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残高ゼロの極小ダンジョン経営~頼りない水晶コアと、ネズミ穴から始める迷宮拡張記~  作者: 盆ちゃん


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第3話:マスターの成長、仲間の進化、そして予期せぬ壁

第3話:マスターの成長、仲間の進化、そして予期せぬ壁

 洞窟に、ゴブリンのくぐもった叫び声が響いた。

 テトが『突進』で十センチの穴の向こうからゴブリンを押し込み、壁に挟まって身動きが取れなくなった隙を突き、俺は尖った岩の破片をその急所へと正確に振り下ろす。

『マスター! ゴブリン討伐確認、5 DP獲得です!』

 ルリの元気な声と共に、ゴブリンの体が光の粒子となってダンジョンに吸収されていく。

 荒い息を吐きながら岩を下ろしたその時――俺の体の中を、熱い波のようなものが駆け巡った。疲労がふっと抜け、手足に未知の力が宿るような感覚。

『わわっ! マスター、おめでとうございます! レベルが上がりましたよ!』

「レベルアップ……! 本当か!?」

 俺が叫ぶと、テトも「キュンキュン!」と足元で跳ね回って喜んでくれた。

 ルリが空中にステータスウィンドウを投影する。

==============

【個体名】シン

【種族】人間ダンジョンマスター

【レベル】2 (↑UP)

【スキル】『打撃 Lv1』(NEW)

==============

「スキル……『打撃』か!」

『はい! 鈍器や素手での攻撃力が上がり、クリティカルが出やすくなるスキルです。これでマスターも、立派な戦力ですね!』

 思わず拳を握りしめる。ただの無力な記憶喪失だった俺が、この異世界で初めて明確な「力」を手に入れた瞬間だった。

「やったな、テト、ルリ! これでゴブリン相手でも、もっと楽に戦えるぞ!」

 三日前の初めての晩餐から、俺たちはひたすらこの連携プレーを繰り返していた。俺のレベルが上がったことで、狩りの効率はさらに加速した。

 それからさらに数日が経過した、ある日のこと。

 順調にDPを稼ぎ、少し豪華な食事(焼き鳥のような謎の肉串が追加された)を終えた直後だった。

 突如、テトの体が眩い白い光に包まれた。

「な、なんだ!? テト!?」

『マスター、落ち着いてください! これは……進化です! 野生のモンスターがテイムされて安定した魔力供給を受けたことで、上位種への進化条件を満たしたんです!』

 ルリの弾むような声の通り、光の中のシルエットが、みるみるうちに大きくなっていく。

 バレーボールほどの大きさだったテトの体は、中型犬ほどのサイズにまで成長した。光が収まると、そこには以前よりさらに艶やかな純白の毛並みと、額から伸びる鋭く立派な一本角を持った美しい獣が立っていた。

「キュオォン!」

 鳴き声も少し力強くなっている。テトは自分の体を不思議そうに見回した後、俺に向かって嬉しそうに飛びついてきた。

「うおっ! おもっ、でもモフモフ感が増してる……!」

 顔中をペロペロと舐められながら、俺はルリにステータスの表示を頼んだ。

==============

【個体名】テト

【種族】アサルトラビット(テイム)

【レベル】1

【スキル】『気配察知 Lv3』『危険察知 Lv3』『瞬動突進 Lv1』(NEW)

==============

「種族が変わってる! それに『瞬動突進』って、すごく強そうだな」

『はい! これで低ランクモンスターなら、テトちゃん一人でも一撃で倒せるかもしれません!』

 俺たち三人は、劇的な戦力アップに歓喜した。

 これなら、もっと効率よくDPを稼げる。俺の『打撃』とテトの『瞬動突進』があれば、少し強めのモンスターでも――。

「よし、テト! さっそくその新しい力、試してみようぜ! いつものように外の様子を……」

「キュイッ!」

 やる気に満ちたテトが、自慢の脚力で壁の穴へと向かってジャンプする。

 ――ドゴスッ!!

 鈍い音が、狭い洞窟に響き渡った。

 テトの顔面が壁に激突し、そのまま力なくずり落ちる。

「テトォォォ!?」

 俺は慌てて駆け寄った。テトは目を回して「きゅぅ……」と情けない声を上げている。

 怪我はない。だが、原因は明白だった。

「……そりゃそうか。お前、中型犬くらいのサイズになったんだもんな。直径十センチの穴なんて、鼻先しか通らないぞ……」

 そう、テトが進化して大きくなったことで、これまでの命綱であった「外に出るための唯一の通路」を通れなくなってしまったのだ。

『ああっ……! 計算外でした……』

 ルリが申し訳なさそうに明滅する。俺は目を回すテトを膝枕で撫でながら、ふぅ、と深い息を吐いた。

 現状、手元にはこれまでの狩りで貯めた「50 DP」がある。選択肢は二つだ。

「……会議だな。ルリ、テト」

 俺の真剣な声に、ルリは台座の上で姿勢を正すように光を強くし、テトもむくりと起き上がって耳を立てた。

「今のテトが通れるように穴を広げれば、当然、外から入ってくるモンスターも大きくて強いヤツらになる。一歩間違えれば、このダンジョンはあっという間に蹂躙されるだろう」

『はい。ゴブリンの上位種や、オークなんかが入ってくる危険性があります……』

「もう一つの方法は、穴はこのままにしておいて、今のDPを使って、この穴を通れるサイズの『新しい仲間』をテイムするか、だ。だが、それだとテトはこの狭い部屋でずっと待機になる」

「キュウゥ……」

 テトはそれは嫌だというように、俺の腕に頭を擦り付けた。俺も、テトの活躍の場を奪うようなことはしたくない。

「となれば……腹を括るしかないか」

 俺はルリを真っ直ぐに見据えた。

 穴を広げれば、危険度は跳ね上がる。しかし、ハイリスクはハイリターンだ。より強いモンスターを倒せば、莫大なDPが手に入る。それに、今の俺たちには進化したテトと、レベルの上がった俺がいる。

「ルリ。DPを使って、ダンジョンの構造を作り変えよう。……ただ穴を広げるんじゃない。敵を『迎撃』するための、罠と地形を作るんだ」

 極小ダンジョンの第二段階。

 記憶喪失のマスターによる、本格的な迷宮防衛線構築の火蓋が切られようとしていた。

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