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残高ゼロの極小ダンジョン経営~頼りない水晶コアと、ネズミ穴から始める迷宮拡張記~  作者: 盆ちゃん


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第120話(閑話):深淵と業火の極限リゾートと、完璧なる視線誘導(カモフラージュ)

第120話(閑話):深淵と業火の極限リゾートと、完璧なる視線誘導カモフラージュ

魔導浮遊要塞アヴァロンの『宇宙戦艦化』という最高機密プロジェクトが発動して数週間。

ファウストやガストン、レオンハルトたち主要幹部は、星の防衛という超重要任務にかかりきりとなり、文字通り不眠不休で開発と改修作業に没頭していた。

だが、ここで一つ重大な問題が発生した。

リゾート階層にすっかり入り浸っている『叡智の賢人会』の五人や、各国の重鎮たちである。

彼らは暇を持て余した世界最高の権力者にして、異常なまでの魔力感知能力を持つ化け物たちだ。ファウストたちが上空(宇宙)で莫大な魔力を動かしていれば、いずれ「空で何かとんでもないことが起きている」と感づかれ、面倒な詮索を受けかねない。

「上(宇宙)を見せたくないなら、下(極限)を見せればいい」

マスターズ・チェンバーの玉座で、俺はニヤリと笑って一つの計画を立ち上げた。

集められたのは、宇宙開発に関わっていない迷宮のサブメンバーたち――ガストンの工房を任されているドワーフの愛弟子、オーク建築部隊の親方、リリアの右腕であるハーピーの副官、そしてルリとラピス、さらに砂漠で生まれた三女のコア『アンバー』だ。

「いいか、お前たち。現在、幹部連中が不在で人手が足りないが、俺たちはこれよりVIPどもの度肝を抜く『新型リゾート』を開発する。コンセプトは『未知への没入』だ」

「親方不在で、あっしらがメインの建築を!? や、やらせてくだせぇ!」

オークの親方が鼻息を荒くする。

「これまで海や雪山を開発してきたが、それはまだ『地上』の常識の範囲内だ。俺の前世(地球)の知識と技術をもってしても、安全面やコストの壁に阻まれて実現困難だった『究極の非日常』がある。……無限のDPがある今、それを魔法と暴力的な資産でゴリ押しして実現させる」

俺は空間に二つのホログラムを展開した。

一つは、光の届かない漆黒の海の底。

もう一つは、ドロドロに煮え滾る活火山の火口内部だ。

「第一弾、水深一万メートルの超深海レストラン&ホテル『アビス・アクア』。第二弾、活火山火口直上の灼熱ダイニング『インフェルノ・テラス』だ」

「す、水深一万メートルゥ!? 活火山の火口ォ!?」

ドワーフの愛弟子が目を剥いた。

「マスター! いくらなんでも無茶です! 深海の莫大な水圧や、マグマの超高熱に耐えられる素材なんて……!」

「あるだろう。熱砂大陸の遺跡で見つけた『強化瑠璃』だ」

俺は、以前の探検で持ち帰った、光と重力魔法の結晶である透明な超硬度ガラスを指差した。

「あれの解析データと無限のDPを使って、水圧もマグマの熱も完全に遮断する透明なドームを創る。空間転移ゲートで直通させれば、息苦しい潜水艇に乗る必要もない。お前たちは俺の指示通りに、最高の居住空間だけをデザインしろ」

「な、なるほど……! 魔法と転移を前提とした、究極の力技……!」

「面白れぇ! 幹部様たちがいない間に、あっしらで世界一の娯楽施設をブッ建ててやりまさぁ!」

こうして、俺とサブメンバーたちによる、宇宙開発から目を逸らさせるための本気の「視線誘導カモフラージュリゾート計画」が幕を開けた。

***

数日後。

リゾート階層でかき氷を突いていた賢人会の五人と、同盟国の獣王やエルフの長老たちの元に、俺からの特別な「プラチナ招待状」が届けられた。

『未だかつて誰も見たことのない、極限環境での晩餐にご招待いたします』

「極限環境じゃと? シンめ、また面白そうなことを企みおって」

老魔術師がニヤリと笑い、招待状に記された転移ゲートをくぐり抜けた。

その先で彼らを待っていたのは、言葉を失うほどの「深淵」だった。

「な……なんじゃ、ここは!?」

転移した先は、見渡す限り透明な『強化瑠璃』で覆われた、超豪奢な半球状のドームレストラン。

だが、窓の外にあるのは青い空ではない。完全なる漆黒。そして、備え付けられた巨大な魔力探照灯が照らし出す、不気味で神秘的なマリンスノーの舞う『超深海』の世界だった。

「ようこそ、水深一万メートルの深海レストラン『アビス・アクア』へ」

タキシード姿に身を包んだ俺が、優雅に一礼してVIPたちをテーブルへ案内する。

「す、水深一万だと!? 信じられん、こんな深さまで潜れば、人間など一瞬で紙切れのように圧縮される水圧のはずだぞ!」

「窓のすぐ外を……見ろ! 神話にしか登場しないような、古代の巨大深海竜が泳いでいるぞ!」

探照灯の光に引き寄せられ、体長百メートルを超える発光性の巨大クラゲや、深海を支配する恐ろしげな魔獣たちが、ガラス一枚隔てた真横を悠然と泳ぎ去っていく。

本来なら遭遇即死のバケモンたちを、安全なガラス越しにワインを傾けながら鑑賞する。

地球の現代科学ですら、ごく一部の研究者しか見られない超深海の光景を、完全なエンターテインメントとして提供する狂気の空間。

「素晴らしい……! 我々ですら未知の領域だった海の底を、これほど優雅に眺められる日が来ようとは!」

賢人会の女傑が、窓に張り付いて大興奮している。

彼らが深海のフルコース(もちろん外を泳いでいる魔獣の極上肉だ)に舌鼓を打った後、俺は「もう一つ、とっておきのデザートの席をご用意しております」と、次の転移ゲートへ彼らを案内した。

ゲートを抜けた瞬間、今度は視界一面が赤とオレンジの暴力的な光に包まれた。

「ひぃぃっ!? マ、マグマ!?」

獣王が思わず後ずさる。

そこは、グツグツと煮え滾る活火山の火口カルデラの真ん中に、不可視の魔力防壁と強化瑠璃の支柱だけで無理やり空中に固定された、灼熱のテラス席『インフェルノ・テラス』だった。

足元の透明なガラスの数十メートル下では、数千度のマグマが弾け、炎の飛沫を上げている。

「温度調整結界を張っているので、テラス内は快適な二十五度です。どうぞ、火口の真上でのティータイムをお楽しみください」

オークのウェイターたちが、マグマの熱を直接利用して焼き上げた超極厚の『火竜ファイア・ドラゴンの溶岩ステーキ』や、熱気で焙煎した極上のコーヒーを運んでくる。

下を見れば地獄の業火、上を見れば立ち昇る噴煙。

地球の常識では絶対に建築許可が下りない、魔法世界だからこそ可能な「究極のスリルと優雅さの同居」だ。

「……ハッ、ハハハハハ! 参った! これは降参じゃ!」

老魔術師が、マグマの照り返しで赤く染まった顔で大笑いした。

「深い海の底から、星の血液マグマの真上まで! これほど極端で、これほど血湧き肉躍る趣向を見せられては、もはや他の何にも興味が湧かんわ!」

「ええ、本当に! シン、あなたって人はどこまで私たちを楽しませれば気が済むの!?」

女傑のマスターも、火口の真上でワイングラスを高々と掲げた。

「お気に召したようで何よりです。……ああ、上(宇宙)には大したものは飛び交っていませんので、どうぞ存分に、この深淵と大地の奥底の絶景を下を向いてお楽しみください」

俺は、完璧に「下」へと釘付けになったVIPたちの視線を確認し、心の中でガッツポーズを決めた。

こうして、宇宙戦艦アヴァロンの極秘改修から完全に目を逸らさせるという俺の『視線誘導作戦』は、サブメンバーたちの見事な仕事ぶりと無限のDPによって、完璧な成功を収めた。

……しかし数日後、この深海と火山の極限リゾートの噂が世界中の富裕層に漏れ伝わり、またしても天文学的な額の予約金とDPが舞い込んでくることになったのは、言うまでもない。

もはや、俺が本気で遊べば遊ぶほど、世界が勝手に黄金を貢いでくるバグ(インフレ)は、誰にも止めることができない領域に達していたのだった。

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