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残高ゼロの極小ダンジョン経営~頼りない水晶コアと、ネズミ穴から始める迷宮拡張記~  作者: 盆ちゃん


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第96話:青空の地下階層と、笑顔弾ける楽園創造

第96話:青空の地下階層と、笑顔弾ける楽園創造

「よしっ! もう少し右だ! おお、いいぞ! そこへ白大理石の柱を下ろしてくれ!」

透き通るような青空の下、ガストンの野太くも陽気な声が響き渡る。

見上げれば、ゆっくりと流れる白い雲。頬を撫でるのは、心地よい潮風と木々のせせらぎを含んだ柔らかな風。

ここは、第1都市と第2都市を繋ぐ広大な中間領域――俺が莫大なDPを注ぎ込んで地形そのものを丸ごと創り出した、新たな第3の都市『リゾート階層』である。

「ガハハハ! 最高だぜマスター! 今まで砦や防壁、殺傷力のある武具ばかり作ってきたが、『いかに客をくつろがせるか』『いかに美しく見せるか』に全力を注ぐ建築ってのは、こんなにも胸が躍るもんなんだな!」

真っ白な砂浜に面した海岸線。そこでドワーフの職人たちや屈強なオークの建築部隊が、汗を輝かせながら巨大な海浜ロッジや高級ヴィラの建設に取り掛かっていた。

彼らの顔に、過酷な労働の疲労や焦りはない。あるのは、かつて経験したことのない「純粋な娯楽施設」という未知のものづくりに対する、子供のような探究心とワクワク感だ。

「おい、そっちの船着場はどうなってる! 防腐処理した木材をしっかり打ち込め! 軍船じゃねぇんだ、客が安全に乗り降りできて、のんびり釣りが楽しめるようなお洒落なデザインにするんだぞ!」

ガストンの指示の下、波打ち際では美しい曲線を描く木造の桟橋が次々と組み上げられていく。

本来なら、異世界における海や川は、強力な水棲魔物が潜む危険地帯だ。漁師たちは常に命がけで網を引く。しかし、この階層には俺が許可した環境生物(ただの魚や鳥など)しか存在しない。

魔物の脅威が100パーセント存在しない「絶対安全領域」。その事実が、皆の心から重い鎧を取り払い、この空間全体を温かく幸福な空気で満たしていた。

『きゃああっ! 冷たーい!』

「キュイッ! キュキュイッ!」

視線を横に向ければ、波の穏やかな浅瀬で、早速リリアの工房が仕立てた可愛らしいフリル付きの水着(俺の記憶をベースにデザインしたもの)に身を包んだルリが、テトと一緒になって水を掛け合って大はしゃぎしている。

「マスター! 見てください、お水がすっごく透き通ってます! それに、この白いお砂、サラサラしてて気持ちいいですーっ!」

「ああ、転ばないように気をつけろよ。……って、テト! お前は毛皮が海水でベタベタになるぞ!」

俺が苦笑しながら声をかけると、ルリは太陽のように眩しい笑顔を向けて大きく手を振った。彼女の笑顔を見ているだけで、数千万というDPを注ぎ込んだ甲斐があったと心の底から思える。

一方、海から少し離れたなだらかな丘陵地帯――『山と川のエリア』でも、活気ある作業が進められていた。

「そこの木は残しましょう。木漏れ日がテントに当たる角度が絶妙です。代わりに、あの岩を退かして、川のせせらぎが聞こえる位置に焚き火のスペースを設けなさい」

普段は冷徹に暗躍するミラージュが、今日は日傘を片手に、まるで有能な造園家のようにスケルトン工兵たちに指示を出している。彼女の監修する『高級キャンプ場』は、自然の息吹を感じさせながらも、貴族の邸宅すら凌駕する優雅さを備えた空間になりつつあった。

「リリア殿! 空の安全ルートの確認はどうなっている!」

「バッチリです、レオンハルト様! 上空の気流は完全に安定しています! これなら、飛行魔道具に乗ったお客さまでも、安全に空中散歩を楽しめますよ!」

騎士団長であるレオンハルトが地上から声を張り上げると、上空を舞うハーピーのリリアが元気よくサムズアップで応える。

彼女たちは、巨大な樹木の枝と枝を繋ぐ空中アスレチックや、絶景を見下ろせる展望台の設置に精を出していた。

誰もが、自分の仕事に誇りを持ち、完成した後の景色――たくさんの人々がここで笑い、癒され、幸せな休日を過ごす光景を想像しながら手を動かしている。

「……すげえな」

俺は、小高い丘の上からその全景を見渡し、小さく息を吐いた。

残業帰りに何もない暗い洞窟で目覚め、残高ゼロのDPとスライム一匹から始まった俺の迷宮経営。

それが今や、種族の垣根を越えた何千もの配下たちが、己の特技を活かして「誰もが笑って過ごせる楽園」を、それも底抜けに明るい笑顔で創り上げているのだ。

「最高の街になりそうだ」

響き渡るカンカンという心地よい槌音、寄せては返す波の音、そして仲間たちの楽しげな笑い声。

それらが一つに溶け合うこの美しい地下の青空の下で、世界で一番平和な都市の創造は、かつてないほどの熱気と幸福感に包まれながら進んでいくのだった。

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