第128話:夢と魔法の狂想曲(ラプソディ)と、究極の絶叫遊園地
第128話:夢と魔法の狂想曲と、究極の絶叫遊園地
「空中カジノ『スカイ・ヘブン』の収益が、稼働わずか一週間で国家予算数百年分を突破しましたわ。……まあ、DPメーターは相変わらず『∞』のままフリーズしておりますが」
マスターズ・チェンバーの円卓で、ミラージュが優雅に紅茶を啜りながら報告した。
「チップとして回収した『運勢』や『記憶』も、地下の保管庫に入りきらないほどです。どうやら、世界中の金持ちたちは想像以上にスリルに飢えていたようですね」
「だから、もう儲けはどうでもいいんだっての。……さて、カジノで大人たちからたっぷり搾り取った(遊んでもらった)ところで、次のプロジェクトに移るぞ」
俺は立ち上がり、円卓の中央に新たなホログラムを展開した。
そこに映し出されたのは、広大な森と湖を切り拓いて作られた、巨大な『お城』を中心に放射状に広がる色鮮やかな施設の設計図だった。
「リゾート開発第二弾。リリアの提案を採用した、究極の魔法テーマパーク『マギカ・ファンタジーランド』の建設を開始する」
「わぁっ! ついに私の番ですね、マスター!」
リリアが背中の羽をパタパタと羽ばたかせて歓喜の声を上げる。
「ああ。ターゲットは子供から大人まで全年齢。コンセプトは『剣と魔法の世界における、究極の非日常と安全な絶叫』だ。無限のDPを湯水のように使い、前世の遊園地を魔法でオーバーテクノロジー化させるぞ」
俺はホログラムの各エリアを指し示しながら、幹部たちに指示を飛ばしていく。
「まずは目玉アトラクション、『魔導ジェットコースター』だ。ファウスト、リリア。お前たち二人の共同制作で作れ」
「クハハハッ! 重力と遠心力の限界に挑む鉄のトロッコですね! 任せていただきましょう!」
「はいっ! 風魔法で究極のスピードと爽快感をお約束します!」
「ただレールの上を走るだけじゃつまらん」
俺はニヤリと笑い、設計図に大胆な修正を加えた。
「コースの途中で『レールを途切れさせろ』。トロッコごと空中に放り出し、そのままアヴァロンの重力制御を使って雲の上まで吹っ飛ばし、真っ逆さまに自由落下させる。最後は水の上に魔法で軟着陸だ」
「……マ、マスター? それ、心臓が止まりませんか?」
レオンハルトが引きつった顔で尋ねる。
「大丈夫だ、安全結界を何重にも張るから死にはしない。『死ぬほど怖いけど絶対に安全』。これが絶叫マシンの醍醐味だ」
「なるほど……ならば私とキュウビで、究極の『お化け屋敷』を創りましょうか」
ミラージュが、妖しい笑みを深めながら提案してきた。
「本物のアンデッドを配置するのは衛生上よろしくありません。ですから、私とキュウビの『極大幻術』を用いて、体験者の脳内にある『一番恐ろしい記憶』を直接映像化して襲い掛からせるのです」
「それ、絶叫どころかトラウマにならないか? ……まあいい、出口に『記憶消去(マイルド化)』の魔法陣を敷いておくなら許可する。ガストンは園内の至る所に設置する、動く人形の製作だ」
「ガハハ! 任せな! 本物と見紛うような精巧な竜や妖精の機械人形を山ほど打ってやるぜ!」
「そして一日の締めくくりは、夜空を彩る『エレクトリカル・パレード』だ。本物の古代種たちを光の魔法でデコレーションして、園内を練り歩かせる」
予算無制限、技術の限界なし。
俺の無茶苦茶なアイデアと、幹部たちのノリノリの魔法技術が融合し、数日後、第一階層の隣に確保した広大な別次元エリアに、とんでもないテーマパークが「生え」ていた。
***
「マスター! お姉ちゃん! 早く早くー!」
「わぁぁっ、大きなお城! ポップコーンのいい匂いがします!」
「なんだか、キラキラしていて目が回りそうじゃ……」
開園前のテストプレイ。ルリ、ラピス、アンバーの三姉妹コアが、お揃いの「魔獣の耳カチューシャ」を頭につけて大はしゃぎで園内を駆け回っている。
園内の中心には、白亜の『シンデレラ城』ならぬ『迷宮主の城』がそびえ立ち、その周囲には魔法の箒に乗って空を飛ぶメリーゴーランドや、巨大なスライムのトランポリンなど、ファンタジーならではのアトラクションがひしめいている。
「よし、まずは『シューティング・スター・マウンテン(ジェットコースター)』のテストだ。レオンハルト、お前が最初に乗れ」
「は、ははっ! いかなる絶叫マシンであろうと、迷宮騎士団長の胆力をもってすれば……」
数分後。
『ギィィィィィィヤアァァァァァァァァァッッ!!!!』
上空一万メートルの雲海から、純白の魔導トロッコが垂直落下してきた。
ドゴォォォンッ!!という轟音と共に湖に軟着陸したトロッコの中で、顔面を真っ青にしたレオンハルトが完全に気絶し、口から一筋の魂を吐き出していた。
「……合格。スリル満点だな」
「クハハハハ! 私の重力制御に狂いはありませんでした!」
ファウストが満足げに頷く。
続いて『ナイトメア・マンション(お化け屋敷)』のテストに向かったガストンは、出てきた瞬間に大槌を振り回しながら「すまねぇ親方! 俺が金床を割ったのはワザとじゃねぇんだぁぁっ!」と泣き叫び、キュウビの幻術の恐ろしさを身をもって証明した。
「マスター、マスター! あっちでチュロス食べましょう! 三色のアイスもあります!」
すっかりバカンス気分の三姉妹に手を引かれ、俺も園内のグルメやアトラクションを心ゆくまで堪能した。
そして、夜。
園内の照明がスッと落ち、軽快で幻想的な魔法音楽が鳴り響く。
「さあさあ皆様! 夢と魔法の時間の締めくくりです!」
リリアの魔法アナウンスと共に、メインストリートの奥から、まばゆいばかりの光のパレードが姿を現した。
先頭を行くのは、数万個の魔力発光体を身に纏った【天帝竜】と【陸王獣】だ。彼らが歩くたびに、周囲に七色の光の粉が舞い散る。
さらに、ガストンが作った精巧なゴーレムたちが音楽に合わせて踊り、ハーピーたちが上空から花びらと星屑の魔法を降り注がせる。
「……綺麗です、マスター」
隣で見上げていたミラージュが、夜空を彩る花火の魔法に照らされながら、ふわりと微笑んだ。
「ああ。金も魔力も使い放題の、究極の無駄遣いだからな。……まあ、どうせ明日から一般開放したら、世界中の連中が押し寄せて、またDPメーターがバグるくらいに儲かっちまうんだろうけどな」
俺は苦笑しながら、目を輝かせてパレードに手を振るルリたち三姉妹を眺めた。
「でも、悪くない。これだけ馬鹿馬鹿しい夢を、完璧な形で実現できる。それが俺たちの特権だからな」
夢と魔法と、圧倒的な暴力(技術)と無限の予算。
『マギカ・ファンタジーランド』は、こうして迷宮国家の新たな名物となり、翌日からの開園で、またしても世界中の人々の常識と金銭感覚を粉々に破壊していくのだった。




