第7話(閑話):名付けと進化、そして迷宮の進軍
第7話(閑話):名付けと進化、そして迷宮の進軍
ダンジョンが「家」としての体を成し始めて数日。
俺は、せっせと働く三匹のゴブリンたちを観察していた。元々バグズに率いられていた精鋭だけあって、彼らの動きには無駄がない。だが、数日一緒に過ごすうちに、彼らには明確な「得意分野」があることに気づいた。
「ルリ。こいつら、ただの労働力にしておくのはもったいないな」
『はい、マスター! 彼ら、魂の質が普通のゴブリンよりずっと高いです。マスターが正式な名前を与えれば、きっと大きな力になりますよ!』
名前。それはこの世界において、存在を定義する重要な魔力。
俺は三匹を呼び寄せ、一人ずつ名前を付けていくことにした。
まずは、いつも獲物の解体を率先して行い、干し肉ばかりだった食卓に「工夫」を凝らそうとしていた小柄な個体。
「お前は、この迷宮の胃袋を支えてくれ。名は**『ログ』だ」
次に、俺が作った罠を興味深そうに眺め、隙間に鋭い石を仕込んで勝手に改良していた、指の長い個体。
「お前は、迷宮の知恵。名は『カルク』**」
最後に、テトと一緒に外の警戒を担い、常に武器を研ぎ澄ませていた、一際目つきの鋭い個体。
「お前は、迷宮の矛。名は**『ガルム』**だ」
名付けた瞬間、ダンジョンの溜まりに溜まっていた魔力が、三匹に濁流となって流れ込んだ。
「ギ、ギギィィッ……!」
眩い光に包まれ、彼らの体がミシミシと音を立てて膨れ上がる。
光が収まったとき、そこにいたのは緑の肌を鋼のように引き締め、知性を宿した瞳を持つ三匹の**『ホブゴブリン』**だった。
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【個体名】ログ(ホブゴブリン)
【役割】料理長
【スキル】『魔力調理 Lv1』『栄養管理 Lv1』
【個体名】カルク(ホブゴブリン)
【役割】工兵長
【スキル】『罠作成 Lv2』『迷宮改修補助 Lv1』
【個体名】ガルム(ホブゴブリン)
【役割】衛兵長
【スキル】『連撃 Lv2』『咆哮 Lv1』
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「……圧巻だな」
進化は、すぐに効果として現れた。
ログは、倒したファングボアの肉を『魔力調理』し、余分な臭みを取り除いた「香草焼き」を作り上げた。ただの食事が「バフ(強化)」付きの逸品へと変わり、食べた俺とテトの身体能力が一時的に向上する。
カルクは、俺の『地形利用』スキルに共鳴するように、第4話で作った滑り台に「自動リセット機能」を追加した。俺が指示を出さずとも、敵を落とした後は自動で床が磨かれ、次の獲物を待つ。
そしてガルム。彼は凄まじかった。
進化したテトとの模擬戦では、テトの『瞬動突進』を鉄の棍棒で見事に受け流し、鋭いカウンターを放つ。白き閃光のテトと、緑の重戦車ガルム。この二人のツートップは、この階層において無敵に近い。
「ルリ、準備はいいか。……守っているだけじゃ、DPの伸びに限界がある」
俺はバグズから奪った革ベストを締め直し、ガルムに視線を送った。
『はい、マスター! いつでもいけます!』
「カルク、俺たちが留守の間、このフロアの防衛を任せる。ログ、戻ったときのお祝いのメシを用意しておけ」
「ギギッ!(御意!)」
俺とテト、そしてガルムの三人は、ついにダンジョンの外――「大深緑の迷い森」へと一歩を踏み出した。
目的地は、バグズが支配していたゴブリンの集落。
リーダーを失い、混乱しているであろう彼らを一網打尽にし、従わせる。
「一匹残らず、俺たちの迷宮の歯車にしてやる」
シンは初めて浴びる異世界の風に目を細め、静かに、しかし力強く進軍を開始した。




