15.聖女と占い師、キャンプ地で「匂わせ投稿」の応酬(バトル)
魔王城への道中、森のキャンプで束の間の休息。焚き火を囲んで、新入りの女子二人が何やらヒソヒソとスマホ(聖典と水晶)をいじっている。
「……あ、勇者様ぁ。今の寝顔、ちょっとだけ『聖なる光』が足りなかったので、私の私物のハンカチ、枕元に置いときましたねぇ。……パシャリ。はい、アップ完了ぉ」
『……ミア、勝手に寝顔撮るな。……ん? 何やこの投稿。「勇者様、お疲れみたい……(泣)。隣で支えてるよ(私のイニシャル入りハンカチ)」って、お前、これ「匂わせ」やんけ! ネットの面倒くさい空気、キャンプ地まで持ち込むな!』
すると、焚き火の反対側でセシリアのスマホが不吉な通知音を鳴らした。
「……はぁ。ミアちゃん、そういう『浅い』のは良くないと思うなぁ……。勇者様が本当に求めてるのは、もっと『深い』癒やしなんだよ……? ……えいっ。パシャリ」
セシリアが俺の肩にわざとらしく自分の白いヴェールを引っ掛け、上目遣いで自撮りをアップする。
『セシリア、お前もか! 「聖女の祈り、届いたかな……?(二人の影が重なってる写真)」。……影で「匂わせ」るな! 焚き火の火より、お前らのリプ欄の方が燃えとるやんけ!』
「勇者様ぁ、見てください! ミアの投稿にセシリアさんが『お仕事お疲れ様です(棒読み)』ってリプして、女の戦いが始まってますよぉ! 同接、爆上がりですぅ!」
『「棒読み」ってわざわざ書くな! 仲良く女子会してるフリして、裏でフォロワー稼ぎの小競り合いすな! ボブ、お前からも何か言え!』
「……Oh、ユーシャ。……俺サマ、ボブ。……ミアノ投稿、保存シタヨ。……セシリアノ自撮リ、壁紙ネ。……黄金ノ、二画面、最高ネ」
『ボブ、お前が一番の「カモ」やんけ! 両方に「いいね」して平和を保とうとすな! 二人の承認欲求の燃料になるな!』
「あーあ、ミアちゃんの投稿、『加工しすぎ』って叩かれてるぅ。……勇者様、私が本物のヒール(回復)してあげますねぇ? ……チュッ(音だけ出す)」
『音だけで「匂わせ」るな! 放送事故レベルの演出すな! じいさん、こいつらの通信制限(魔法封印)してくれ!』
「勇者様、無理ですぞ! 既に二人の信者たちがキャンプ地の周りを取り囲んで、『どっちが正ヒロインか』でリアルな乱闘(オフ会)を始めております!」
『魔王軍より先にファン同士が衝突すな! 勇者パーティを「推し活」の道具にすな! 伝説の武器より「インフルエンサーの機嫌」の方が大事なんか! 俺を元の世界に即帰させろ!』




