表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残高ゼロの極小ダンジョン経営~頼りない水晶コアと、ネズミ穴から始める迷宮拡張記~  作者: 盆ちゃん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

95/132

第95話:絶対安全のリゾート階層と、身分無用の楽園計画

第95話:絶対安全のリゾート階層と、身分無用の楽園計画

「――皆、よく聞いてくれ。この溢れかえるDPを使って、俺が造りたいのは『絶対安全なリゾート階層』だ」

円卓を囲む幹部たちが、一様に首を傾げた。

「リ、リゾート……ですか?」

「なんだい、そりゃあ? 新しい武器の工房か何かか?」

ミラージュが小首を傾げ、ガストンが太い腕を組んで尋ねてくる。

無理もない。この過酷な異世界において、魔物の脅威から完全に切り離された「純粋な娯楽としての休暇」という概念自体が、ひどく希薄なのだから。

俺は玉座から立ち上がり、空間に巨大な魔法の立体映像ホログラムを展開した。

そこに映し出されたのは、第1都市と第2都市を繋ぐ広大な中間エリア。本来なら土と岩しかないはずの地下空間に、俺は信じられないような光景を描き出していた。

「この第1都市と第2都市の中間に、巨大な『大自然の階層』を丸ごと新造する。コンセプトは『海、山、空を満喫できる、世界最高の休日』だ」

俺の言葉と共に、映像が切り替わる。

どこまでも青く澄み渡る巨大な『海』と、サラサラの白い砂浜。鬱蒼とした森とは違う、木漏れ日が心地よい『山』。そして、地下であることを忘れさせるような、果てしなく広がる青空と白い雲の天井。

「うおおっ!? マ、マスター! なんだいこの水溜まりは! 地下にこんなデカい湖を……いや、塩の匂いがするぞ!?」

「驚くのは早いぜ、ガストン。これは『海』だ。ここでは、砂浜で寝そべって日光浴を楽しんだり、『海水浴』と言って水着で安全に泳いだりできる。海や、山から流れる綺麗な川では『釣り』を楽しむことも可能だ」

「つ、釣り、ですか。あの、漁師が命がけで魔魚を獲るという……」

「そうじゃない。ただ糸を垂らして、のんびりと魚との駆け引きを楽しむ『遊び』としての釣りだ。釣った魚はその場で焼いて食える」

俺は次々と前世の記憶――現代地球における極上のレジャーを語っていった。

山には魔物が一切侵入できない安全な『キャンプ場』を整備し、満天の星空(を模した魔法の天井)の下で、焚き火を囲んで美味い飯と酒を楽しむ。空には安全な飛行魔道具や大人しい飛行魔獣を用意し、空中散歩を楽しめるようにする。

「な、なんという……」

歴戦の将であるレオンハルトでさえ、その光景を前に絶句していた。

「戦いも、飢えの恐怖も、魔物の気配すら一切ない大自然……。そのような場所で、ただ心身を癒すためだけに時間を過ごすなど、まるで神々の遊びではありませんか……!」

『す、すっごおおぉぉい!! マスター、絶対楽しいです! 私も海で泳いでみたいですーっ!』

台座の上のルリが、今までで一番激しく、興奮したように七色にピカピカと輝き始めた。

「もちろん、誰でも楽しめるようにエリアは3つのランクに分ける。『一般』『中級』、そして最高の贅沢を提供する『高級』リゾートエリアだ。一般層でも十分に楽しめ、安く美味い屋台や大衆浴場を用意する。高級エリアには、最高ランクの魔石を使った豪華な宿泊施設や、専属の料理人がつく完全プライベートな空間を設ける」

そこまで語ったところで、俺は声を一段低くした。

「当然、この噂が広がれば、周辺諸国の金を持て余した『貴族』どもがこぞって高級エリアに押し寄せてくるだろう。多額の金を落としてくれるなら、客として大歓迎だ。……だが、一つだけ絶対に譲れないルールを設ける」

俺の放った鋭い気配に、幹部たちの表情が引き締まる。

「このリゾート階層において、身分は一切関係ない。住民だろうが、傭兵だろうが、他国の王侯貴族だろうが、ここでは等しく『リゾートを楽しむ一人の客』だ。もし、貴族の特権を振りかざして他の客や従業員に迷惑をかけたり、理不尽な要求をするような愚か者がいたら――」

俺はミラージュとレオンハルトへ視線を向けた。

「迷宮の治安維持部隊で即座に取り押さえろ。身分証明など剥ぎ取り、厳重注意の書状と共に、そいつの国の治安機関へ直接『荷物』として送りつけてやれ」

「「「おお……ッ!!」」」

幹部たちから、どよめきと感嘆の声が漏れた。

他国の有力者を無碍に扱えば、通常なら国際問題に発展する。だが、今の俺たちにはそれを黙らせるだけの圧倒的な武力と、経済的優位性がある。

「この場所は、俺たちが俺たちの民のために、汗水流して稼いだエネルギーで創り上げる『楽園』だ。外の腐った権力構造など、俺たちの迷宮には一歩たりとも持ち込ませない。ここは、純粋に笑って、休んで、遊ぶための場所だ。……どうだ?」

俺が問いかけると、少しの沈黙の後――マスターズ・チェンバーが割れんばかりの歓声に包まれた。

「最高です、マスター! さっそく、各国の王族や大貴族どもに『注意事項』として招待状を送りつけてやりましょう! 震え上がる顔が目に浮かびます!」

ミラージュが嗜虐的な笑みを浮かべる。

「ガハハハ! こりゃあ忙しくなるぞ! 俺たちドワーフの技術の粋を集めて、極上のロッジと釣り具を作ってやる!」

「治安維持は我が騎士団にお任せを。楽園の平穏を乱す不届き者は、このレオンハルトが容赦なく排除いたしましょう」

溢れんばかりのDPが、まるで主の意思に呼応するように空間で黄金の光の粒となって舞い散る。

残高ゼロから始まった俺たちの迷宮は、ついに「絶対安全の楽園」を創り出すという、神をも恐れぬ領域へと足を踏み入れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ