていくの、屈辱すぎるわ!』
結局、魔王は「スパチャの総額が目標に達したので、今日は寝ます。おつ魔王〜!」と言い残し、配信を切った。
『「おつ魔王」とか挨拶すな! 配信切るな、こっちはログインして待っとんねん! 垢バン(アカウント停止)されるまで殴らせろ! 俺を元の世界に即帰させろ!』




