1.パチンコ屋に転生したんか俺は
「おお……ついに! ついに我が国の救世主が降臨なされた!」
目が覚めると、見知らぬ神殿のど真ん中に立っていた。目の前には、豪華なローブを着て涙を流しながら拝んでくる老人が一人。
「勇者様、お待ちしておりましたぞ。この国は今、魔王軍の脅威にさらされ、滅亡の淵に立たされておるのです。どうか、我らをお救いください!」
『いや、感動の対面中に悪いけどな。じいさん、俺の足元の魔法陣、なんで「準備中」ってデジタル文字が点滅してんねん。工事現場か! 命がけの召喚やろ、せめてフル充電で待っとけ!』
「これは失礼いたしました。魔力が少々不安定なもので……。さあ、まずはこの伝説の聖剣をお受け取りください。これこそが、古より伝わる唯一無二の至宝にございます」
老魔導士が恭しく捧げ持ってきたのは、金銀の装飾が施された……パチンコ台のハンドル。
『装備、ハンドルのみ! どこのバラエティコーナーから引っこ抜いてきたんや! 剣の概念どこ行った! これでどうやって戦うねん、相手の懐に入って「右打ち」の指示でも出すんか!』
「何を仰いますか。そのハンドルを握れば、勇者様の魔力と共鳴し、奇跡が起こるのです。さあ、早く!」
促されるまま、俺が困惑してそのハンドルを握った、その瞬間。
「ピロリロリロリ、キュインキュイーーーン!」
神殿中に、鼓膜をぶち破るような爆音が鳴り響いた。
『パチンコ屋の開店初日か! 聖域で騒音出すな! 結界の防音設備どうなってんねん、近隣住民から苦情くるわ!』
さらに、俺の頭上の空間に、ド派手な金色のフォントが浮かび上がる。
【勇者の期待度:33.3%】
『低っ! 3回に2回は失敗する数字やねん! 国の命運を3連単の単勝で賭けるな! せめて70%は用意しとけ!』
「おお……見てください! 魔法陣の色が緑から赤に変わりましたぞ! これは……これはもしや!」
興奮した老魔導士が、俺の立っている魔法陣の端っこを拳で「ドン!」と力いっぱい叩いた。
『魔導士が台パンすな! 挙動がおかしい時にジジイがやるやつやねん! 魔法陣の感度死ぬわ! 壊れたら俺の帰る場所なくなるやろ!』
「勇者様! 外を! ドラゴンが迫っております! 今こそ聖剣の力を!」
窓の外を見ると、巨大なドラゴンが火を吹きながら城に突っ込んできていた。俺はヤケクソで、手に持ったハンドルを思い切り右にひねった。
【激熱!!】
空を埋め尽くす、虹色の巨大なフォント。
『文字がうるさいねん! ドラゴンも「え、何これ?」みたいな顔で止まっとるわ! 伝統あるファンタジーの世界観をフォントの暴力で殺すな!』
結局、ドラゴンは謎のファンファーレと共に爆発四散し、空には巨大な「V」の文字が輝いた。
「素晴らしい……これでこの国も安泰ですな」
『「継続率80%」という文字を俺の頭上で出すな! 常に綱渡りやめろ! 20%引いたら国が滅ぶんか! 勘弁してくれ、俺を元の世界に即帰させろ!』




