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残高ゼロの極小ダンジョン経営~頼りない水晶コアと、ネズミ穴から始める迷宮拡張記~  作者: 盆ちゃん


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第123話:星空の蹂躙劇と、無傷の方舟

第123話:星空の蹂躙劇と、無傷の方舟

漆黒の宇宙空間を、純白の極太の光条が切り裂いた。

超弩級宇宙戦艦アヴァロンの三連装主砲【創世のジェネシス・レイ】から放たれた閃光は、音の無い真空の海を一直線に駆け抜け、迫り来る『星喰いの群れ』の先鋒へと着弾した。

光が、暗黒の星雲を喰い破る。

「ギ……ギァァァァァァァッ!!」という断末魔の思念波が宇宙空間に響き渡る間もなく、小山ほどもある異形の宇宙怪獣たちが、細胞の一片、チリのひと粒すら残さずに完全消滅していく。

何万という個体が密集していた群れの中央に、直径数十キロに及ぶ巨大な『空白』が穿たれた。

「主砲直撃! 敵先鋒部隊、推定三十万体が完全消滅しました!」

ミラージュの涼やかな報告がブリッジに響く。

「ハッ、いい威力じゃねぇか! だが、イナゴどもはまだウジャウジャいやがるぞ!」

ガストンがモニターを指差す。事実、群れは一瞬の空白をすぐに埋めるように、周囲からうごめくように密集し、怒り狂ったようにアヴァロンへと殺到してきた。

彼らは自らの巨体を質量兵器(隕石)と化し、凄まじいスピードで艦へと突撃してくる。

「来ます! 敵の質量突撃、およそ五千!」

「慌てるな。結界と装甲のテストにはちょうどいい。……受け止めろ!」

俺が腕を組んだまま命令を下すと同時、アヴァロンを覆う不可視の【絶対真空遮断・生命維持結界】に、無数の星喰いたちが激突した。

ドォォォォンッ!! ガガガガガッ!!

結界の表面に青白い波紋が広がり、激しい閃光が瞬く。

だが――艦内には、微かな振動すら伝わってこなかった。

「……結界出力、1000パーセントから微動だにせず。敵の突撃による物理的・魔力的ダメージ、完全にゼロです」

「ガハハハッ! 当たり前だ! 遺跡の強化瑠璃と極上ミスリルを混ぜ合わせた【星金装甲】だぞ! あんなナメクジの体当たりで傷がつくかよ!」

ガストンが豪快に笑い飛ばす。

強烈な激突の反動で星喰いたちの甲殻がひしゃげ、自壊して宇宙のデブリへと変わっていく。彼らの持つ「星の魔力を吸い尽くす」という特性も、無限のDPから供給されるアヴァロンの結界の前では、大海の水をスプーンで掬うようなものであり、全く意味を成さなかった。

「防衛網は完璧だ。……さあ、ここからは俺たちのターンだぞ。レオンハルト、リリア! 訓練の成果を見せてやれ!」

「御意! 全機、出撃ボパード!!」

アヴァロンの側面ハッチが一斉に開き、漆黒の宇宙空間へ向けて無数の光の筋が飛び出した。

背中と脚部に『魔力スラスター』を装着した【宇宙戦用ゴーレム・フレーム】を身に纏う迷宮騎士団。そして、羽の間に魔導推進器を装備したハーピー部隊だ。

「散開! 群れを分断し、各個撃破せよ!」

レオンハルトの号令と共に、騎士たちはスラスターを吹かして複雑な三次元軌道を描きながら敵の群れへと肉薄する。

星喰いが巨大な顎を開いて噛み砕こうとするが、騎士たちは無重力の空間を滑るように回避し、その巨体の死角へと回り込む。

「遅いッ! 【真空烈斬】!!」

騎士の振るった大剣から、青白い魔力の真空刃が放たれる。力任せの斬撃ではなく、遠心力と魔法の衝撃波を融合させた宇宙戦特化の剣技だ。

真空刃は星喰いの硬い甲殻をバターのように両断し、ドロドロの体液を宇宙空間に撒き散らしながら敵を沈黙させていく。

「私たちも負けませんよ! 魔力爆雷、投下!」

リリアの指揮のもと、ハーピー部隊が敵の密集地帯の上空を高速で飛び交いながら、ファウスト特製の『重力圧縮爆弾』を次々と投下していく。

爆弾が起動すると、局地的な超重力場が発生し、周囲の星喰いたちがお互いの質量で押し潰され、ソフトボール大の肉塊へと圧縮されていく。

「クハハハハッ! 素晴らしい! 重力と質量の完璧な制御! 私の計算式に狂いはありませんでした!」

ブリッジでファウストが歓喜のステップを踏む。

圧倒的、の一言だった。

敵は星を喰らう宇宙の災害。本来ならば、一匹でも地上に降り立てば国が滅びるレベルのバケモンだ。

だが、事前の完璧な観測、アヴァロンという絶対の盾、無重力戦闘に完全適応したドクトリン、そして何より「無限のDP」というチート。

俺たちが地上のVIPたちを深海やマグマで遊ばせて稼いだ『準備時間』のすべてが、見事なまでにカチリと噛み合い、星喰いの群れを単なる「動く的」へと貶めていた。

「マスター。敵の群れ、全体の約七割を殲滅。残存部隊は我々の戦力に恐れをなしたのか、反転して逃走を図ろうとしています」

ミラージュが、モニターのレーダー反応を見ながら報告する。

「逃がすかよ。一匹たりとも、俺たちの星の空域から生かして帰すつもりはない」

俺は艦長席から立ち上がり、冷徹な声で命じた。

「ファウスト、ガストン。広域殲滅魔力砲、全門展開。アヴァロンの全周囲を火の海にしろ」

「イエッサー!」

アヴァロンの装甲のあちこちがスライドし、数千に及ぶ副砲が一斉に姿を現す。

逃げ惑う星喰いたちの背中へ向けて、文字通り雨あられのような魔力レーザーと追尾型の光弾が降り注いだ。

宇宙空間に無数の光の花が咲き乱れ、暗黒の星雲は瞬く間に光の嵐によって浄化されていく。

「……終わりましたね、マスター」

数十分後。

レーダーから最後の一つの赤い光点が消滅し、メインモニターには再び静寂な星の海が映し出された。

味方の被害、ゼロ。

アヴァロンの装甲の傷、ゼロ。

星の海を数万年かけて回遊し、無数の惑星を滅ぼしてきた宇宙の災害は、俺たちの圧倒的な暴力と財力(DP)の前に、星の地表に触れることすら叶わず、完全なるチリとなって消え去ったのだ。

「ああ、俺たちの完全勝利だ。……さてと」

俺は大きく伸びをし、肩の力を抜いた。

「ゴミ掃除も終わったことだし、帰るか。爺さんたちが温泉でのぼせる前に、極上のフルーツ牛乳でも差し入れてやらないとな」

幹部たちが一斉に顔を見合わせ、楽しげな笑声を上げる。

星を救うという途方もない偉業を成し遂げても、俺たちの目的は変わらない。

誰も脅かされない、最高にくだらなくて平和な「日常リゾート」を楽しむこと。

超弩級宇宙戦艦アヴァロンは、漆黒の宇宙空間で誇らしげに身を翻し、俺たちの帰るべき青き箱庭へと向けて、勝利の凱旋航海を始めるのだった。

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