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2.回復魔法のチャージが長すぎる

魔王軍の先遣隊を退けた俺は、城の救護室にいた。

戦いの衝撃で少し肩を叩いた程度なのだが、老魔導士が「一大事ですぞ!」と血相を変えて飛んできた。


「勇者様、そのお体……深手ですな! すぐに国一番の聖女を呼びますゆえ!」


『いや、かすり傷やねん。大袈裟に騒ぐな、マキロン塗って寝れば治るレベルやろ』


「何を仰いますか! 勇者様に万が一があっては、この老い先短い私の毛根がストレスで全滅いたします!」


『お前の頭皮事情はどうでもええねん! 聖女呼ぶほどの大事かこれ?』


バタンと扉が開き、現れたのは清楚な白のローブに身を包んだ美少女だった。

彼女は俺の前に跪くと、祈るように両手を組み、静かに口を開いた。


「……チャージを開始します。皆様、騒音にご注意ください」


『チャージ? 騒音? 嫌な予感しかせぇへんねんけど。普通にホイミ的なやつ、パパっとかけられへんの?』


「……セット完了。第一保留、緑。期待度……上昇中」


聖女の頭上に、パチスロ台のような透過液晶がガシャーンと降りてきた。

画面の中では、デフォルメされた聖女が一生懸命に薬草を鍋で煮込んでいる。


『液晶出てきた! 救護室で何上映しとんねん! 医療現場にエンタメ持ち込むな!』


「勇者様、見てください! 薬草の色が赤に変わりましたぞ! これは『激アツ』の予兆……!」


『予兆とかええねん! 赤くして喜んでる暇あったら、さっさと煮込んで飲ませろ! 5分前からずっと同じアニメーション見せられてんねんぞ!』


すると、聖女が急に立ち上がり、俺の胸ぐらを掴んで叫んだ。


「さあ! 運命を切り拓くのです! 目の前のボタンを、魂を込めて……叩けぇぇぇ!!」


俺の目の前に、物理的に巨大な「PUSH」ボタンがせり出してきた。

同時に、部屋の照明が真っ赤に点滅し、「キュキュキュキュイン!」と警告音が鳴り響く。


『ボタン長押しさせろ! 鼓膜ちぎれるわ! 回復する前にストレスで寿命縮んどるわ!』


俺がヤケクソでボタンを叩くと、画面にデカデカと「祝・全快」の文字。

その瞬間、俺の肩の傷がようやく消え、天井からは「おめでとう!」という合成音声と共に大量の銀紙が降ってきた。


『演出が豪華すぎるわ! 肩こりが治っただけやぞ! ラスボス倒した後のテンションで祝うな!』


「次は『強化魔法』の10連ガチャに参りますかな?」


『もうええわ! 魔法使うたびに確変かくへん待ちさせられる身にもなれ! 湿布しっぷくれ、普通の湿布を!』

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