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残高ゼロの極小ダンジョン経営~頼りない水晶コアと、ネズミ穴から始める迷宮拡張記~  作者: 盆ちゃん


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第113話:神を屠る連携陣と、無限の双子コア誕生

第113話:神を屠る連携陣と、無限の双子コア誕生

『ガアァァァァッ! 死ネェェッ! 迷宮ノ塵共ォォッ!!』

禁忌の奈落の底。狂宴の残党の執念と邪神の瘴気、そして機巧魔神マキナの残骸が融合した異形の怪物が、背中に展開した無数の魔力砲塔から極太の殲滅レーザーを乱れ撃つ。

空間そのものを削り取るような無差別攻撃。だが、俺たち迷宮国家の最高幹部たちの前では、単なる的当てゲームに過ぎなかった。

「フフッ、狙いが甘いわよ。どこを見ているのかしら?」

キュウビが妖艶にキセルを吹かすと、戦場に数千もの『俺たち』の幻影が出現した。怪物のレーザーは幻影を次々と撃ち抜くが、本体には掠りもしない。

その隙を見逃さず、ファウストが白衣を翻して空中に躍り出た。

「さあさあ! ガラクタにはガラクタの末路を教えて差し上げましょう! 【極大重力球グラビティ・ノヴァ】!!」

ファウストの放った漆黒の重力場が、怪物の背中にある砲塔群をピンポイントで押し潰す。バキバキと金属がひしゃげる凄惨な音と共に、怪物の射撃機構が完全に沈黙した。

『ギギィィッ!? 小賢シイ……ナラバ瘴気ノ海ニ沈メッ!』

怪物が口を大きく開け、周囲一帯を溶かす超高濃度の猛毒の瘴気を吐き出そうとした瞬間――上空からリリア率いるハーピー部隊が急降下した。

「させませんっ! 皆、風の結界を!」

リリアの指揮で放たれた【神風の竜巻ディバイン・トルネード】が、吐き出された瘴気を一箇所に巻き上げ、巨大な真空の檻に閉じ込める。

「ガハハハッ! 風が来りゃあ、次は火の番だ! 親方特製、地獄の釜茹でだぜ!」

そこへガストンが、灼熱に赤熱した『超高熱マグマ・ハンマー』を大地に叩きつけた。噴き出した溶岩の柱が、リリアの竜巻と融合し、巨大な『炎の竜巻ファイア・ストーム』となって怪物を包み込む。

『ギャアアアアアッ!? 熱イ、焼ケ……逃ゲ……ッ!!』

「逃がすわけがないでしょう? あなたの影は、既に私が縫いつけました」

炎の中でもがく怪物の足元で、ミラージュが音もなく微笑んでいた。彼女の放った漆黒の刃が怪物の影を大地に縫い止め、その巨体を一歩も動かせなくしている。

完璧な連携。それぞれが己の役割を120パーセント果たし、敵の長所を完封する。

これが、幾多の死線を共に越え、迷宮を創り上げてきた俺の誇る最高戦力だ。

「レオンハルト! 道は開けた、叩き斬れ!」

「御意!!」

俺の号令に応え、迷宮騎士団長レオンハルトが、限界まで闘気を練り上げた大剣を上段に構えて跳躍した。

「我が主の平穏を乱す害悪よ! 白銀の光と散れ! 【聖絶のホーリー・エクスキューション】!!」

一閃。

天から降り注ぐような神々しい斬撃が、炎の竜巻ごと怪物の巨体を唐竹割りに両断する。

肉と機械の装甲が真っ二つに裂け、その奥深くに隠されていた赤黒く脈打つ心臓――『邪神のコア』が完全に剥き出しになった。

「トドメだ。……お前たち、出番だぞ!」

俺が指を鳴らすと、アヴァロンの降下ハッチから、天地を揺るがす三つの咆哮が響き渡った。

我が迷宮の5階層を守護し、リゾート階層ではビーチバレーに興じていた『3柱の古代種』たちである。

天空を支配する【天帝竜エンシェント・ドラゴン】。

海を統べる【海皇竜リヴァイアサン】。

そして、大地を揺るがす【陸王獣ベヒーモス】。

彼らは俺の意志に呼応し、剥き出しになった邪神のコアに向けて、三位一体の極大ブレスを放った。

灼熱の業火、絶対零度の吹雪、そして万物を粉砕する重力雷光。

三つの古代の力が空中で螺旋を描きながら融合し、純白の破壊光線【三柱・天地崩壊トリニティ・バースト】となって怪物に着弾した。

『ア……アァァ……我ラガ神……ノ……――』

断末魔すら光の中に掻き消され、異形の怪物は文字通り「塵一つ残さず」消滅した。

後に残されたのは、浄化された大地の中心で、コロンと転がる真っ黒な『邪神のコア』だけであった。

***

「……終わったな」

俺は剣を鞘に収め、赤黒い瘴気が完全に晴れ渡った新大陸の空を見上げた。

歩み寄り、足元に転がる『邪神のコア』を拾い上げる。ルリの本体よりも一回り大きく、膨大な魔力が圧縮された危険な代物だが、主を失った今はただのエネルギーの塊に過ぎない。

俺たちはそのままアヴァロンへと帰還し、マスターズ・チェンバーで待機していたルリの元へ向かった。

「ルリ。お土産だ。こいつを食えるか?」

『わぁっ! すごい魔力です! でも、こんな大きなもの、私一人じゃ……!』

ルリが戸惑いながらも、そのコアに両手をかざした瞬間だった。

邪神のコアはスゥッと光の粒子となってルリの本体(水晶)に吸い込まれていった。

直後――。

『マ、マスターァァァァッ!? なんか、変です! お腹の底から、底なしの力が湧いてきて……容量が、キャパシティが爆発しちゃいますーっ!!』

ステータス画面のDPカウンターが、見たこともない速度で回転を始めた。

カンストなんて次元ではない。桁が一つ、二つ、三つと増え続け、やがてカウンターの表示そのものがバグり、輝く『∞(無限)』のマークへと変わってしまった。

「……は? 無限?」

俺が呆然としていると、ルリの本体である巨大水晶が、眩い閃光と共にパキィィィンッと音を立てて『二つ』に割れた。

いや、割れたのではない。完全に同じ大きさ、同じ純度の水晶が『複製』されたのだ。

光が収まると、ルリの隣に、ルリと瓜二つの――しかし髪飾りの色がルリ(青)とは違う、赤い髪飾りをつけた少女が立っていた。

『ふぁぁ……よく寝ましたぁ。あ、あなたがマスターですか? 私はルリお姉ちゃんの双子の妹、ラピスです! よろしくお願いしますね!』

「……双子、だと!?」

幹部たちが一斉に顎を外した。

ダンジョンコアが、吸収したあまりに莫大なエネルギーを処理しきれず、自己進化の果てに「双子」へと分裂したのである。

『マスター! すごいです! 邪神のコアのおかげで、私たちのDP上限、完全に撤廃されちゃいました! もういくらDPが貯まってもパンクしません!』

ルリがラピスと手を繋ぎながら、満面の笑みで報告してくる。

俺は玉座に崩れ落ちた。

「上限突破……ということは。俺はもう、DPを減らすために『無駄遣い計画』を必死に考える必要が、なくなった、のか……?」

「そのようですね、マスター」

ミラージュが、腹を抱えて笑うのを堪えながら言った。

「これで名実ともに、マスターの資産は無限。無駄遣いという概念すらも消滅しましたわ」

さらに驚くべきことは、新しく生まれた妹コア・ラピスの存在だった。

ファウストが計器を確認しながら、震える声で報告する。

「マ、マスター……! この妹コアを新大陸の『禁忌の奈落』跡地に設置すれば、あそこに我が迷宮と全く同サイズの『第二本拠地(新大陸支部)』を一瞬で構築できますぞ!」

「しかも、ラピスとルリお姉ちゃんは繋がってるから、大陸の地下をぶち抜いて『大陸間超高速トンネル』と『転移ゲート』を常時接続できるよ!」とラピスが無邪気に付け加える。

俺たちの本拠地と、新大陸のド真ん中が、完全な安全圏として直結される。

それはつまり、新大陸を拠点とするラングス帝国をはじめ、俺たちと不可侵の盟約を結んだすべての国々を、二つの迷宮が『挟み撃ち』の形で完璧に防衛・管理できる究極のシステムが完成したことを意味していた。

「ガハハハ! こりゃあすげえ! 俺たちの庭が、二つの大陸を股にかける超巨大国家になっちまったぜ!」

「ええ。これなら、世界のどこで何が起きようと、我が騎士団が数分で駆けつけられます」

幹部たちが歓喜に沸く中、俺は静かに笑い出した。

「フッ……ハハハハハッ! 最高だ! DPの心配も要らねえ、安全保障も完璧! 俺たちの『理想の箱庭』は、ついに完成したんだ!」

俺はアヴァロンのメインモニターに、衛星から送られてくる世界地図を映し出した。

二つの大陸が、俺たちの迷宮の光で煌々と照らされている。

だが、その広大な星の地図には、まだ光の届いていない『未知の大陸』や『未開の群島』がいくつも残されていた。

地球の数十倍というバカみたいにデカいこの惑星。

「……なあ、お前ら」

俺が声をかけると、幹部たち、そしてルリとラピスが俺を見た。足元ではテトが「キュイッ!」と元気に鳴く。

「DPの残高を気にしてビクビク生きてた日々はもう終わりだ。これからは、有り余る無限の力を使って、まだ見ぬ世界を遊び尽くしてやろうぜ。……次は、どの大陸を俺たちの『リゾート』にしてやろうか?」

俺の問いかけに、迷宮の最高幹部たちは一斉に不敵な笑みを浮かべ、深く、そして力強く頭を下げた。

残高ゼロから始まったネズミ穴の迷宮は、神をも喰らい、星すらもその手中に収める次元へと至った。

だが、俺たちと最強の仲間たちの冒険は終わらない。無限に広がる未知の惑星を、遊び、開拓し、そして絶対の平穏で塗り替えるための、新たな航海が今、始まろうとしていた。

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