16.魔法使いゼンイチ、女子二人の「匂わせ」にデータで参戦
ミアとセシリアがキャンプの焚き火を挟んで、スマホと水晶で「匂わせ合戦」を繰り広げている地獄のような空気の中、ついに魔法使いのゼンイチが眼鏡をキラーンと光らせて参戦した。
「……やれやれ。二人とも、そんな非効率なマウント合戦はやめなさい。勇者様を最も『効果的』に演出できるのは、私の計算(魔法)です」
『……ゼンイチ! お前は理系のエリートやもんな。このSNSに狂った女子二人を、論理的に黙らせてくれ! 頼むわ!』
ゼンイチは懐から魔法のタブレット(全自動雀卓風)を取り出すと、高速でグラフを描き始めた。
「……はい、抽出完了。勇者様、こちらのデータをご覧ください。『勇者様との親密度と期待値グラフ』です。ミアさんの『ハンカチ』による匂わせのインプレッション数に対し、セシリアさんの『肩寄せ自撮り』のエンゲージメント率……。そして、私の『深夜の二人きり魔力供給』の優位性を証明しました」
『……お前も「匂わせ」に参戦しとるやんけ! データを武器にマウント取るな! 魔法の杖でグラフを描くな! 「深夜の二人きり」とか誤解を招く書き方すな!』
「勇者様ぁ、ゼンイチさんズルいですよぉ! それ、ただの『魔力ポーションの受け渡し』じゃないですかぁ! 私のハンカチの方が、ストーリー性ありますぅ!」
「……ふん。ミアちゃん、エモさなんて数値化できないゴミだよ。……勇者様、私は既にこのグラフを『勇者専属の戦術アドバイザー(意味深)』という肩書きで全世界に共有しておきました」
『肩書きを「意味深」にするな! 匂わせのプロか! 魔法使いの知性を、どす黒いマウント合戦に使うな! じいさん、見たか、パーティのブレインまで腐っとるぞ!』
「勇者様、大変ですぞ! ゼンイチ殿の投稿に対し、セシリア様が『論理でしか繋がれない関係って寂しいね(泣)』と、痛烈な引用ポスト(空リプ)を飛ばしております!」
『「空リプ」で刺し合うな! 焚き火を囲んで直接喋れ! 1メートルの距離でSNS経由で会話すな! 物理的な距離より、ネット上の距離感の方が大事なんか!』
「……Oh、ユーシャ。……俺サマ、ボブ。……ゼンイチノ、グラフ、難シイネ。……俺サマ、『勇者ト、一緒ニ、サウナ、入ッタヨ』ッテ、投稿、シタヨ。……パシャリ」
ボブが、俺と裸でサウナ(火炎魔法の修行)に入っている、湯気で何も見えない写真をアップした。
『ボブ、お前が一番「生々しい」ねん! おっさんの裸の匂わせとか、誰に需要あんねん! タイムラインを地獄にするな!』
結局、ゼンイチが「あ、私の投稿がバズって、魔法学会から公式マークが来ました」と冷たく言い放つまで、女子二人の悲鳴と呪詛の通知音が止むことはなかった。
『勇者の仕事、フォロワーの調整か! 伝説の武器より「インフルエンサーの機嫌」の方が大事なんか! 俺を元の世界に即帰させろ!』




