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5.レベルアップの確認、パドック評価で決まる

モンスターを倒した俺は、全身から溢れるレベルアップの予感に震えていた。

いよいよ俺の真の力が覚醒する……そう確信していたのだが。


「勇者様、真の成長を確認するには、あちらの『神聖なる円形広場』へ移動せねばなりませんな」


『ほう、レベルアップの儀式か。いいぜ、じいさん。俺の隠されたポテンシャル、全部引き出してくれよ』


連れて行かれたのは、神殿の裏手にある砂を敷き詰めたドーナツ状の広場だった。

なぜか周囲には高い柵があり、観客席には双眼鏡を構えた魔導士たちがズラリと並んでいる。


「さあ勇者様。ゆっくりと、しかし力強く、この円を描くように歩くのです」


『……歩く? 呪文を唱えたりとか、光に包まれたりとか、そういうのないん?』


「落ち着いて。まずは外見の仕上がりを確認せねば。ほれ、しっかりと私についてきなされ」


老魔導士が俺の首元に、なぜか短い綱を引っ掛けてきた。そのまま、じいさんは俺の左側に並び、一緒に円周を歩き始める。


『「二人引き」で歩かされるな! 俺一人で歩けるわ! 誰が厩務員きゅうむいんやねん、横のじいさんの引っ張る力が強すぎて首痛いわ! 勇者の尊厳どこ行った!』


すると、観客席のスピーカーから聞き覚えのある、やたらと落ち着いた実況が流れてきた。


「……続きましては1番、期待の勇者。本日、馬体重マイナス2キロ。前走のドラゴン戦に比べ、腹周りがスッキリ見えています。気配、悪くありません」


『「馬体重マイナス2キロ」って、俺の体調管理を実況すな! 脂肪燃焼しただけやろ! 前走(ドラゴン戦)って呼ぶな、命がけの死闘を競馬場の一レースみたいに扱うな!』


「うむ、歩様ほようも力強いですな。勇者様、もっと首を低く保って、尻を突き出すように!」


『「歩様」とか言うな! 歩き方に注文つけるな! 俺は馬じゃないねん、人間として進化したいだけなんや!』


観客席の魔導士たちが、赤ペンを耳に挟みながら新聞に何かを書き込み始める。


「本日の勇者、チャカつき(焦り)も見られず、落ち着いていますね。……おっと、ここで尻尾……ではなく、マントの翻りを確認。気合が乗ってきました!」


『「チャカつき」とか玄人くろうとぶった単語使うな! 落ち着いてるに決まってるやろ、ただ歩かされてるだけなんやから! マントの動きでレベル測るな、ただの風や!』


結局、30分間も無言で円を歩かされた挙げ句、電光掲示板に出された俺の評価は……。

【評価:△(単穴) 展開待ち】


『評価、ガタガタやんけ! 「展開待ち」って何や! 俺が主体的に動いてもレベル上がらへんのか!』


「次は『本馬場入場ほんばばにゅうじょう』へ向かいますかな?」


『もうええわ! ゲート入る前にイレ込んで(興奮して)心臓止まるわ! 走り出す前に、俺を元の世界に即帰そっきさせろ!』

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