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残高ゼロの極小ダンジョン経営~頼りない水晶コアと、ネズミ穴から始める迷宮拡張記~  作者: 盆ちゃん


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第119話:星喰いの群れと、魔導浮遊要塞(アヴァロン)宇宙船化計画

第119話:星喰いの群れと、魔導浮遊要塞アヴァロン宇宙船化計画

熱砂大陸の赤道直下、砂漠の地下深くに建造された絶対防衛拠点『星見の都市』。

その最深部に位置する巨大な天体観測ドームでは、ルリの妹である三女コア(防衛特化の分体)とリンクした古代の天球儀が、静かな唸りを上げて回転し続けていた。

「……マスター。先日の遺跡調査で得た『星見の民』のデータと、我々の深宇宙レーダーの同期・解析が完了しました。結論から申し上げます」

ドームの中央モニターの前で、ファウストがいつになく険しい、一切の笑みを含まない表情で振り返った。

「古代人が恐れた『外なる脅威』は、おとぎ話でも過去の遺物でもありませんでした。……彼らは今、この瞬間も宇宙そらの彼方で、他の星を喰い散らかしています」

ファウストの指がコンソールを叩くと、壁面を覆い尽くす超巨大モニターに、深宇宙の映像がノイズ混じりに映し出された。

「「「……ッ!!」」」

円卓を囲んでいたレオンハルトやガストンたち幹部が、一様に息を呑む。

映像の中心にあったのは、青や緑の美しい輝きを放つ、見知らぬ巨大な惑星だった。

だが、その美しい星の表面は、宇宙空間から飛来した無数の『赤黒い隕石の群れ』――否、蠢く宇宙怪獣の群れによって覆い尽くされようとしていた。

星の大気は削り取られ、緑の大地はどす黒く変色し、海は一瞬にして蒸発していく。まるで無数のイナゴが作物を食い荒らすように、一つの惑星が、文字通り「根こそぎ喰らい尽くされていく」凄惨な光景。

「『星喰いの群れ(コズミック・スウォーム)』……。一個体が小山ほどの大きさを持つ、宇宙空間を回遊する害敵の群れです。彼らは星の魔力マナと生命力を完全に吸い尽くすと、また次の魔力豊かな星へと移動していく。……そして、現在彼らが向かっている軌道の延長線上には、間違いなく我々のこの星が存在しています」

ファウストの残酷な報告に、会議室は重苦しい静寂に包まれた。

「……到着まで、どれくらいだ?」

俺が静かに尋ねると、ファウストは即答した。

「現在の彼らの移動速度から計算して、早くて数年、遅くとも十数年以内にはこの星の絶対防衛圏内に到達します。……明日の話ではありませんが、決して無視できる未来ではありません」

「そうか」

俺は腕を組み、モニターの中で無惨に砕け散っていく見知らぬ惑星を見つめた。

数年。長いようで短い時間だ。このまま指をくわえて待っていれば、俺たちが丹精込めて創り上げたスキーリゾートも、温泉も、魔導列車も、そして同盟国の笑顔も、すべてあの宇宙のイナゴどもの胃袋に収まることになる。

「……冗談じゃない」

俺は低く、地を這うような声で呟き、立ち上がった。

「向こうから来るのを待って、この星の大気圏内でドンパチやるつもりは毛頭ない。万が一にも、俺たちの箱庭リゾートに被害が出るような戦場にするわけにはいかないからな」

幹部たちが、主の放つ静かな、しかしマグマのような怒りと決意を感じ取って居住まいを正した。

「これより、我が迷宮国家の最高機密プロジェクト『魔導浮遊要塞アヴァロン・宇宙船化計画』を発動する!」

俺の宣言に、幹部たちの目がカッと見開かれた。

「宇宙船……! アヴァロンを、星の外の真空の海へ飛ばすというのですか!」

レオンハルトが驚愕の声を上げる。

「ああ。今のあいつは空を飛べるが、大気圏を突破して宇宙の過酷な環境で戦闘を行うようには作られていない。だから、敵が来る前にアヴァロンを完全な『宇宙戦艦』へと大改修し、星の外側で……深宇宙のド真ん中で、あいつらを一匹残らず迎撃・殲滅する!」

俺は空間にアヴァロンの設計図をホログラムで展開し、次々と改修の指示を書き込んでいく。無限のDPがある今、技術的・資金的制約は一切ない。

「ファウスト! アヴァロン全体を覆う『絶対真空遮断・生命維持結界』を構築しろ! 宇宙空間での超光速機動を可能にする『空間跳躍機関ワープ・ドライブ』の開発も同時進行だ。敵の装甲を貫くための対宇宙用の高出力レーザーも増設しろ!」

「クハハハハッ! 承知いたしました! 魔導物理学の限界を突破し、星の海を駆ける無敵の城を創り上げてみせましょう!」

ファウストが白衣を翻し、狂気と歓喜の笑声を上げる。

「ガストン! 宇宙空間には隕石や宇宙線など、地上の比じゃない危険が飛び交っている。現在のミスリル装甲だけでは心許ない。遺跡で採取した『強化瑠璃』の解析データとミスリルを融合させ、絶対強度の『星金装甲アストラル・アーマー』を開発しろ! そして、群れを広範囲で消し飛ばす超弩級の『広域殲滅魔力砲』の鋳造を頼む!」

「ガハハハ! 任せな! 神の雷だろうが宇宙のイナゴだろうが、傷一つ付かねぇ宇宙一硬い船底を打ってやるぜ! 大砲の筒も限界までデカくしてやる!」

ガストンが太い腕で胸を叩く。

「レオンハルト、リリア! アヴァロンの改修が完了するまでに、お前たちは『無重力空間』での戦闘教義ドクトリンを確立しろ。迷宮騎士団の重鎧を宇宙戦用にカスタマイズし、スラスター機動で動ける『宇宙戦用ゴーレム・フレーム』の開発を急がせる。白兵戦に持ち込まれても対応できる防衛設備も要塞内に配備しろ!」

「我が騎士団、星の海にあっても主の剣としての務めを完璧に果たしてみせます!」

「ハーピー部隊も、真空での機動訓練を今日から始めますっ!」

俺は最後に、ミラージュとルリたちコア陣営に向き直った。

「ミラージュ。この計画は完全なトップシークレットだ。同盟国や新大陸の連中には、一切の不安を与えないよう通常通りリゾートを運営させろ。俺たちが裏で宇宙戦争の準備をしているなんて、誰にも悟らせるな」

「承知いたしました。地上の皆様には、これまで通り極上の夢を見続けていただきましょう」

『マスター! 宇宙船のエンジンも、大砲も、ぜーんぶ私とラピスと妹たちで支えます! 無限のDP、ドーンと使っちゃってください!』

ルリが力強くドンと胸を叩く。

「頼りにしてるぞ」

俺は満足げに頷き、再びモニターの宇宙空間を見上げた。

数年後に迫る、星を喰らう宇宙の害敵。

だが、今の俺たちに悲壮感はない。あるのは、無限の力と技術をもって、未知の脅威すらも完璧に叩き潰すという圧倒的な自信と探究心だ。

「さあ、忙しくなるぞ。俺たちのリゾートを守るため……史上最強の宇宙戦艦を造り上げるんだ!」

熱砂の地下深くに、迷宮の最高幹部たちの闘志に満ちた咆哮が響き渡る。

未知の古代遺跡の発見は、俺たちに星の歴史を教えただけでなく、星空の彼方で繰り広げられる「新たなる大戦」への切符をもたらしたのだった。

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