14.魔王軍の攻撃、パチスロの「激熱」外しで精神を削りにくる
魔王城の長い廊下を突き進む俺たちの前に、四天王の一人、妖術師ジャグラーが立ちはだかった。やつは不敵な笑みを浮かべ、派手な装飾が施された杖をゆっくりと構える。
「……ククク。勇者よ、運命のレバーを叩く準備はできているか?」
『……レバー? 剣の間違いやろ。何を不吉なこと言うとんねん。じいさん、こいつの魔力、なんか変なノイズ混じってないか?』
「勇者様、お気をつけなされ! こ奴から感じるのは魔力ではなく……圧倒的な『設定差』ですぞ!」
『設定差って何やねん! 敵の強さが1から6まであるんか! 6であってくれよ、せめて安定して戦わせてくれ!』
「……さあ、行くぞ。……【激熱】ッ!!」
ジャグラーが杖を一閃すると、空一面がどす黒い赤に染まり、巨大なフォントで書かれた「激熱」という二文字が、燃え盛りながら俺たちの頭上から猛スピードで降ってきた。
「勇者様! きましたぞ! 信頼度92.5%! これを食らえば全滅、避ければ奇跡の逆転劇! まさに運命の分岐点です!」
『……92%!? ほぼ確定やんけ! 逃げ場ないぞ、文字がデカすぎて左右どっちに避ければええか分からん! じいさん、バリア張れ! ボブ、盾構えろ!』
「……Oh、ユーシャ。俺サマ、信ジルネ。……コレ、ハズレ、ナイネ。……黄金ノ、ガッツポーズ、シトクネ」
ボブが武器も持たずに親指を立てる。俺は死を覚悟して目を閉じ、衝撃に備えた。
……しかし、数秒経っても何も起きない。恐る恐る目を開けると、赤い文字は地面に触れる直前で「スカッ」という軽い音と共に、虚しく霧散していった。
『…………え? 消えた? 助かったんか?』
「……あー、外れましたな。勇者様、無傷です。……しかし、これは一番マズい展開ですぞ。次、天井まで直行ですな」
『……外すな! 92%をこの一番大事な場面で外すな! 逆にダメージデカいわ! 「無傷」とか言うな、精神的にボコボコにされとるんや! 期待させて落とすのが一番の攻撃やろ!』
ジャグラーは舌打ちしながら、さらに杖を横に一閃した。
「……フン、ならばこれならどうだ。……【ロングフリーズ】ッ!!」
突然、世界の色彩が反転し、全ての音が消えた。じいさんもボブも、空中に舞った埃さえも完全に静止する。
『……おい、何やこれ。時間が止まった? じいさん? ボブ? ……動けへん! 指一本動かされへんぞ!』
静寂の中、ジャグラーだけがゆっくりと俺に近づき、耳元で囁いた。
「……勇者よ。これより60秒間、魔王軍による『上乗せ特化ゾーン』を開始する。お前の絶望が、我々の魔力として積み上がっていくのだ……」
『……フリーズすな! 世界を止めてまで射幸心を煽るな! 止まっとる間に、俺の財布からゴールドを抜き取ろうとすな! 演出が長すぎて、戦ってること忘れてまうわ!』
「勇者様! 意識をしっかり保つのです! ほら、背景が虹色に光りだしましたぞ! 継続確定です!」
『虹色出すならさっさとトドメ刺せ! 「期待度アップ」のままで引っ張るな! 結局、最後は運ゲー(確率)で決めるんやろ! 三半規管がパチンコ屋の入替日みたいになっとんねん!』
結局、ジャグラーの魔法が「パンク(強制終了)」するまで、俺たちはド派手な光と爆音に晒され続け、戦う気力を完全に削ぎ取られた。
『もうええわ! 確率論で世界を滅ぼそうとすな! 液晶のバグみたいな戦い、見てるだけで酔うわ! 俺を元の世界に即帰させろ!』




